4月から毎週水曜日の18:40からの枠に引越しをしたinterfmのラジオ番組「NY Future Lab」(パーソナリティ:シェリーめぐみ)。ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみが、ニューヨークのZ世代の若者たちと一緒に、日本も含めた激動する世界をみんなで見つめ、話し合います。社会、文化、政治、トレンド、そしてダイバーシティからキャンセルカルチャーまで、気になるトピック満載でお届けします。
4月3日(水)のテーマは「Z世代は扱いにくいって本当?」。「NY Future Lab」に所属するアメリカZ世代が、「職場におけるZ世代への評価」について語りました。
中間管理職の頭を悩ませるZ世代の特徴は?
4月になり、日本では新入社員の入社式のシーズンを迎えました。アメリカの中間管理職にとって、悩みのタネとなっているのが「Z世代の扱い方」です。アメリカの管理職4人のうち3人が「Z世代を扱いにくい世代」だと思っています。
Z世代とは、1997年から2012年生まれの世代を指す言葉。上は27歳、下は12歳までを指します。OECD加盟国(ヨーロッパ諸国を中心に日・米を含め38ヶ国の先進国が加盟する国際機関)では、2025年にZ世代が労働人口の4分の1以上を占めるようになります。
NY Future Labでは、ニューヨークで生まれ育ったアメリカのミレニアル・Z世代のなかでも、日本にルーツを持つ、または日本に興味があって日本語を勉強しているメンバーが集まっています。Z世代は「やる気がない」「努力をしない」「扱いにくい世代ナンバーワン」と言われていますが、Z世代自身はどう感じているのでしょうか? まずは、ラボメンバーの1人であるメアリーから聞いてみました。
メアリー:間違っていないと思うよ。 ただ、Z世代は将来に対してあまり多くの希望を持っていないと思うんだ。家も買えそうにないし、こんなに就業時間が長いと、他に何もできないし。すべてが無意味に感じられてくるんだよね。だから、私は仕事のために生きているのではなく、「生きるために働いている」と思うようにして、最低限の仕事だけをするつもり。それほどお金ももらっていないし、あまり多くを期待されても困る。
上の世代は、特に仕事に関して「Z世代はコントロールしにくい」と思っているんじゃないかな。なぜって、私たちは今の職場で我慢するよりも、辞めることを選ぶ傾向が強いから。「ここでは正しく扱ってもらえない」「そんな仕事をする必要がないから、辞めて他を探そう」「もっといい仕事が見つかるから大丈夫」というマインドセットがある。何年も同じ仕事に留まる人は少ないし、そういうのはもう過去のものだよね。
だから、怠け者だとか働く気がないって誤解されるんじゃない? でもさ、私たちは前の世代のように一生懸命働いているように見えないかもしれないけれど、のんびりしている余裕もないよ。何もかも(値段が)高いこの時代に、必死で働かなければならないし、学歴だって大学院くらいまで行かないといい仕事にはつけない。
Z世代への印象について当たっていると話すメアリー。「自分は最低限の仕事しない」と正直な気持ちも明かしました。その言葉の背景には、生活に余裕がなく、仕事が忙しくて自分の時間もなく、やる気が日々削がれてしまう厳しい現実があります。
アメリカZ世代の多くは、自分達の未来をとても現実的に見ています。Z世代評論家のシェリーは「頑張っても給料が変わらないならほどほどでいいと考えますし、アメリカはもともと終身雇用制がないんですよね。合わない職場だったら、さっさと辞めて次に行くか、起業するほうがいいわけです」と補足。日本でもこうした話はよく耳にしますが、アメリカZ世代はこうした傾向がさらに強まっています。
Z世代が「傷つきやすい」のは本当か?
扱いにくいと思われやすいZ世代ですが、何もかもが(物価が)高い大変な世の中で自分たちなりに必死に生きています。そうしたなか、アメリカの管理職がZ世代を扱いにくいと感じる、もう1つの理由として「Z世代は傷つきやすく、過剰反応する」という意見があります。
実態はどうなのでしょうか? メンバーたちに聞いてみました。
メアリー:たしかに、私たちは簡単に傷つく傾向があるかも。というよりも、前の世代の人だって不快な思いをすることがあったと思うけど、今はもっとみんなが声を上げるようになったから。
「自分をそんなふうに扱わないでほしい」という気持ちも強くなってきたんじゃないかな。スマホで、上司が従業員をどう扱っているかをTikTokやインスタで暴露することも増えたし、そういう時代なんだと思う。もし不当な扱いを受けたら、声を上げるのは当然だもの。
だけど、傷つきやすいとか過剰反応とかって言われると、すごく嫌な感じがする。なぜならみんなが正しく扱われたいと思うのは当然でしょう? たとえば、仕事でセクハラを受けたくないし、嫌な思いをしたら、はっきり言うのが当たり前じゃない。
ノエ:たしかにそうだよね。でも、ときには過剰反応することもあるんじゃないかな。
傷つきやすいと思われるのは一理あると話すメアリー。それは、これまでは被害者側が声を上げられなかった不正などについて、我慢しないではっきり口に出すようになったからではないかと分析します。一方で、声を上げるのは不当に扱われないための当然の行動だという意見も出ました。
ダイバーシティ(多様性)とは、マイノリティが発言権を持つこと
日本では「みんなが多様な価値観を持つようになったから、物事が難しくなった」という声もありますが、アメリカはそもそもが多民族国家であり、複数の人種がともに社会を構成しているため、問題がさらに複雑になっています。ラボメンバーのミクアから話を聞きました。
ミクア:多様性が増すことで、意見もいろいろ出るから解決策は増えるよね。でもその反面、問題や誤解が生じることも増える。特に私たちの世代は、社会的に何が起こっているかについてとても敏感でしょう? だからみんながどんどん発言するし、それで対立が生まれても仕方ないよね。
人種やジェンダーが多様になればなるほど、問題や対立が増えます。しかし、ダイバーシティが増すことは意見が異なる人が増えるだけではなく、これまで声を持たなかったマイノリティが発言権を持つようになることを意味します。
これまでは、社会で既得権を持っている層(アメリカなら白人男性、日本なら男性など)が物事を優位に進められる社会構造でした。現在はそうではない女性、そして人種的・性的マイノリティなどの、特に若いZ世代がはっきり意見を主張するようになっています。すると、特権を持つマジョリティたちからは「傷つきやすい」「過剰反応だ」という反発が出ています。
特権を持つマジョリティがマイノリティの持つ問題に気付いていないだけだとシェリーは指摘し、「そもそも(社会的に既得権を持っている層は、自身に)特権があること自体に気付かない人もたくさんいます。だからこそ、マイノリティの声を聞くことは欠かせないことなんです」と訴えました。
これまで声を上げられなかった人たちの声を聞いて活かすことが、より多くの人が生きやすい社会を作る。それがダイバーシティあふれる社会です。そうした風潮を「簡単じゃないけど、きっと大丈夫」とポジティブに捉えているのもZ世代の特色です。