ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみがパーソナリティを務めるinterfmのラジオ番組「NY Future Lab」(毎週水曜日18:40~18:55)。ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみが、ニューヨークZ世代の若者たちと一緒に、日本も含め激動する世界をみんなで見つめ、話し合います。社会、文化、政治、トレンド、そしてダイバーシティからキャンセルカルチャーまで、気になるトピック満載でお届けします。
6月12日(水)のテーマは、「トランプ有罪判決へのアメリカ人の異常な反応に、ニューヨークのZ世代も困惑」。「NY Future Lab」に所属するアメリカZ世代が、ドナルド・トランプ前米大統領の有罪判決について語りました。
刑事事件で有罪となったトランプ氏に何を思う?
トランプ前大統領が、不倫相手への口止め料の支払いをめぐって、業務記録に虚偽記載をしたとして罪に問われた裁判で、ニューヨーク州地裁の陪審団は34件の罪状すべてに有罪の評決を下しました。
元大統領が刑事事件で有罪になるのはアメリカ史上初。さらに、次のアメリカ大統領選に立候補しているという、前代未聞の異常事態となっています。アメリカZ世代で構成されたラボメンバーたちがこのニュースを最初に聞いたとき、どう感じたのでしょうか?
メアリー:有罪でびっくりした。だって、司法制度は金持ちや有名人を特別扱いすると思っていたからね。だから、いい意味で驚いた。彼が実際に刑務所に行く可能性はすごく低いけど、それが話題になっていること自体が面白く感じる。
ノエ:正直、僕は驚かなかったね。だって、有罪でも無罪でも何も変わらないでしょう? それが僕の正直な気持ち。有罪になったからといって何が変わるっていうの?
ケンジュ:僕も同じ気持ち。有罪と聞いてもそれほど驚かなかった。「ああ、またか」って感じかな。彼が最初に大統領として弾劾されたときは、すごく大きな出来事だと思ったよ。弾劾されたからには辞任するだろうとみんなが言っていた。でも、何も起こらなかったよね。
彼が(不倫相手の)ポルノ女優に口止め料を支払ったというニュースが最初に出たのは、2018年だよ。大きな話題になったけど、やはり何も起こらなかった。だから、有罪と聞いたときも「ふーん。よかったね」くらいにしか思わなかったよ。
ケンジュ:それよりは、この結果がどう選挙に影響するかのほうが気になるね。有罪になったことで、人々がトランプをさらに支持するようになると言っている人もいるけど、どうなるか興味深いよ。
メアリー:人によっては真逆の反応をしているよね。この評決のあと、トランプは5,280万ドル(約83億円)もの選挙資金の寄付を受けたんだよ。こういう熱烈な支持者もいるけれど、もちろんそうではない人もいる。
判決が出る前におこなわれた世論調査では、トランプに投票すると答えた人に「もし彼が有罪になったら、誰に投票しますか?」と質問した。それに対して、ごくわずかだけど「バイデンに投票する」と答えた人がいた。これは世論調査なので、本当にどうなるかはわからないけれど。とにかく、あまりにも真逆のことが同時に起きていて、すごく異様に感じる。
一連の動きに冷静な反応を示すラボメンバーたち。これまでも何度も期待したけれど何も起こらなかったから、という言葉からは、政治だけでなく司法に対してさえ信頼を失っているのが伺えます。
ラボメンバーがもっとも気にしているのは、有罪判決による大統領選への影響です。これまでもトランプ氏は起訴されるたびに、支持者のサポートがさらに盤石なものになっていました。
世論調査では、アメリカ人の47パーセントが「判決は政治的なもの。トランプ氏は無罪」と考えています。一方、正当な判決だと考えているのは50パーセントです。アメリカはこの判決をめぐって真っ二つに分断しています。
バイデン氏とトランプ氏の得票予想も評決前とほとんど変わらず拮抗状態。「有罪判決を受けた罪人が立候補しているだけでも異常なのに、その彼に投票するというのもこれまでの常識では考えられません。まさに異常事態です」と、Z世代専門家のシェリーはコメントしました。
トランプを支持する黒人が増えている
トランプ氏には大統領就任以前から差別的な言動が目立ち、2016年の大統領選挙では黒人有権者のうちトランプに投票したのはわずか6パーセントでした。ところが、これまでは圧倒的にバイデン支持だった黒人やヒスパニックなどのマイノリティたちは、現在トランプ氏への支持を高めています。
先日、トランプ氏はニューヨークでも黒人やヒスパニックが多く住むブロンクス地区で集会を開き、聴衆たちから大きな注目を集めて話題となりました。ラボメンバーたちの感想を聞きます。
ノエ:トランプのブロンクスでの集会を見た?
メアリー:見たよ。超笑える。
ケンジュ:地元のラッパーを2人呼んだんだよ。僕は高校の頃にそのラッパーを見たことがあるけれど、今ではトランプを支持して集会でパフォーマンスをしているなんて、もう面白すぎるよ。
ノエ:トランプはポップカルチャーを利用しようとしているよね。それがマイノリティ有権者にアピールする方法なんだよ。なかなかやるよね。
ケンジュ:だけど、呼んだのは別に大物のラッパーじゃなかったけどね。
ノエ:それがいいんだよ。アンダーグラウンドとまではいかないけど、大物の商業的なラッパーを呼ばないのがトランプらしい魅力だと思うな。
メアリー:だけど、ブロンクスって民主党がめちゃくちゃ強くて、トランプの共和党はすごく弱いんだよ。なぜ彼がそんなところで集会をやったのか、すごく不思議じゃない?
ノエ:いやいや、今はすべてがとても流動的だよ。共和党が弱いと言っても、最終的に「バイデンかトランプか」ということになったときには、どうなるかわからないと思う。一部の人は単に「まあ、しょうがない。トランプに投票するか」と思うかもしれないし。
ケンジュ:ブロンクスも今やトランプ支持になったと思う。ニューヨーク全体を見ても、以前よりもトランプを支持していると思う。
ノエ:以前よりは、というかずっとだよね。このあいだチャイナタウンに行ったんだけど、かなりの数の中国系アメリカ人のトランプ支持グループがいたよ。
ニューヨーク州では2022年の中間選挙で、共和党が票をかなり伸ばしました。また、ラボメンバーの肌感覚としてもトランプ氏を支持する人が増えていると感じるそうです。
トランプ氏はそのチャンスを逃すまいと、ニューヨークの代表的なマイノリティのコミュニティであるブロンクスを訪れることで、全米のマイノリティ層にアピールしています。
その背景にはバイデン氏の絶望的な不人気があります。特に若者のあいだでは、トランプ氏とバイデン氏どちらも選ばず、今度の選挙は投票しないという声も多くなっています。
シェリーは「バイデン氏はなぜそこまで嫌われるのでしょうか。そして、棄権する人が増えた場合、選挙の結果はどうなるのか。続きは来週お伝えします」とコメントし、話題を次回につなげました。