「新聞広告はNG」「漫画自体は存在していい」アメリカのZ世代が「月曜日のたわわ」に思ったこと

「『月曜日のたわわ』広告の炎上について」。新聞に掲載された漫画の広告が炎上した一連の問題について、アメリカのZ世代の目にはどう映ったのかを議論しました

「『月曜日のたわわ』広告の炎上について」。新聞に掲載された漫画の広告が炎上した一連の問題について、アメリカのZ世代の目にはどう映ったのかを議論しました

interfmで放送中の「sensor」(パーソナリティ:Cartoon)。「NY Future Lab」では、これからの時代の主役となる「Z世代」と「ミレニアル世代」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どのような性質や特徴があるのかなどについて、ミレニアル世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していきます。

5月30日(月)のテーマは「『月曜日のたわわ』広告の炎上について」。新聞に掲載された漫画の広告が炎上した一連の問題について、アメリカのZ世代の目にはどう映ったのかを議論しました。

日経新聞の広告が炎上

2022年4月、日本経済新聞朝刊に掲載されたコミックス「月曜日のたわわ」の全面広告がインターネットで炎上しました。

胸の大きな女子高校生の日常にフォーカスした同作品。直接的な性的描写があるアダルト作品ではありませんが、胸の強調された女子高校生のキャラクターデザインや、電車で知り合ったサラリーマンに対して女子高校生が性的なニュアンスの言葉や態度で挑発するストーリーなどが「新聞広告としてふさわしくない」と批判されました。

ネットではこうした作品の広告掲載によって「未成年への性暴力を肯定している」「性差別や痴漢を助長している」という意見が噴出し、国連女性機関が日本経済新聞に抗議文を送る騒ぎにまで発展。一方で「漫画の表現の自由を守るべき」との声も上がっています。

未成年を性的対象として見ることに厳しいアメリカ

アメリカではアニメファン向けのメディア以外ではほとんど取り上げられなかった「月曜日のたわわ」の炎上。「NY Future Lab」のメンバーは、今回の騒動についてどう考えたのでしょうか。

ヒカル:よく知らなかったから調べてみたんだけど、この作品の漫画家は毎週月曜日にTwitterに(「月曜日のたわわ」のイラストを)アップしているんだよね。つまり最初から胸が大きい未成年が、疲れたサラリーマンを励ますという目的(の作品)なんだよ。

ノエ:その「女子高生」というのも、日本文化ならではの意味を持っているよね。大人が女子高生に対してセクシーな夢を抱くというのは、日本文化の特徴の一つだと思う。この漫画の中で女子高生は、セックスではなくロマンチックに、そしてエロチックに年上のビジネスマンを癒すんだよね。

そして、それをステータスの高いメディアに(広告として)あげてしまったことが問題なんじゃないかな。それによって未成年をセックスの対象として見ることを認めてしまったことになる。多くの人は、それが問題だと思っているんじゃないかな。

モデレーターでZ世代評論家のシェリーは「アメリカでは大人が未成年(16歳~18歳、州によって異なる)と性的な関係を結ぶことは違法。性犯罪が多く子どもを守る理由がある」と解説し、ヒカルやノエのような厳しい意見が出るのは「仕方のないこと」だと話します。

Cartoonが「今回は日本経済新聞に載った広告だったので違和感があったけれど、電車広告やコンビニにこうした漫画のものが並んでいても気にならなかったり、無意識に読んでしまったりもする。日本にいると『おかしい』と思わないことが多々あるのかな」とコメントすると、シェリーは「そうだと思う」とうなずきます。 性的なニュアンスを含む漫画・アニメが社会で許容されているのは、良くも悪くも日本文化の一つであると話すシェリー。「おそらく新聞に載らなければ問題はなかったのでは?」と推測すると、Cartoonも「格式高いメディアで広告を掲載し、社会が容認している(ように映し出す)のはどうなんだという話ですよね。セグメントされたメディアで見たい人が楽しむ分にはいいですが、そうじゃないメディアにそれが載ったとき、そのままにしていいのだろうか? という話ですよね」と同意しました。

「癒し系」漫画自体は存在していい

日本のサブカルチャーに詳しく、何度も日本を訪れたことのあるメンバーのメアリーは、「はっきり言って日本の文化はもう行くところまで行っちゃっているので、このぐらい別にいいんじゃないかと思うのよね。だって日本では、あらゆるものが性的な対象になるじゃない」と切り出します。

メアリー:前にドアノブを(女の子に擬人化して)性的な対象にしていた日本の漫画が論争になったのを覚えている。今回の広告に関しては、新聞に載せるのがふさわしいかというとそうじゃないと思う。朝の電車に乗っている人たちが、変な想像をしてしまったりするだろうから。

「月曜日のたわわ」を新聞広告として掲載することには異議を唱えたものの、「こうした『癒し系』の漫画自体は存在してもいい」と主張するメアリー。ウェブコミックの「世話やきキツネの仙狐(せんこ)さん」を例に出し、「(狐耳をつけた女の子の)仙狐が突然ある男性の家に住み着いて世話をするんだけど、彼女は10歳くらいの見た目なのに、実は800年くらい生きているという設定なの」と説明します。

メアリー:特に性的な意味を持った漫画ではないけれども、主人公(の男性)が仙狐さんのしっぽに触りたがるシーンがあるの。それだって見方によっては性的に見えるけれど、どうすることもできない。こういうものを禁止してしまったら、人々は癒される場所をなくしてしまうから。

「日本文化は、特にアートにおける性の表現がすごく自由だと思う」とコメントするシェリーは、漫画やアニメなどのサブカルチャーが熟成された結果、海外でも評価されていると解説。

一方で「熟成されたカルチャーの中でいいものも出てくれば、今回のように炎上するようなものも出てくる。こうしたことは外から見ないと、自分だけじゃ気付けない」とも話し、「『これはいけないぞ』と思ったら、みんなで軌道修正できるような社会が大事なのではないでしょうか」と締めくくりました。