加速する気候変動とZ世代が抱えるメンタル問題 将来を悲観してしまう「Climate Anxiety(エコ不安症)」とは?

「Z世代が抱える『Climate Anxiety(エコ不安症)』について」。気候変動問題や、それに起因するメンタル問題について、「NY Future Lab」のメンバーが話し合いました

「Z世代が抱える『Climate Anxiety(エコ不安症)』について」。気候変動問題や、それに起因するメンタル問題について、「NY Future Lab」のメンバーが話し合いました

interfmで放送中の「sensor」(パーソナリティ:Cartoon)。「NY Future Lab」では、これからの時代の主役となる「Z世代」と「ミレニアル世代」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どのような性質や特徴があるのかなどについて、Z世代・ミレニアル世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していきます。

8月4日(金)のテーマは、「Z世代が抱える『Climate Anxiety(エコ不安症)』について」。気候変動問題や、それに起因するメンタル問題について、「NY Future Lab」のメンバーが話し合いました。

加速する気候変動と「Climate Anxiety(エコ不安症)」

世界的に危険な暑さが続く昨今ですが、異常高温以外にも「このまま気候変動を放置すれば大西洋の海流が崩壊する」「北極の氷が解けることで、インドから南米、アフリカまで広い範囲で降雨パターンが激変し、世界の食糧供給に危機をもたらす」「地下水の汲み上げ過ぎで地球の地軸がずれ始めている」など、気候変動に関する悪いニュースが連日報道されています。

こうした状況のなかで、最近頻繫に耳にする言葉が「Climate Anxiety(エコ不安症)」。気候変動による生活や環境への影響や未来への不安から、不安感や無力感、怒りなどの感情を慢性的に抱いている状態のことを指します。

これがエスカレートすると、不安神経症やうつ病などにも発展する可能性があり、特に若いZ世代がその影響を強く受けているそうです。

まずはラボのメンバーに、気候変動問題についてどう感じているのかを聞いてみました。

ノエ:気候変動問題が自分の生活にかなり影響し始めているということが、最も恐ろしいよ。地球上のいたるところで、激しい暴風雨や雷雨に見舞われる日があるからね。特にニューヨークでは、この10年で嵐の数が格段に増えた気がする。フランスでは長い長い干ばつに見舞われたし、南部では40日間も雨が降らなかった。これは農作物や経済にとってとても悪いことだよ。

長い間、雨が降らなかったので、ものすごく暑い。かと思うと突然雨が降り始めたりもした。外でスケボーをやっていたら、無風だったのに突然ものすごい風が吹き始めて驚いたこともあったな。

シャンシャン:でもここ数年、ずっとこんな感じだった気がするんだけど。どんどん暑くなっているような気もするし。でも夏だからいつも、このくらいの暑さだったんじゃない?

ノエ:少なくともパリでは10年前はこんなに暑くはなかったよ。あと、暑さのタイミングとか。前よりも暑くなるのが早くなった気がする。12月で気温が30度近くになるなんて、普通じゃないよ。

シャンシャン:冬の気温が上がっているということね。実際、今年の冬はニューヨークでもほとんど雪が積もらなかったよね? 雪が降った回数はそれなりだったと思うけれど。

ノエ:その通り。今は雪が少ない。5歳の頃とかって覚えている? 僕が5歳のころの冬は、ニューヨークでは雪が積もっていたのが普通だったような気がする。

ミクア:カナダの山火事の煙で、空がオレンジになったときの話をしてもいい? あのときは空気もオレンジ色で、まるで映画のなかにいるようだった。まるで黙示録、世界の終わりみたいだった! 私は友達のアパートにいて、窓の外を眺めながら「一体何が起こってるの!?」と不安だった。

ノエ:カリフォルニア出身の友達は、カリフォルニアでは(山火事は)普通のことだって言っていたよ。カリフォルニアでは森林火災が多いからね。

シャンシャン:オレンジ色の空が普通なの? 信じられない。私は生まれて初めて赤い太陽を見たよ。「あれ? 赤い月かな?」と思った。

2023年6月にカナダで発生した森林火災は、ニューヨーク在住の人々にとってもショックだったと話すモデレーターでZ世代評論家のシェリー。「しかもいまだに鎮火せずに、燃え続けています。ギリシャのロードス島でも森林火災がありましたし、温暖化による高温や落雷による影響で、世界的に山火事が起こる頻度が増えています」ともコメントしました。

気候変動について、不安を感じている?

日本の電通総研が3月に発表した調査データによると、世界10ヵ国のZ世代(16〜25歳)の6割が、気候変動について「極度に、またはとても心配している」と回答。45%が日常生活に悪影響を及ぼしていると回答しています。

国別で比較すると、不安が最も強いのは、フィリピン、インド、ブラジルの最も気候変動の影響を受けやすい国で、何らかの心配をしている人は100%に近いです。ヨーロッパでは9割半ばに迫り、アメリカもほぼ9割という結果に。

ラボのメンバーたちは、気候変動問題についてどれくらい不安を抱えているのでしょうか? インタビューしてみました。

ノエ:気候変動とは限らないけど、今起きている脅威に対する不安はある。例えば地球の軸の位置がずれているとか、地球が爆発するとか、至るところで人が死んでいるとか、すべてが終末に向かっているような気がして、不安になるよ。

シャンシャン:世界は多くの問題を抱えているように感じる。例えば、世界的な飢餓、大気汚染、森林火災、そして太陽が赤くなってきていることも。

ノエ:でもそれと同時に、僕たちは地球上のほとんどの人たちよりも、ずっと恵まれた暮らしをしているんだよね。

ミクア:私は不安とまでは行かないけど、心配なのは確かね。でも、常に不安を感じているわけではないかな。何かが起きたときや、ネットで見たときだけ考えるって感じ。空がオレンジ色に染まるのを見たときとかね。不安になるのは、そのときだけだと思う。でも、いつもは不安とまでは言わないけれど、確かに気にはなっている。

メアリー:それでも、(気候変動を改善するために)自分の行動をそこまで変えることはなかなかできない。例えば、プラスチックの使用量を減らすなど、自分の生活のなかで何かを変えようとしても難しい。私たちは企業ほど多くのゴミを出しているわけではない。企業にゴミを出さないようにしてほしくても、私が望んでいるほどには規制されていない。

ノエ:人間は欲が深いからね。人は自分にとって得になり、地球にとって得にならない選択肢を取ろうとする。そして、これからもそうし続けるだろうから。

メアリー:でも、政府が企業に対して、地球にとってより良い選択肢を取らせるよう規制するのでは? 私はそれを期待しているんだけれど。

シャンシャン:それはどうかな……。

ノエ:そうなったらそうなったで、企業はいろいろな手で抜け道を探そうとすると思うよ。

ラボのメンバーたちは不安症とまではいかないものの、気候変動問題に対してさまざまな思いを抱えているようでした。なかでも、環境を汚染している企業は、どうしても利益優先になり排出基準を下げられず、政府もそこまで規制できないということに対しては怒りや無力感など、複雑な感情を抱いているようです。

ちなみに電通総研の調べによると、日本のZ世代で気候変動問題について何らかの心配を持つ人は83%と、10ヵ国中最も少ないという結果に。「日本には気候変動を『自分ごと化』している人が少ないという問題が存在する。気候変動とメンタルヘルスを巡る問題への関心を高めながら、同時に『正しく怖がる』ことも今の日本にとっては必要」だと指摘しています。

シェリーは「不安になりすぎると、現実を直視しない心理になってしまいます。メンタルを病んでしまっては良くないので、程度の問題だとも思うのですが、やはり不安な気持ちがないと『何かを変えよう』というモチベーションは起こりづらい。できることはたくさんあるので、正しく不安を感じて『何ができるのか』を考えてほしいです」とコメントし、疑問に思ったこと・不安に思ったこと・改善していきたいことなどを、身の回りの人たちと議論していくべきだと呼びかけました。