アメリカでスメハラを指摘すると“人種差別”にあたる? ニューヨークZ世代が日本で増加する「〇〇ハラスメント」を考える

「日本ではなんでもハラスメントになる?」。「NY Future Lab」に所属するアメリカZ世代が、日本におけるハラスメントについて意見を交換しました。

「日本ではなんでもハラスメントになる?」。「NY Future Lab」に所属するアメリカZ世代が、日本におけるハラスメントについて意見を交換しました。

ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみがパーソナリティを務めるinterfmのラジオ番組「NY Future Lab」(毎週水曜日18:40~18:55)。ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみが、ニューヨークZ世代の若者たちと一緒に、日本も含め激動する世界をみんなで見つめ、話し合います。社会、文化、政治、トレンド、そしてダイバーシティからキャンセルカルチャーまで、気になるトピック満載でお届けします。

5月1日(水)のテーマは「日本ではなんでもハラスメントになる?」。「NY Future Lab」に所属するアメリカZ世代が、日本におけるハラスメントについて意見を交換しました。

アメリカZ世代は「スメハラ」をどう感じるのか?

前回の放送では、「マルハラ」と呼ばれる新たなハラスメントをピックアップしました。「嫌がらせ」を指す言葉であるハラスメント。日本ではパワハラやセクハラ以外にも、パタハラ(男性が育休取得をする際の嫌がらせ)、アルハラ(飲酒の強要などの嫌がらせ)、カスハラ(客から店員に対しての嫌がらせ)といった言葉が増えています。

数あるハラスメントのなかのひとつ、スメハラ(スメルハラスメント)は、臭いにより周囲を不快にさせるハラスメントを指す和製英語です。ニューヨークのZ世代はスメハラにどのような反応を示すのでしょうか?

メアリー:「あなたはとても臭くて、私を悩ませている」というのがハラスメントってこと?

ヒカル:そうだよ。

メアリー:嘘!? 英語のSmell(匂い)ってこと? 私は単なるジョークだと思って言っていたんだけど。

シャンシャン:えーっ。体臭は自分ではコントロールできないのに。

ヒカル:それに対して多くの人が苦情を言っているんだ。

シャンシャン:臭いだけでハラスメントって言うのは、逆に個人攻撃では?

メアリー:それってもしかすると人種差別的でもあるのでは? だってよく言うでしょう? 日本人は特別な細菌を持っていないから、汗をかいても臭わないって。

ミクア:そういうことだったんだ! このあいだ日本に行ったとき、アメリカ人はみんな使っているデオドラント制汗剤を弟が探していたんだけど、全然見つからなかったんだよね。売っていないのかなと思って聞いてみたら、店員さんに「デオドラントって何?」って聞かれた。説明したら、わきの下を拭くワイプならあるよって。

「日本では制汗剤を使わないの?」と尋ねると、「ちょっと拭くだけで大丈夫だから」って言われた。アメリカではみんなスティックタイプの脇の下に塗るデオドラントを使うから、お店の棚が全部制汗剤だったりする。

メアリー:これは日本に住んだことのある外国人のアドバイスで知ったんだけど、日本に行く人はスーツケースいっぱいにデオドラントを持ってくる必要があるって書いてあったよ。

スメハラの話から、いつの間にか制汗剤の話題になりましたが、アメリカのドラッグストアにはさまざまな種類のデオドラントや制汗剤が売られています。Z世代評論家のシェリーは「体臭がある人もない人も、さまざまな人種民族がひしめきあうダイバーシティの国がアメリカです」と背景を説明します。

体臭はあって当然のもので、恥ずかしく感じるものでもなく、デオドラントで防げばいい。それが、お互いが違っても受け入れようと努める、アメリカという国の包括的なスタイルです。「体臭は肌や髪の色と同じで、自分ではコントロールできませんよね。そういう人に対して『あなたの臭いがハラスメント』と言ってしまったら、特に相手が違う人種だった場合に、人種差別的と捉えられても仕方ないと思います」とシェリーはコメントしました。

世の中にはデオドラントを使いたくない人や、毎日シャワーを浴びる習慣がない人もいます。日本では当たり前と感じることが、世界で見ると珍しいケースは少なくありません。スメハラは“繊細な問題”だということを心に留めておいたほうがいいかもしれません。

ハラスメントが増えることによる弊害を考える

続けて、Z世代のラボメンバーが何かにつけて「ハラスメント」と言ってはいけない理由について語り合います。

メアリー:日本人は場の空気を読み過ぎる。必死に空気を読もうとするから、ハラスメントと感じやすいのでは?

ヒカル:そうそう。若い人が「マルハラがハラスメント」だと感じることで、逆に上司に対するハラスメントをしていることになるっていうのが、今の日本での反論なんだよ。わかる? ハラスメントへのハラスメント、つまり「ハラハラ」だよ。

日本は、何かがトレンドになると、それを大げさにする傾向があるかもしれないね。たとえば、メアリーが言っていたんだけど、今の日本はSDGsの考えに捉われてしまっているみたい。昔は「SDGsって何?」と誰も気にしなかった。でも、トレンドになると超大事にするようになるんだ。だから、ときにはそれを過剰に受け取ることがあるかもしれない。

メアリー:でもさ、何でもかんでもハラスメントとして使うのは嫌いだな。そうすると本当の問題が分からなくなっちゃうし。

ノエ:「相手はどう思っているんだろう?」って細かいところで議論してるうちに、すべてがハラスメントになっちゃう。なのに、本当に性的な嫌がらせを受けた人がいるときは、「それについて誰も話していない」みたいなことも起きている。

日本人の特性として、相手の気持ちを読もうとしすぎるあまり、神経がすり減ってしまって、すべてがハラスメントとして感じてしまう、というラボメンバーの指摘。メディアやSNSを通じて増幅されてエスカレートした結果、マルハラやスメハラといった言葉が生まれるのではないかとラボメンバーは推測しました。

当事者にとっては大事なことかもしれないものの、何でもハラスメントになることで、もっと深刻なセクハラなどの問題が軽視されることになるのでは、というのがニューヨークZ世代の主張です。意見に同調したシェリーは「アメリカでもありがちですが、深刻な問題ほど話題にしづらいから、解決が後回しになりがちです。自分がそれに加担していないかを考えさせられました」と話し、話題を締めくくりました。