アメリカでも“暗黙の了解”は通用する? ニューヨークのZ世代「空気を読むこと」を考える

「ニューヨークのZ世代も空気を読む?」。「NY Future Lab」に所属するアメリカZ世代が、「空気を読む」ことについて思うことを語り合いました。

「ニューヨークのZ世代も空気を読む?」。「NY Future Lab」に所属するアメリカZ世代が、「空気を読む」ことについて思うことを語り合いました。

interfmでスタートした新番組「NY Future Lab」(パーソナリティ:シェリーめぐみ)。ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみが、ニューヨークのZ世代の若者たちと一緒に、日本も含め激動する世界をみんなで見つめ、話し合います。社会、文化、政治、トレンド、そしてダイバーシティからキャンセルカルチャーまで、気になるトピック満載でお届けします。

4月10日(水)のテーマは「ニューヨークのZ世代も空気を読む?」。「NY Future Lab」に所属するアメリカZ世代が、「空気を読む」ことについて思うことを語り合いました。

アメリカの若者も失敗は怖い

アメリカのZ世代のうち、実に9割が転職を考えているという数字があります。一方、日本は、現状維持派が一番多いという情報も。以前から転職が当たり前のアメリカに比べ、日本が少ないのは当然ですが「日本の若者は失敗を恐れて行動できないのでは?」という意見もあります。

では、アメリカの若者は失敗が怖くないのでしょうか? NY Future LabのZ世代のなかでも、日本にルーツがある、または日本に友達がいるメンバーから意見を聞いてみました。

メアリー:私は失敗がものすごく怖い。自分がどれだけ失敗したか、しょっちゅう後悔している。

ミクア:正直に言って、私は失敗を恐れているほうだと思うよ。それが自分の性格だと思う。それほど極端ではないかもしれないけど、そういう傾向があると思う。だって失敗は誰もが望まないし、いい気分ではないでしょう? でも、何かにトライして失敗したとき、「なんだ、それほどひどいものでもなかった」と思えれば、逆に自信につながるんだよね。だから、私はいつも恐れを感じたときに、そのときの気持ちを思い出そうとするんだ。

でも、アメリカに比べて日本では多くの人が「他人がどう思うか」を恐れているんじゃないかな。それも多くの人々を後ろ向きにさせる要因だと思うよ。だって、もし私が失敗したら「みんなが私の失敗を見ている。いったいどう思っているんだろう」と思うと、とても恥ずかしくなるだろうから。

ノエ:日本の社会では、常に他人の考えを気にしているよね。みんなの目から見て、自分は正しいことをしているか、つまり「空気を読んでいるかどうか」ということ。常に他人の視線を気にしているよね。

アメリカの若者も失敗は怖いと感じています。ただ、日本と違い、恐れていても行動するのを止めるわけではありません。違いの理由の1つとして、Z世代評論家のシェリーは「アメリカ人の場合、失敗かどうかは、あくまで自分自身が決めることなんです。そのために『これは失敗ではなく学びのチャンスだ』と気持ちを切り替えやすいんです」と説明します。

日本はどちらかというと、他人がどう判断するかを気にするため、恥ずかしい思いをしたくない、失敗したくないという気持ちが強くなるのではないかとラボメンバーは分析しました。

アメリカZ世代は空気を読むのか?

日本では時として成功の鍵ともされる「空気を読む」スキル。その場で自分が何をすべきか、相手が求めることは何かを暗黙のうちに判断する行動ですが、アメリカ人にもできることなのでしょうか? ラボメンバーに聞いてみました。

ミクア:日本人の母やそのお友達と話すとき、「なぜ日本を離れたの?」と尋ねると、同じ答えなんだよね。(日本では)みんなが他人のことを気にしすぎて、誰もが口を開くのを恐れている。それに疲れてしまったみたい。

たしかにアメリカでも、「あなたがいいか・悪いか」の批判をするけど、そもそもみんながそういう他人の意見を気にしないんだよね。ある意味、アメリカにはより多くの自由があると思う。たとえば、私もおかしいかもしれないけど、「他にもっとめちゃくちゃクレイジーなことをやっている人がいるから」とか思って安心したりもする。だけど、日本だとそういう比較ってなかなかできないんじゃないかな。

ノエ:アメリカにも空気を読むという言い方はあるよ。でも、常に空気を読むわけではなく、必要に応じて読む。だけど日本では、常に空気を読まなきゃならないじゃない? 先輩は、先生は、友達は、社会は何を考えているのか。読まなければならない空気が周りにたくさんありすぎる。それは疲れるよね。

メアリー:時には、それがまどろっこしいと感じることもあるよね。なぜって、誰かに対して「No」と言うとき、ただのNoだけではすまないでしょう? たとえば、誰かに何か誘われたときに「都合が悪いんだ。一緒に行けなくてごめんね」みたいに言うじゃない。英語だったら、ただ「いや、遠慮するよ」で済んじゃう。断る理由を言う必要がないんだよね。

基本的に、アメリカZ世代は空気を読まない傾向があります。人の批判を聞かず、自分で判断する傾向が強いです。その背景には、自由な自己表現のほうが大事という価値観が強く存在するからです。

そもそも人種民族ジェンダーなど、多様な人が暮らすアメリカのダイバーシティ社会では、自分の考えをはっきり口に出さないと、お互いに理解できないという事情もあります。

とはいえ、ノエが言うように、アメリカでも空気を読む特別な場面は存在します。英語における「空気を読む」に当たる言葉は「Reading the room(部屋を読む)」。大事な会議などで、相手の表情やボディーランゲージなどを見て、次に何を言うかを判断することを指す、高いレベルのスキルです。

アメリカのReading the roomに比べ、日本の空気を読むには大きな違いがあります。「ラボのZ世代から見ると、日本でみんなが常に空気を読まなければいけないとしたら、相当大変だろうと思っているわけです」とシェリーは補足しました。

一方で、空気を読むことにはいい面もあると、日本人の両親を持つ日系アメリカ人のノエは話します。

ノエ:たとえば日本の街の清潔さ、人の礼儀正しさ、システムの効率性など、多くの点でいい側面がある。みんながいちいち口に出してコミュニケーションしなくても、システムがよりうまく機能して調和しているのは、みんなが「空気を読める」からでは?

周りが空気を読む結果、調和が取れ、社会のシステムが機能する。ノエの指摘には一理あります。シェリーは「逆にシステムがうまくいかなくなった場合、はっきりと伝えることができなければ、それはそれで大きな問題です」と話し、話題を締めくくりました。