幼少期のノスタルジア、アニメの実写化…映画「バービー」をアメリカのZ世代はどう見ている?

「アメリカZ世代は映画『バービー』をどう見ている?」。日本でも公開がスタートした映画「バービー」について、「NY Future Lab」のメンバーが話し合いました

「アメリカZ世代は映画『バービー』をどう見ている?」。日本でも公開がスタートした映画「バービー」について、「NY Future Lab」のメンバーが話し合いました

interfmで放送中の「sensor」(パーソナリティ:Cartoon)。「NY Future Lab」では、これからの時代の主役となる「Z世代」と「ミレニアル世代」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どのような性質や特徴があるのかなどについて、Z世代・ミレニアル世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していきます。

8月11日(金)のテーマは、「アメリカZ世代は映画『バービー』をどう見ている?」。日本でも公開がスタートした映画「バービー」について、「NY Future Lab」のメンバーが話し合いました。

アメリカでは「バービー」が大ブーム!

日本でも8月11日(金)から公開が始まった、着せ替え人形のバービーをモチーフにした映画「バービー」。世界で10億ドル(約1,400億円)の興行収入を達成し、女性監督(グレタ・ガーウィグ)としては初の快挙を成し遂げました。

アメリカでは「バービー・コア」と呼ばれるファッションも流行しており、バービー旋風が巻き起こっています。「バービー・コア」は、一体どのようなファッションなのでしょうか? ラボのメンバーに聞いてみました。

ノエ:「○○コア」というのは、基本的にはエステティックという意味で、主に視覚的なおしゃれ感、1つのテーマに沿ったファッションスタイルという感じかな。

メアリー:例えば「コテージ・コア」っていうファッションがあるけど、森の中のコテージに住んでいるイメージの服装なの。木に囲まれて、妖精がいたり、キノコがあったりする感じなんだよね。(日本風ファッションを指す)「ジャパニーズ・コア」とかもあって、要は何にでも「コア」があるってこと。つまり「バービーをイメージすると、どんな感じ?」というイメージを表現したファッションが「バービー・コア」。

シェリー:どうしてバービー・コアは人気なの?

シャンシャン:映画のプロモーションのおかげじゃない?

メアリー:例えば、ラッパーのニッキー・ミナージュって、ずっとバービー・コアのスタイルだよね。だから彼女のファンベースも“Barbz”って呼ばれている。だから、バービー・コアは常に人気があったけれど、バービーの映画がそれを盛り上げたのかもしれない。

人によっても違うと思うけど、ネット上ではとにかくバービーに夢中な人もたくさんいる。ただ、人形自体にじゃなくて、そのコンセプトや映画、極端な女性らしさに惹かれているんだと思う。極端なものって人気を集めるじゃない。

シャンシャン:私は最近、バービーカフェの前を何度か通り過ぎたんだけど、いつも外に長い行列ができているの。中に入るには予約が必要だったので、帰ってからYouTubeのレビューを見てみたら、あんまり行く価値はなさそうだった。

ミクア:なんで行く価値がないと思ったの?

シャンシャン:だって、飾りつけだけなんだよ。それに実際にググるまでは料理もおいしそうに見えたんだけど、実はアメリカの普通の食べ物で、カラフルでおしゃれな名前が付いているだけだった。「目玉焼きとベーコン」が20~30ドルくらいするの。それに食事代とは別に入場料も払わなきゃいけないし。

メアリー:それはありえないね。

バービーの世界をイメージしたピンクやブルーの店内で、同じくバービーをイメージした食事が楽しめる、ニューヨークの新しい観光スポット「バービーカフェ」。モデレーターでZ世代評論家のシェリーは、お店の前にはいつもバービー・コアのファッションに身を包んだ若者が溢れていると話します。

入場料は日本円で5,000~7,000円(時間帯によって変動)で、ドリンクメニューが2,500円、食事のメニューも3,000~5,000円ほどするため、中には入らずに雰囲気だけを味わって帰る人も多いのだとか。

■「バービー」観に行く? 行かない?

人形自体は誰にでも手に入る価格帯のため、バービー人形で遊ばなかったアメリカ人女性はほぼいないと言い切ってもいいレベルだと話すシェリー。昔から、大人になってもバービー人形好きの人が、バービー・コアファッションを楽しんでいるのだそう。

ノスタルジアに高い値段をつけて売る、という行為に反感を抱いているメンバーもいるようですが、ラボのメンバーは映画「バービー」を観に行きたいと思っているのでしょうか?

※この座談会は映画公開前におこなわれました。

メアリー:無料だったら観るけどね。そもそも私は、映画館に行かないんだよね。かなり気になる映画以外は。

ノエ:僕も積極的にお金を払って観に行こうとは思わないな。友達が昨日「バービーの映画を観に行こうよ」って言ってきたから、友達と一緒に行くかもしれない。どうしても観たいから行くわけじゃないよ。

ミクア:私もそんなに観たいわけじゃないんだけど、友達に「映画館でバービーを観よう」と言われたから、「まあ、行こうかな」と思っているぐらいの感じ。あとは俳優陣がいいから、それにはちょっと興味があるかな。

ノエ:ハッキリ言って、僕らはザッカーバーグとイーロン・マスクみたいな人たちがやっているソーシャルメディアに、めっちゃ影響されているんだよ。バービー映画を観たいという人の95%くらいが、SNSの大量の広告かYouTubeの動画に影響されて観たくなったんだよ。GoogleやInstagramも含めてね。

誰も「お、バービーの映画がやるんだ。行きたいな」とは思っていないけれど、予告編やネットミーム、広告、それを何度も何度も見せられているうちに、バービー映画の存在感がデカくなったんだよ。

ミクア:ディズニーや他の映画会社は、私たちが子どもの頃に観ていたアニメの実写版をどんどん作ろうとしている。今はそういうのが本当に人気なんだよ。「実写版はやめるべきだ」って考える人もいるけど、映画会社はノスタルジアとか、子どものころに観ていた私たちの大切なキャラクターやアニメから利益を上げていると思うんだよね。

大人になって、それが実写化されて「ああ、すごく良かった」って言う人もいれば、「がっかりした」って言う人もいる。オリジナルには敵わないってね。これからどうなるか注目だと思う。

ラボのメンバーが話す通り、映画「バービー」はSNSマーケティングに異常なほど力を入れており、その広告費は約200億円。これは映画製作費を超える金額だと言われています。SNSや動画サイトを開けば嫌でも「バービー」の宣伝が目に入ってくる……という状況がしばらく続き、その狙い通りの興行収入を上げています。

一方で、日本では映画「バービー」を巡って、SNSでの炎上騒動もありました。原子爆弾の開発者をテーマにした映画「オッペンハイマー」と「バービー」の公開時期が同じということで、SNSでは「#Barbenheimer(バーベンハイマー)」という、2つの映画を掛け合わせたミームが発生。

「原子爆弾」と「バービー」を組み合わせた合成画像やファンアートが、次々とSNSに投稿され、その中の1つである「原爆の炎の中で笑顔を振りまくバービー」の画像に、映画「バービー」公式アカウントが肯定的な反応(リプライ)をしたことがきっかけで、日本人から怒りと抗議の声が上がりました。

この騒動について「アメリカ人全員が『#Barbenheimer(バーベンハイマー)』のミームを面白がっているわけではありません。異様だと感じている人もいます」と付け加えたシェリー。

さらに「『オッペンハイマー』も『バービー』も、今の社会の問題を暴いている作品です。『バービー』はフェミニズムの映画で、男社会で生きる女性に力強いメッセージを送っている一方で、男性にも温かい目線を送っています」とも話し、SNS上の炎上を残念に思いつつも、映画自体の出来はとてもよかったとコメントしました。