interfmで放送中の「sensor」(パーソナリティ:Cartoon)。「NY Future Lab」では、これからの時代の主役となる「Z世代」と「ミレニアル世代」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どのような性質や特徴があるのかなどについて、Z世代・ミレニアル世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していきます。
1月26日(金)のテーマは、「ニューヨークのZ世代が2024年のトレンド大予想」。「NY Future Lab」のメンバーが、2024年にZ世代で流行になりそうなものに注目しました。
ジャズがZ世代で流行の兆し?
前回の放送では、ラボメンバーに2024年の世界情勢を予想してもらいました。今回のテーマは、2024年のトレンド予測。まずはアメリカの人気ソーシャルメディアの1つである「ピンタレスト」による2024年のトレンド予想をいくつか紹介。
・グルービーウェディング
1970年台代のディスコや60年代ヒッピーなど、レトロテーマの結婚式が増える
・リボン
服や靴などのあらゆるものにリボンの装飾
・グランパ・ファッション
祖父が着ていたようなニットのベストの流行
全体を通してレトロを感じさせるトレンドです。以前の放送でも、Z世代はノスタルジアに憧れを持つ傾向があることが垣間見えました。そんななか、ラボメンバーが興味を示したのはジャズのリバイバル。ピンタレストのコメントでは、「Z世代はエレクトロニック・ビートからもっとレトロなもの、つまりヴィンテージ・ジャズに乗り換えるだろう」と予測しています。理由をラボメンバーに聞きました。
メアリー:「ジャズ・リバイバル」はなんとなくわかる。今、中国系アイスランド人の歌手のレイヴェイがすごく人気でしょう? 彼女の歌はすごくジャズっぽいよね。彼女ひとりでジャズを復活させていると言ってもいいくらいかも。
シャンシャン: Spotifyにレイヴェイの曲をダウンロードしているかも。
ノエ:僕は特にジャズファンではないし、お気に入りのアーティストもいないけど、ライブのジャズは好き。ヒップホップとジャズのミックスもいいよね。ニューエイジラッパーのジャズっぽいヒップホップが好きかな。
ケンジュ:ローファイもジャズのカテゴリーに入るんじゃない? もう数年前から人気だけど。
シェリー:ジャズがなぜ今復活しているのかな?
メアリー:ジャズがとてもロマンチックだからでは? あとは、聴くと心が落ち着くんだよね。TikTokでレイヴェイの曲が一種のジョークになっていたこともあるよ。なぜって、その歌のなかで世界中が静かになる瞬間があって、恋人だけがそこにいるときの美しさや、愛について歌っているから。そういうのがジョークになるほど、純粋な愛というものの表現がこれまでずっと見過ごされてきたのかも。
特にレイヴェイの曲は、世界をとても楽観的に見ているんだよね。みんな、その楽観主義が今の生活に必要なのかも。
ケンジュ:それに、他の音楽がアップビートなものが多いのに比べて、ジャズはサウンドもビートもリラックスしているよね。それでいてすごくキャッチーなのが人気の理由だと思うな。
中国系アイスランド人のレイヴェイは、Z世代のシンガーソングライター。アメリカ・ボストンのジャズの名門大学バークリー音楽大学卒業のキャリアを持ち、ピアノもチェロも弾ける実力者です。ジャズ界の新星と称される彼女の2枚目のアルバム『Bewitched』は、今年のグラミー賞の「Best Traditional Pop Vocal Album」にノミネートされています。
Z世代評論家のシェリーからの「なぜ今ジャズなのか?」という問いかけについて、ラボメンバーはジャズのサウンドとビートがリラックスできてキャッチーな点を挙げました。また、ジャズから感じられる「ロマンチック」や「楽観主義」の要素もZ世代の支持を得ている要素として大きいようです。
シェリーは「希望のない現実世界のなかで、自分だけのノスタルジックで静かな世界に逃避したいというZ世代の気持ちがあるんじゃないかなと思いますね」と分析しました。
アメリカのボクシングではヘビー級が注目されやすい
アメリカZ世代のあいだでは、ボクシングも人気です。日本では世界4階級制覇王者の井上尚弥選手が有名ですが、アメリカのラボメンバーは知っているのでしょうか?
ケンジュ:ボクシングについて多くの人が話しているのを聞くよ。去年からボクシングを始めた友達もいる。今年は僕も何か格闘技をやってみようと思うけど、どちらかというと体術のほうが興味あるかな。ワークアウトとして、ボクシングを選ぶ人が増えているみたいだね。
シェリー:井上尚弥選手については知ってる?
ケンジュ:彼はすごい才能があるよね。
ヒカル:無敗で議論の余地がないよ。井上は本当に強い。クレイジーな強さだよ。
ケンジュ:重いパンチで知られているんだよね。小柄なのに、そのパンチは今のボクシング界で最も強力だと言われているよ。
ヒカル:彼は今、ボクシングファンからすごく人気があるんだ。ただ、軽量級なんだよね。アメリカでは主にヘビー級のボクシングに注目が集まるからね。12月26日の試合以降、多くの人々が彼が(ボクシングの米専門誌「ザ・リング」の格付け)ランキング1位になるだろうと予想していたけど、まだ2位に留まっているし。
井上が注目されるのは、野球も同じだけど、例えば大谷翔平を見るような感じかな。特にそのスポーツに興味がなくても、圧倒的に優れた選手がいれば見るのが楽しいよね。僕が日本人だから、ナショナリズムかもしれないけど。
ケンジュ:確かにね。ただ井上が大谷クラスの人気になるかというと、どうだろう。西洋では、ヘビー級チャンピオンとか重い階級のボクサーでないと、あまり人気にならないんだよ。井上はもう自分の階級ではトップに到達しているからね。今以上の人気を得るには、より重い階級で成功する必要があるんじゃないかな。
アメリカではワークアウト(体の強さや見た目の向上を目的とした運動)として、ボクシング、柔道、空手などが人気を集めています。また、ボクシングファンにとって井上選手の知名度は高いことが伺えました。
スポーツ選手としては、大谷翔平選手と同クラスの偉業を成し遂げている井上選手。しかし、ヘビー級の人気が高い西洋文化では、軽量級の井上選手が一般人に認知されることは難しそうです。
他のスポーツのトレンドでは、バドミントンがイギリスZ世代で人気です。一方、アメリカZ世代ではテニスと卓球とバドミントンを掛け合わせたような「ピックルボール」が注目を集めているそう。
シェリーは「もともとは高齢者のスポーツみたいな感じだったんだけど、ここ何年かでどんどん若者がやるようになりました。今やZ世代ぐらいまで年代が下がってきているようです」と解説。Z世代と懐かしさを関連付ける新たなトレンドを取り上げ、話題を締めくくりました。