ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみがパーソナリティを務めるinterfmのラジオ番組「NY Future Lab」(毎週水曜日18:40~18:55)。ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみが、ニューヨークZ世代の若者たちと一緒に、日本も含め激動する世界をみんなで見つめ、話し合います。社会、文化、政治、トレンド、そしてダイバーシティからキャンセルカルチャーまで、気になるトピック満載でお届けします。
6月26日(水)のテーマは「アメリカZ世代の約3割がLGBTQを自認。なぜ増えている? ラボのZ世代が大論争」。「NY Future Lab」に所属するアメリカZ世代が、アメリカでLGBTQを自認する人々が増えている背景について意見を交わしました。
アメリカZ世代のLGBTQの割合が増えている?
6月は「プライド月間」と呼ばれ、アメリカをはじめとする世界各地でLGBTQ+の権利を啓発する活動がおこなわれています。LGBTQとは、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーなどをはじめ、さまざまな性的マイノリティを包括して呼ぶ言い方です。
アメリカではZ世代の28パーセント、つまり3割近くが自分をLGBTQと自認している調査結果もあります。アメリカ人全体だとLGBTQを自認する人の割合は10パーセントなので、Z世代の割合が突出して多いことになります。また、去年の別の調査では、Z世代のLGBTQの割合は20パーセントでした。単純に比較はできませんが、かなりの増加傾向にありそうです。
ニューヨークZ世代で構成されたラボメンバーの肌感覚だと、今回の調査結果は妥当と思えるのでしょうか?
ノエ:僕はアメリカZ世代の28パーセントがLGBTQという数字を100パーセント信じるね。
メアリー:わからないけど、この数字は少なすぎるかも?
ミクア:そうね。もう少しいるかもしれない。
ノエ:僕の友達は、少なくとも半分はゲイなんだよね。これは、僕たちがリベラルなグループだからかもしれないけど。
メアリー:保守が強い州にもゲイはちゃんといるよね。周りからすごく蔑まれているかもしれないけど。
ケンジュ:実際、もし本当に20パーセントから30パーセントに増えたとしたら、1.5倍になったわけだよね。もしそれが自然に増えたんだとしたら、その人たちが以前いなかった理由は何? 僕は、周りにLGBTQが増えたから、それに影響されて増えていると思うんだよね。
ミクア:その考え方はわかるな。ただ、以前は自分の正直な姿を見せるのは恥ずかしいと感じる状況にあったから、本当の姿を隠していたというのもあると思うんだよね。だけど、私たちの世代がそれをより受け入れるようになっているでしょう? それで多くの人が興味を持つという流れはあると思うよ。「同性と付き合ってもいいんだ」と気付いたら、多くの人々が好奇心を持って試してみるっていうのはあるよね。
LGBTQを自認するアメリカZ世代が全体の3割近いという数字。妥当どころか、もっと多い気がするという意見も出ました。LGBTQが増えた理由について、ミクアは「(昨今の傾向から)LGBTQであることを恥だと思わなくてもよくなったから増えたのでは」と推測します。
調査結果によると、LGBTQを自認するZ世代の半分はバイセクシャルです。Z世代専門家のシェリーは「自分の性的嗜好を探す過程でそうなっているとも考えられるし、バイと言っておくほうが安全だから、という見方もあります」と説明しました。
LGBTQは“環境要因によるもの”という考え方もある
アメリカでは、LGBTQはNature(生まれ持ったもの)かNurture(環境要因によって育まれるもの)かいう議論がいまだにあります。ラボメンバーたちのあいだでも意見が割れました。
ノエ:LGBTQは自然なものなのか、環境の影響なのかという問題もあるよね。
ケンジュ:正直に言うと、僕は間違いなく環境が原因だと思うよ。それが僕たちの世代のあいだでLGBTQの人が増加傾向にあるのでは?
ノエ:もしそうだとしても、何か問題があるのかな? 周りにそういう人が増えたからといって、みんながゲイになるわけではないよね。繁殖に影響するということかな?
メアリー:ちょっと言いたいことがあって。左利きの研究についての話で、昔、左利きは悪魔と結びつけられていたから、右手を使うようにって言われていたんだよね。
ノエ:そうだね。僕が5歳だった頃、20年前だけど、毎週土曜日の日本語学校では右手を使うのが正しいって言われたよ。
メアリー:つまり、左利きの人口が急増したのは、左利きが問題視されなくなったから。同じように、LGBTQであることが悪いことと見なされなくなったから増えているということなんだよね。
たとえば、私がミクアやケンジュに「君たちはどっち?」と尋ねたら、どう答える?
ケンジュ:僕は10万パーセントストレート、異性愛者だよ。
メアリー:ではケンジュ、あなたは異性愛者であることを選んだの?
ケンジュ:選んでいないよ。それが僕の自然なあり方だから。
メアリー:そうでしょう? だってそうなんだから仕が方ない。LGBTQとはそういうものなんだよね。
今回は、LGBTQは生まれついてのものだという意見のほうが優勢でした。それぞれの意見は尊重されるべきものですが、環境要因、育つ過程でなるという考え方が、特にアメリカの保守州で強い傾向にあります。それがLGBTQの人権を制限する社会の動きや法律の制定にまで発展しています。
実は、アメリカには現在LGBTQの権利を制限する法律が500以上あり、今やますます増えています。特にフロリダ州はもっとも厳しく、性的指向や性自認に関することを中学生以下には教えてはいけません。
トランスジェンダーに対する医療を提供した医者には、刑事罰が与えられ、トランスジェンダーが性自認に合ったトイレを使用することも犯罪になります。これに伴ってLGBTQへの偏見やヘイトクライム、暴力も激増しています。
異なる価値観や生き方を認めないと、社会は対立や差別が増えて不安定になります。シェリーは「自分と価値観がまったく違う人も自由に生きる権利があることを認めるのが、多様な世界です。それがより寛容で、お互いに優しい社会だと思うんですよね」と述べ、話題を締めくくりました。