ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみがパーソナリティを務めるinterfmのラジオ番組「NY Future Lab」(毎週水曜日18:40~18:55)。ニューヨークのZ世代の若者たちと一緒に、日本も含めた激動する世界をみんなで見つめ、話し合います。社会、文化、政治、トレンド、そしてダイバーシティからキャンセルカルチャーまで、気になるトピック満載でお届けします。
4月17日(水)のテーマは「タトゥーもOK? ニューヨークのビジネスファッション事情」。「NY Future Lab」に所属するアメリカZ世代が、アメリカのビジネスファッションについて語り合いました。
アメリカではタトゥーOKな企業が増えている?
近年はオフィスファッションのカジュアル化が進み、アメリカではタトゥーを入れた肌を見せても問題のない職場も増えています。
ビジネスファッションに関しては、日本よりアメリカのほうがずっとカジュアルなことは想像がつくと思いますが、近年ではアメリカのZ世代自身でさえ驚くほど、カジュアル化が進んでいます。まず、ニューヨークのFuture LabのZ世代から見て、アメリカのビジネスファッションがどれくらい自由かを聞きました。
ミクア:地下鉄で学校に行くときに、スーツやネクタイをしている人ってあまり見かけないかも。だいたい、ビジネスカジュアルな服装が多いような気がする。母が働いている保険会社のオフィスに行くと、みんなきちっとしているわけではないけれど、すごくカジュアルでもなくて、ちょうどその中間くらいの感じ。
驚いたのは、病院にボランティアとして行ったとき。病院には厳しい服装規定が必要なのは理にかなっていると思う。たとえば、長い爪をしていると、仕事に影響するでしょう? でも、私が驚いたのは服装ではなく、多くの医師が普通に目立つタトゥーをしていたこと。
私も医者を目指しているけど、タトゥーなんか入れていたらインターンにはなれないんじゃないかと思っていたんだよね。でも、病院で見る限りは服装規定に関して、少しずつゆるくなっている気がする。
ノエ:たしかにそうかも。まあ、ここがニューヨークというのもあるかもしれないけどね。僕も気付いたことがあるよ。病院に行くとわかるけど、以前よりもずっとカジュアルな雰囲気になって、人種的にもすごく多様になったよね。10年前くらいには、医者といえばスーツや白衣を着た年配の白人男性という感じだったのが、今では若い医者や男性看護師もすごく増えているよね。
アメリカのビジネスファッションで最近注目されているのは、個性と多様性を大事にする傾向。Z世代評論家のシェリーは「タトゥーやピアス、カラフルなヘアスタイル、伝統的でない服装は、プロ意識がないのではなく、むしろアイデンティティ、自分らしさの表現だと考えているわけです」と説明します。
こうした意識の変化は、特に人種民族やジェンダー的に史上もっとも多様なZ世代ならではの影響と言えます。ラボメンバーでも話題になったタトゥーですが、少し前までは「タトゥーはシャツなどで見えないように隠す」というのがこれまでの方針でした。
ですが、ここ数年、目に見えるタトゥーを許可する大手企業が増えています。人種ジェンダーを含め、ダイバーシティを受け入れるインクルーシブな社風を作り上げることで、入社希望者増につながっているのです。
髪の色で就ける仕事が左右される日本社会
では、日本のビジネスファッションはアメリカZ世代からはどう映っているのでしょうか? 日本が大好きで何度も旅行の経験があるメアリーが、率直な感想を述べました。
メアリー:このあいだ、東京で初めてホストクラブに行ってみたんだ。そのとき私はヘアを紫に染めていたんだけど、会社で働いていると言ったら「その髪の色でよく働けるね!?」とホストのみんなはびっくりしていた。
彼らの髪もブロンドやグレーなどさまざまな色で素敵だったけど、「会社では誰も雇ってくれない」って言っていた。もともとの自然な髪の色の人しか雇われないだろうって。だけどそれって、服装とは関係のない話でしょう? ただの髪の色なのに仕事を得ることさえできないなんてクレイジーだと思った。その瞬間、とても悲しくなっちゃった。
たしかに、(日本の)その考え方はわかる気もする。会社を代表する立場として、個性をアピールしてほしくないというのは理解できるよ。会社があなたの考え方や個性を受け入れない可能性もあるものね。でも、その人が優秀な働き手であれば、どんな服装をしていようと関係ないと思う。
自由になっていく一方のアメリカから見ると、日本のビジネスファッションは不自由に見えるようです。一方で、アメリカの自由には、人種差別を禁止するのと同じように、その人の人種や民族的な特色を職場で禁止するのは違法とされている背景があります。
「肌の色だけでなく、髪型や髪の質、色なども含まれています。多様な人種民族がいれば、金髪はもちろん赤い髪の人もいるわけで、そうなると髪の色や身だしなみをプロ意識と結びつける意味もなくなってきますよね」とシェリーは補足。移民が増えて多様化する日本も、アメリカと同じ流れになるのではないかと推測します。
アメリカZ世代が「日本の入社式」に思うこと
SNSなどで論争になってきているのは日本の入社式。全員同じように見える黒のリクルートスーツで参加する日本の若者に対して、「多様性を重視する時代に画一的すぎるのでは」と批判の声があります。リクルートスーツ、入社式がないアメリカZ世代は、日本の入社式の写真を見て、どのような反応を示すのでしょうか?
ミクア:リクルートスーツって面接に行くときに着る服でしょう? 面接で受かりたいと思ったら目立つように相手の印象に残そうとするし、「面白い人材だ」と思ってもらわなければならないよね? みんなが同じ服を着るということは、あえて目立たないようにするのが目標ってこと?
アメリカは日本と真逆で、目立つことがよしとされる考え方。日本で同じような服を着るのは、「周りと同じで目立たないほうがリスクが少ないからでは」とラボメンバーは指摘しました。
シェリーは「これから社会に出て、日本の未来のために新しいアイデアをどんどん出してもらおうという人たちに、そんな風な考えをさせるのって、そちらのほうが社会にとってリスキーではと思います。普段から目立たないように、人と同じようにやってきた人に対して、突然イノベーティブな発想をしろというのも随分と勝手な話ですよね」とコメントし、話題を締めくくりました。