話題の“マルハラスメント”はアメリカにもある?誤解を招く句点・ピリオド問題をアメリカZ世代が考察

ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみがパーソナリティを務めるinterfmのラジオ番組「NY Future Lab」(毎週水曜日18:40~18:55)。ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみが、ニューヨークZ世代の若者たちと一緒に、日本も含め激動する世界をみんなで見つめ、話し合います。社会、文化、政治、トレンド、そしてダイバーシティからキャンセルカルチャーまで、気になるトピック満載でお届けします。

4月24日(水)のテーマは「アメリカにも“マルハラ”はある?」。「NY Future Lab」に所属するアメリカZ世代が、チャットコミュニケーションでピリオドを打つかどうかについて語り合いました。

■アメリカZ世代はチャットのピリオドをどう感じる?

現在、日本の若者のあいだでは「マルハラ」と呼ばれる新たなハラスメントが注目されています。

マルハラとは「マルハラスメント」の略語。LINEなどのコミュニケーションアプリで句点(。)を使用することによって、相手に「文章が冷たい」「怒っているのでは?」などと感じさせてしまう現象を示す言葉です。

実は、このような現象は日本だけに限らず、アメリカZ世代のあいだでも似たようなことが起きている、というのが今回のテーマ。ちなみに、日本のマルはアメリカではピリオド(.)に当たります。

アメリカZ世代は、チャットでピリオドを使うことに違和感があるのでしょうか? ラボメンバーから意見を聞きました。

ノエ:マルハラって最初は日本だけのことかと思ったけれど、アメリカでも同じようなことが起こっているんだよね。アメリカのZ世代も同じように感じているみたい。

世界中で広がっている現象なんだよ。テキストメッセージの最後にピリオドを打つのは、Z世代にとっては不快なんだ。「何か言いたいの?」って感じるんだよね。

ミクア:そうね。気軽なチャットの最後にピリオドを打つのは、ちょっと受け身な攻撃性を感じる。もうメッセージは終わっているのに、そこに余計な力が入っている感じ。要するに、ピリオドを打つこと自体に何か意味を持たせている感じがするんだよね。

だから、チャットみたいに短い文章の終わりにピリオドを入れると、見た人は「相手がすごく真剣なのではないか」とか「怒っているんじゃないか」って受け取るんだ。

なぜそうなるかというと、たぶん、チャットでコミュニケーションをするときって、相手の顔を見たり声を聞いたりすることができないから。だから、失礼だとか、真剣すぎるとか、皮肉っぽいとか、そういう勘違いをされないようにしたいんだと思う。トラブルを避けるために「ピリオドはなし」に合わせたほうがいいと思うんだよね。

やはり、アメリカZ世代もチャットのときはマル、すなわちピリオドを打ちませんでした。顔が見えないカジュアルなコミュニケーションだからこそ、相手に失礼な言動を取らないように気をつけているようです。

■マルハラは本当に“ハラスメント”と言えるのか?

ピリオドを打たないことで円滑なコミュニケーションを図るアメリカZ世代ですが、一方でハラスメントだと捉える感覚まではなさそうです。

なぜ、日本人は句点を打つことをハラスメントだと感じるのでしょうか? ラボメンバーたちが背景を推測しました。

ヒカル:日本ではマルハラはパワハラの一種なんだよね。上司とチャットしているときにそれが起こる。

メアリー:それって本当にハラスメントなの? 嫌がらせなの?

ヒカル:個人的にはそうは思わないけど、日本で若い子たちがそう感じているなら、その可能性もあるかもね。よく「今の若い子どもたちは精神的に弱い」と言われるし。でも、そんな小さなマルがハラスメントだなんてちょっとクレイジーだと思うけど。

相手から与えられる、目に見えないけれど小さなストレスって、時間と共に蓄積されるじゃない? 毎日上司からそういう受け身で攻撃的な扱いを受けていたら、本当にストレスが溜まるだろうけどね。

メアリー:それは状況にもよると思うけど。

ノエ:そうだね。おそらく世代によっても違うだろうし。

ヒカル:でもね、上司との関係はあくまでビジネスで正式なものだよね? だから、上司とのチャットでプロフェッショナルな感じを出すために、マルとかピリオドを使うのは間違っていないと思うけど?

メアリー:そうかな。日本はアメリカと違って、上司は部下に対して、一緒に飲みに行って親しくなることを期待しているんじゃないの? そこまでするなら、上司も部下もマルはなしでいいんじゃないの?

アメリカのZ世代も日本と同じように、カジュアルなチャットでは、攻撃的な印象を避けるためにピリオドを打ちません。しかし、相手にピリオドを打たれたからといってハラスメントと感じるわけでもありません。その違いはどこから来るのでしょうか?

話し合いのなかでわかったことは、上司と部下との関係性。アメリカでは職場の人たちはあくまでビジネスの関係で、仕事のあとに上司が部下を誘って飲みに行くことは基本的にありません。ビジネスのみの関係という前提があるから、堅苦しいのが当たり前という考え方です。

ところが、日本では上司は部下との距離を縮めようとしがちです。LINEなど、友人間で使用しているプラットフォームだからこそ、マルが余計に気になるのかもしれません。

アメリカでは業務上でグループチャット機能を使いますが、使用用途はあくまでも仕事のためだけです。Z世代評論家のシェリーは「プライベートとの線引きは日本よりはっきりしているかもしれません」とコメントしました。

ラボメンバーのノエは、新しい観点でマルについて分析します。

ノエ:日本語のマルは、英語のピリオドよりもずっと攻撃的だよ。英語のピリオドの見た目はただの点だけど、日本語のマルは人の顔みたいに丸くて大きい。なんだか本当に「硬い」って感じがする。

視覚的にも、日本のマルはインパクトがあって威圧感があるというノエの意見。SNSやチャット文化の広がりで、日米共通でマルとピリオドが嫌われていることがわかりました。そうしたなかで「それをハラスメントと言うのはどうなの?」という意見も。シェリーは「なぜハラスメントと言うべきではないのかは、来週お届けします」と話し、話題を締めくくりました。