intrefmで放送中の「sensor」(パーソナリティ:Cartoon)。「NY Future Lab」では、これからの時代の主役となる「Z世代」と「ミレニアル世代」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どのような性質や特徴があるのかなどについて、Z世代・ミレニアル世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していきます。
3月1日(金)のテーマは、「国際女性デーを前に考える 世界的な男女の政治的分断が結婚にも影響?」。「NY Future Lab」のメンバーが、3月8日(金)の「国際女性デー」に注目し、アメリカで話題になっている男女の政治的な分断について語りました。
男女間の政治的な考えに差が出てしまう理由
1904年3月8日、アメリカ・ニューヨークで女性労働者が婦人参政権を求めてデモを起こしたのが起源となり、国連は1975年に3月8日を「国際女性デー」と制定。これによりアメリカをはじめとする各国は、3月を「女性史月間」としています。
そうしたなか、世界では男女の政治的な分断が起こっています。アメリカでは歴史的に女性のほうがリベラルで男性は保守という傾向が強く、Z世代ではさらに顕著です。
リベラルは、個人の平等や権利を守るために政府が機能すると考えています。一方で、保守は自己責任の考えを持ち、政府が干渉しない自由経済を望み、伝統的な価値観を重視します。
調査によれば、アメリカの18歳から29歳の女性の42パーセントがリベラル。それに対し、男性はわずか25パーセントです。特に男性の傾向は変わらない一方で、女性のリベラル化が進み、この差は過去5、6年で開いたことが明らかになっています。
現在、政治的な考えの違いから、男女の恋愛や結婚にも影響するのではないかと懸念されています。では、実際にラボのZ世代は女性と男性の政治的な考え方が分断していると思っているのか、聞いてみました。
ケンジュ:たしかに分断は広がっていると思う。男性は保守主義に傾いている一方で、女性はリベラルでプログレッシブな方向に向かっていると思う。溝の広がりがたしかにあると感じる。この大きな変化には、現代のフェミニズム運動とSNSの影響があると思う。SNSで情報がより速く広まり、多くの人々の関心を集めているからね。
メアリー:SNSといえば、アンドリュー・テイトというインフルエンサーがいたよね。彼は若い男性たちに「男らしさ」を広めようとして、特に金持ちであることを誇示している。
問題は、彼がとても女性蔑視的だということ。非常に保守的な考え方をしていて、女性は特定の場所にいるべきで、男性がすべての仕事をすべきと考えている。
結果的に彼は女性の人身売買に関与しているとして逮捕されたけど、彼が与えた影響は小さくはない。特に小学生くらいの男の子が影響されて、そういう子どもたちが「女性は台所にいるべき」みたいなことを言い始める可能性があるということ。
ノエ:逆に考えると、そもそも僕たちはみんな、男性が権力を持つ父権社会のなかにいるということだよ。つまり、権力を持つ人々やグループは、その権力を維持することを望むでしょう?
かと思うと、そうでない人はそれを打ち壊したいと望む。特に、下のほうにいる人々やグループは余計にね。たとえば白人と、白人以外のピープル・オブ・カラーを比べると、あきらかに白人は保守的な傾向が強いんだよね。
ピープル・オブ・カラーにももちろん保守的な人もいるけど、進歩的な考え方をする人が白人よりもはるかに多いと思うよ。権力を持つ男性とそうでない女性の関係も、それと同じじゃないかな。
権力を持っている側は「今のままのほうが都合がいい」と保守的になり、そうではない側は「変化がほしい」とリベラルになるのは、実は世界的な傾向です。ドイツ、イギリスにも男女間の政治的立ち位置に開きがあり、韓国や中国でも同様の傾向が出ています。
韓国では婚姻率が急落し出生率が低下しており、2022年には女性1人当たりの出生数が0.78人と、世界のどの国よりも低くなっています。背景には「男女の考え方が合わないから結婚に至らないのではないか」と指摘する声も挙がっています。
MeToo運動は女性たちが立ち上がる転機となった
男女の政治的な分断が広がった最大の要因として、世界的に広がった「MeToo運動」が考えられています。Z世代評論家のシェリーは「長いあいだ続いてきたセクハラや性暴力などに対して声をあげる力を得たと感じた若い女性たちのあいだで、強いフェミニズム的価値観が生まれています。そういうことによって、女性がより変化を求めリベラル化している。そう考えると筋は通っているなと思うんですよ」と所感を述べます。
では、なぜ男性は保守化が進んでいくのでしょうか? ラボのメンバーから意見を聞きました。
メアリー:#MeTooと分断はつながっていると思う。特に#MeTooに関しては、ときには「ちょっとやりすぎ」と思うことが起きているのも事実だし。うまく表現できるかわからないけど、例えばMeToo運動について、男性は「もうオフィスの同僚とジョークも言えなくなった」と感じることがあるんじゃないかな。
そういう男性のなかには、「女性はやりすぎ。あまりにも敏感に受け取りすぎ」と考える人もいる。その結果、責められていると感じて、より防御的な姿勢をとるようになる。そのために、より保守的な考え方に向かっていくんだと思う。
ヒカル:個人的には、MeToo運動が男性の社会的な居場所を失うほどのものだったとは思えないな。でも僕は、MeToo運動に否定的な感情は抱かなかったよ。年配の世代は違う受け止め方をしたかもしれないけど。
社会に自分の声を届けることは重要だと信じている。女性が社会での平等な地位を求める、努力の結果だと思っているよ。
ケンジュ:もし、男性がMeToo運動に反対する場合、むしろその人が共感力を持っていないからだと思うけどね。
MeToo運動と連動したフェミニズムの高まりで、男性は「居場所がなくなった」「責められている」と感じて防御的な姿勢をとり、より保守化しているのではないかとラボメンバーは考えます。
アメリカでは2022年、人工妊娠中絶に関する最高裁判断で、これまで合法だった中絶が多くの州で違法になりました。そうした影響もあり、女性の人権に関する意識が飛躍的に向上しましたが、男性の意識はそれほど上がっていないと分析されています。アメリカ、イギリス、ドイツでは、若い女性の移民問題や差別問題に関する共感力が男性よりもはるかに高く、リベラルな考えを持っています。
日本ではまったく同じデータはありませんが、同性婚に関して30代以下の女性の9割は「賛成」と、男性75パーセントに比べて15ポイント高い結果に。夫婦別姓に関しても、10代20代の女性の9割と、男性の7割に比べて高いです。つまり、女性のほうが変化を求めていると言えます。
日本には「リベラルと保守」という対立軸ではないかもしれませんが、変化を求める者とそうでない者は存在します。シェリーは「『私のほうが余計に働いている』とか『犠牲になっている』という気持ちになっちゃうのが一番よくないです。そうならないためにも“共感力”を使って乗り越えていきたいですね」と話し、話題を締めくくりました。