interfmで放送中の「sensor」(パーソナリティ:Cartoon)。「NY Future Lab」では、これからの時代の主役となる「Z世代」と「ミレニアル世代」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どのような性質や特徴があるのかなどについて、Z世代・ミレニアル世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していきます。
2月9日(金)のテーマは、「ウクライナ系日本人が優勝で大論争。日本のミスコンはアメリカZ世代からこう見えている」。ウクライナ系日本人の椎野カロリーナさんがミス日本コンテストで優勝したことについて、「NY Future Lab」のメンバーがそれぞれの思いを語りました。
アメリカZ世代は日本のミスコンをどう見る?
1月22日(月)、第56回ミス日本コンテスト2024において、ウクライナ系日本人(※)の椎野カロリーナさんが優勝し、大論争が起こりました。このニュースはアメリカのCNNでも取り上げられ、国外でも注目されているトピックです。ニューヨークのZ世代で構成されているラボメンバーたちは、ミス日本の優勝結果についてどう感じたのでしょうか?
※カロリーナさんの両親はウクライナ人。本人もウクライナで生まれ、5歳のときに来日。2022年に日本国籍を取得しました。
カロリーナさんは不倫疑惑で賞を辞退しましたが、その前にラボメンバーの話し合いがおこなわれたため、不倫の問題については触れていません。ミスコンの在り方、女性の美しさについて聞いてみました。
シャンシャン:なぜこれが論争になるかはわかる。記事を読んでいると、まず彼女が言っていることは、理にかなっているんだよね。自分が日本人であることを証明したいと望んでいる。もちろん法的には日本人だから、これは間違っていない。でも同時に、彼女は日本人の血を引いていないし、顔に日本人的な特徴もないんだよね。つまり、このコンテストがどういう基準で女性を選んでいるのかが、重要なんじゃないかな。
もしも、日本でもっとも美しい女性を探しているのなら、あきらかに彼女は参加する権利がある。だけど、日本人の血を引く女性のなかで誰がもっとも美しいかというコンテストなら、また少し違う話になるよね。
ノエ:彼女は参加する権利があるんじゃない? だって、このコンテストは「ミス・ジャパニーズ」ではなく「ミス・ジャパン」だから。彼女は日本に帰化している日本人だよ。
シャンシャン:もしコンテストが本当に日本の女性に焦点を当てたいのなら、ルールで明確に「日本民族である必要がある」と書くべきだったのでは?
ミクア:ミスコンって外見に大きく基づいているでしょう? 日本人であるかどうかの大きな部分は、見た目にかかっていると思う。そこがアメリカやヨーロッパと大きく違うよね。アメリカではどんな外見でもアメリカ人と見なされるから。
ノエ:たしかに日本って民族的にとても均質で、統一された国だからね。
ミクア:だから、ちょっと難しいのは「日本だから」だよね。そして、彼女の美しさはそれが日本人のものと考えられるべきか、ヨーロッパ人として考えられるべきかで論争が起きるんだと思う。
多くの日本人が彼女を見て「私が考える“本当の日本の美しさ”を代表していない。ヨーロッパ的なものを代表している」と感じる可能性はあるよね。
日本は日本民族が98パーセントと、圧倒的なマジョリティです。Z世代評論家のシェリーは「日本人であるということと、見かけは強くつながっているんだと思います」と、論争が起きた背景を推測します。
ダイバーシティの国アメリカは、ヨーロッパ系白人が60パーセント、ヒスパニック系が19パーセント、アフリカンアメリカンが12パーセント、アジア系が6パーセントで構成されています。多種多様な人々が暮らすアメリカではどんな顔や肌の色であっても「アメリカ人」とみなされます。
今回のミス日本コンテストの結果は、移民や外国人が増え多様化が進む日本において、改めて「日本人とは何か」を考えるきっかけとなりました。
今の時代の価値観にミスコンは“不適切”?
一人ひとりの顔がみんな違っていても全員アメリカ人とみなされるアメリカのミスコンと、日本民族98パーセントの日本のミスコンでは、どんな違いがあるのでしょうか? ラボメンバーから意見を聞きました。
ノエ:日米のミスコンの違いは、美の嗜好の違いよりも、むしろ国のダイナミクスの違いだと思う。アメリカは移民の国で、最初にここに来た人たちは白人かもしれないけど、それでおしまいではないからね。その後、移民がどんどん入ってきて、今は本当に多様な人々で構成されている。
一方で、日本は古代から、完全に日本人の国という歴史があるよね。これは完全に違うダイナミクスだと思う。国のサイズも小さいし。
ミクア:ミスコンって、誰かの外見、見かけを評価しているわけでしょう? 才能や人道的な活動も見られるけど、やはり(評価基準は)主に外見だよね。優勝者を見ると、なぜか同じようなルックスの人が多い。体型や顔、髪の質など、同じタイプの人が目立つんだよね。
アメリカは多様性の国で、ミス・ユニバースなど世界の国を代表する場もある。だけど、外見的にはある特定の美の基準があるみたいで、そういうタイプの人が選ばれているように見える。
ノエ:そういうこともあって、アメリカではミスコンはあまり人気がなくなっているよね。でも、日本ではまだかなり人気があるんじゃない? 大学のミスコンもまだやっているでしょう?
シェリー:アメリカの大学にミスコンはないの?
ノエ:やってないと思うよ。こちらの大学はずっとリベラルな環境だからね。外見を判断するコンテストをおこなうこと自体、あまり良いと思われていないんだ。
アメリカでは美を競うコンテストの人気は全体的に下降しており、世界でもミス・ユニバースの視聴率は年々低下している現状があります。低迷の背景には「見かけで選ぶことが今の時代にそぐわない」「選ばれる基準がパターン化している」といったラボメンバーの指摘以外にも、「ダイバーシティを重視する今の価値観と、世界基準の美を選ぶコンテストが適切ではない」「男性目線の伝統的な女性らしさが強調されている」といった非難の声の多さが原因として考えられます。
否定的な意見があるなか、「女性をエンパワーメントできる機会」と捉えたり、モデルや俳優になれるチャンスだと、ミスコンを肯定的に捉える人もいます。また、日本においては大学のミスコンがいまだに人気を集めています。
ニューヨークタイムスは、日本の一流大学のミスコンに対して「女性を外見で判断し、性別で厳格に定義された役割に当てはめることが多い文化を反映している」と厳しい意見を寄せました。日本でも大学ミスコンは同様の批判を受けており、多様性がある環境を目指す方針とそぐわないため、今やほとんどの有名大学はミスコンを公認していません。
それでも、大学ミスコンはいまだに放送局のアナウンサーやモデルへの登竜門として、出場者だけでなくタレント事務所からも重要視されています。スポンサーは一流大学の名前を使ってPRできますが、一方で「一生懸命頑張っている女性を利用した搾取」という非難の声もあがっています。
シェリーは「見かけで判断されてつらい思いをする人もいっぱいいます。時代が変わっているということもあるし、ミスコンはいろいろなことを考えるきっかけになると思います」と話し、話題を締めくくりました。