日本人が黒人ヘアを真似ることは“文化の盗用”にあたる? アメリカZ世代が伝えたい大切なこととは?

「アメリカZ世代の本音:日本人が黒人ヘアを真似るときに思い出してほしいこと」。「NY Future Lab」のメンバーが、自分とは異なる文化圏の要素を他の文化圏の人が真似する行為について考えました。

「アメリカZ世代の本音:日本人が黒人ヘアを真似るときに思い出してほしいこと」。「NY Future Lab」のメンバーが、自分とは異なる文化圏の要素を他の文化圏の人が真似する行為について考えました。

interfmで放送中の「sensor」(パーソナリティ:Cartoon)。「NY Future Lab」では、これからの時代の主役となる「Z世代」と「ミレニアル世代」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どのような性質や特徴があるのかなどについて、Z世代・ミレニアル世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していきます。

3月29日(金)のテーマは、「アメリカZ世代の本音:日本人が黒人ヘアを真似るときに思い出してほしいこと」。「NY Future Lab」のメンバーが、自分とは異なる文化圏の要素を他の文化圏の人が真似する行為について考えました。

他人の文化を真似るのはダメなこと?

前回の放送では、Z世代の女の子に人気の「クラゲヘア」が日本の「姫カット」にルーツがあることや、男性のあいだでは「ドレッド」が流行っているという話をしました。

ヘアスタイルを見るだけでも、その人のルーツがどこにあるのかがわからない昨今。アニメやK-POP、ヒップホップなどを通じて、Z世代の文化はグローバルに広がっています。

そうしたなか、「他人の文化を真似るのは、文化を盗んでいることになるのではないか?」という批判が出ることも。「楽しんでいるだけなのに、そんな風に言われるのは心外だ」と反発する気持ちもわかりますが、指摘を受け取らないままでいると、大切なことに気付けない可能性もあります。

まずは、ラボメンバーの会話を聞いてください。

ケンジュ:中国では「白人女性ルック」が流行っているらしいよ。

全員:なにそれ!?

ケンジュ:彼らが白人の女の子っぽいと思うこと、つまり、UGGブーツを履いてスタンレーの持ち運び用のマグカップを手にする、みたいなスタイルを楽しんでいるみたい。

ところが、誰かのコメントで「私の文化はあなたを楽しませるためにあるんじゃない」って書いてあったんだ。

全員:えっ。それってひどくない?

ノエ:僕が今すごく感じていることなんだけど、ヨーロッパにしばらく住んでいると、自分がどんなファッションでどんなふうに見せるかは自由だって思えてくる。

僕自身、数年前まで白人が日本の着物を着たり、アジア風のメイクをしたりするのを見て「ちょっと嫌だな」と思ったりすることもあった。だけど今は「それでハッピーになれるんだったら好きなようにすれば」という気持ちだよ。

もちろん、顔を黒く塗るブラックフェイスはダメだよ。でもそれ以外なら、白人が黒人のヘアスタイルをしても別に構わない。ヨーロッパに住んでいると、アメリカ人が「それは黒人のものだから」みたいな議論をしているのがバカバカしく聞こえてくるんだよね。

メアリー:ヨーロッパとアメリカは違うよ。アメリカは奴隷制度をずっと長く続けてきたし、それ以降も法律で黒人を抑圧してきたからね。そういう人種差別的なことについて、アメリカ人はもっと考えなければいけないから。

中国では白人の女の子を真似たルックが流行るなか、それに対して白人が苦言を呈することもあるそう。ラボメンバーのなかにも白人がアジア人っぽいメイクをしたり、着物を着たりすることに抵抗を感じる人もいました。しかし、現在は「楽しんでいるなら別にいいや」と心境に変化があったようです。

グローバル化が進んだ現代社会では、お互いの文化を取り入れることはポジティブなものになっています。しかし、アメリカにおける「黒人文化のあり方」は他の国とはまったく異なります。

Z世代評論家のシェリーは「アメリカでは黒人に対する差別はいまだにありますし、白人至上主義者はたくさんいます。お金も地位もないなかで、黒人が育んできたのは、音楽などの文化です。そういうものを『簡単に真似て商業化してほしくない』という気持ちは、マイノリティだったら必ず持つ思いです」と説明。力があるマジョリティが差別してきたマイノリティの真似をするのは大きな問題だと訴えました。

真似る文化の“背景にあるもの”を知ることは大切

日本でも黒人のヘアスタイル、ドレッドやブレードにする若者が増えています。ラボメンバーたちは、そういった日本の風潮にどのような思いを抱いているのでしょうか?

ノエ:問題なのはさ、日本の若者が黒人ヘアを真似るとき、感謝と尊敬はあるけれど、実は歴史や他の多くの側面について、ほとんど何も知らなかったりするんだよ。それだと、本当に尊敬しているとは言えないと思うんだ。僕が言いたいのは、まだまだ日本のコミュニティにもやるべきことがたくさんあるということだよ。

でもね、たとえばSNSなどで、日本人が黒人の髪型をしたコンテンツがあるとするでしょう? コメントではアジア系やアフリカ系の黒人が、それを歓迎するような流れもあるんだよ。自分たちの文化が共有され、広がっていることが嬉しいみたいな感じ。

ケンジュ:それはいいことだと思うな。お互いの文化を共有することで、僕たちは1つになれるんじゃない。さもなければ、自分たちの文化に閉じこもって、分断が起きてしまうもの。

メアリー:すごく古い話だけど、たとえばキム・カーダシアンが髪の毛を黒人のようなボックスブレイズヘアにしたとき、多くの人が怒ったよね。

問題なのは、黒人がそういう髪型をしていると就職のときとかに差別されることがあるんだよ。でも白人のキムがやったら「カッコいい」ともてはやされた。でも2010年くらいに比べると、今はだいぶよくなったと思わない?

ノエ:だよね。もしかしたら、白人に対して「黒人ヘアにするな」と言うよりも、もっとポジティブなやり方もあるんじゃないかな。

たとえば、黒人文化におけるヘアの重要性について、もっとみんなに教育することかな。そうすれば、就職のときに引っかかったりとか、否定的に見られたりすることも少なくなるんじゃない?

真似る側への感謝と尊敬の前に、歴史や文化、人種についてもっと学ぶ必要があるのではないかとラボメンバーは指摘しました。素晴らしいと感じる文化の背景を知ることは、今後の未来をよりよくするためのアイデアを生み出すヒントにもなります。

多様性社会で生きるなか、さまざまな人種が相互理解を深めることは世界平和につながる大切な一歩です。シェリーは「やはり、相手の顔が見えないから戦えるわけです。知っている人と戦争はできないですよね。ダイバーシティの世界で、違いがぶつかり合いながら、でも解決策を見つけていき、みんなで生きていく。日本でもそうだし、男と女、いろんなジェンダーへの理解も同じことが言えます」と力説。

Z世代と番組を続けてきて4年半。「sensor」では2年間、ラボメンバーとの座談会でこうした大事なことを、繰り返し思い出させてもらいました。

長い期間「sensor」でお届けしてきた「NY Future Lab」ですが、4月からは新番組「New York Future Lab」として再スタート。毎週水曜日の18時40分にお届けします。ポッドキャストはこれまで通り、サイト内で配信します。シェリーは「これからもsensorともども、シェリーめぐみのNew York Future Labをよろしくお願いします」と呼びかけました。