英題は「The Boy and the Heron(少年とアオサギ)」アメリカZ世代に宮崎駿作品「君たちはどう生きるか」はどう映ったのか?

「宮崎映画とゴジラ、NYのZ世代はどう見た?」。「NY Future Lab」のメンバーが、2023年に世界中で大ヒットした日本映画「君たちはどう生きるか」と「ゴジラ-1.0」に注目しました。

「宮崎映画とゴジラ、NYのZ世代はどう見た?」。「NY Future Lab」のメンバーが、2023年に世界中で大ヒットした日本映画「君たちはどう生きるか」と「ゴジラ-1.0」に注目しました。

interfmで放送中の「sensor」(パーソナリティ:Cartoon)。「NY Future Lab」では、これからの時代の主役となる「Z世代」と「ミレニアル世代」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どのような性質や特徴があるのかなどについて、Z世代・ミレニアル世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していきます。

2月2日(金)のテーマは、「宮崎映画とゴジラ、NYのZ世代はどう見た?」。「NY Future Lab」のメンバーが、2023年に世界中で大ヒットした日本映画「君たちはどう生きるか」と「ゴジラ-1.0」に注目しました。

10年ぶりの宮崎監督映画の感想は?

1月は2024年を予想するトピックを中心にお送りしてきた「NY Future Lab」ですが、今回は2023年にヒットした日本映画2作に注目します。まずは「君たちはどう生きるか」から。

スタジオジブリの10年ぶりとなる宮崎駿作品「君たちはどう生きるか」は2023年公開時、北米の興行成績トップに輝くという快挙を成し遂げました。ゴールデン・グローブ賞では最優秀アニメ映画賞に輝き、3月に発表されるアカデミー賞でも長編アニメーション賞部門にノミネートされています。

ラボのZ世代は「君たちはどう生きるか」を観て何を感じたのでしょうか? 感想を聞きました。

メアリー:Instagramを見てると、ストーリーとストーリーの間に広告が挟まれることがあるよね。その広告が全部、この映画の宣伝だった。だから「観てみようかな。10年ぶりの宮崎アニメだし」と思った。ヒカルと一緒にIMAXでの初回上映を観たんだけどとても綺麗で、色使いもすごく素敵だった。でも、物語のなかで何が起こっているのかを本当に理解するには、何度も観ないと理解できない気がしたんだよね。

ノエ:まあまあよかったと思うな。ただ、良し悪しを言う前に、最低でも2、3回は観る必要があると思うよ。はっきり言うと、これは彼のクラシック作品、たとえば「もののけ姫」や「千と千尋の神隠し」には遠く及ばないと思った。だけど、視覚的には本当に美しくて、特に火事がある冒頭のシーンなどは、ありえないくらいうまくアニメーション化されていて、スタイリッシュで本当に美しかった。ストーリーは少しわかりにくいかな。あきらかな意味を込めているのはわかるけど、十分には理解できなかった。

僕が理解できないのは、なぜ英語のタイトルが「The Boy and the Heron(少年とアオサギ)」になったかだよ。なぜって、サギはそんなに重要ではないからね。日本のオリジナルタイトルのほうがずっとかっこいいのに。

ケンジュ:アオサギって何?

メアリー:鳥だよ、鶴みたいなやつ。日本の元のタイトルは何だっけ。「君がどうやって住んでる」みたいな?

ノエ:「君たちはどう生きるか」だよ。だって、どうやって生きるかを決める、ということだから。もとのタイトルのほうがもっと意味があるし、それを英語にして「How, will you decide to live」のほうがシンプルにいい響きだと思うけどね。

メアリー:アメリカではタイトルに主人公の名前とかを入れたがる傾向があるよね。

ノエ:でも、アオサギは主人公じゃないでしょう?

メアリー:そうだけど、Boy、少年が主役ってことよ。

ラボメンバー3人が公開直後に「君たちはどう生きるか」を観に行きました。宮崎駿監督作品は2013年の「風立ちぬ」以来、10年ぶりということもあり、ジブリアニメへの期待は大きいようです。

ノエの「過去の宮崎作品には及ばない」という感想は印象的でしたが、実際アメリカではどのジブリ映画が人気なのでしょうか? 映画評論サイト「Rotten Tomatoes」のランキングによると、ジブリ作品のベスト3は以下になります。

1位:かぐや姫の物語(高畑勲監督)
2位:おもひでぽろぽろ(高畑勲監督)
3位:魔女の宅急便(宮崎駿監督)

話題の「君たちはどう生きるか」は6位。サイトのコメントでは、「批評家の得点は非常に高く、美しいアニメーションのレンズを通して示唆に富んだテーマを探求している。宮崎駿の新たな傑作である」と絶賛する声が寄せられています。

一方、日本のランキングでは海外とは異なる作品が上位に。

1位:千と千尋の神隠し(宮崎駿監督)
2位:天空の城ラピュタ(宮崎駿監督)
3位:魔女の宅急便(宮崎駿監督)

Z世代評論家のシェリーは「みんなであれが好き、これが好きと話せるのはジブリ作品のすごいところですね」とコメントしました。

快進撃が続くゴジラの最新作

日本製作の実写ゴジラ映画としては通算30作目となる「ゴジラ-1.0」。12月の封切り時に全米の興行収入ランキングで2週連続3位にランクインし、日本の実写映画として最高記録を達成しました。

さらに、これまでに公開された外国語映画の売り上げトップ3入りという快挙も。脅威のヒット作となった「ゴジラ-1.0」をラボのメンバーはどのように受け止めているのでしょうか?

ケンジュ:ゴジラはまだ観ていない。でも、母が観てとてもよかったって言ってたよ。

メアリー:ある友達がゴジラを観に行きたいと言ってたけど、一緒に行く彼女がほしいらしいんだよね。

ノエ:ゴジラを見るためにわざわざ彼女を作るの?

メアリー:そうみたいよ。なぜかはわからないけど、ゴジラがとてもカッコいい、ロマンチックな映画だからかな……違うか。

宮崎駿の映画は前作から10年経っているでしょう? でも、ゴジラは3年おきくらいに新作を作っているよね。私は最初のゴジラを3回は観た。学校の授業でも見たけど過剰に分析しすぎと言うか……なんとも言えない感じだったな。正直、ゴジラにはあまり興味が湧かない。

シェリー:若者はゴジラに興味がないってこと?

メアリー:そんなことはないと思うよ。その人によるんじゃない? 私はただ、どうしてゴジラを作り続けるのかが理解できないんだよね。オリジナルのゴジラは「核爆弾は悪いこと」と「環境には優しくしなければいけない」というメッセージを出していたわけでしょう? ここからはどうやってどこに進んでいくのかな。ただ、ビルを破壊するというわけではないよね。

ケンジュ:新しいモンスターを増やして戦わせるというか。今度は彼、日本政府と戦っている。

メアリー:日本政府と!?

ケンジュ:今夜観に行ってみようかな。まだ劇場でやっているよね?

メアリー:やっているんじゃないかな。

アメリカでゴジラは大学の授業のテーマになるほど、文化に浸透している存在です。特に1954年のオリジナル作品は、テレビで頻繫に放送されています。おそらく日本よりもアメリカにいるほうが過去のゴジラ作品に触れる機会が多いため、ラボメンバーに「またゴジラ?」という印象を与えている可能性はあります。

しかしながら、売り上げからゴジラが飽きられている印象は感じられません。アメリカでは「ゴジラ-1.0」は現在も公開中であり、先日映画「パラサイト」の売り上げを超え、外国語映画の売り上げトップ3に入りました。アカデミー賞では視覚効果賞にノミネート。白黒バージョンも公開されており、売り上げはさらに伸びることが予想されます。

アニメも含め、日本映画への期待が高まっている昨今。シェリーは「日米をつなげるというか、世界のなかで日本映画が文化の1つになっています。これからどんな映画作品が出てきてくれるのか楽しみです。クリエイターのみなさんには頑張って作ってほしいなと思います。アカデミー賞の結果も楽しみですね」と話し、話題を締めくくりました。