感謝祭のターキーにもブラックフライデーにも関心が薄い?価値観が変わりゆくアメリカのZ世代たち

「Z世代は感謝祭のターキーにもブラックフライデーにも興味がないって本当?」。「NY Future Lab」のメンバーが、感謝祭への考え方やブラックフライデーで買いたいものを語り合いました。

「Z世代は感謝祭のターキーにもブラックフライデーにも興味がないって本当?」。「NY Future Lab」のメンバーが、感謝祭への考え方やブラックフライデーで買いたいものを語り合いました。

interfmで放送中の「sensor」(パーソナリティ:Cartoon)。「NY Future Lab」では、これからの時代の主役となる「Z世代」と「ミレニアル世代」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どのような性質や特徴があるのかなどについて、Z世代・ミレニアル世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していきます。

11月24日(金)のテーマは、「Z世代は感謝祭のターキーにもブラックフライデーにも興味がないって本当?」。「NY Future Lab」のメンバーが、感謝祭への考え方やブラックフライデーで買いたいものを語り合いました。

感謝祭の“ターキー”に賛否両論

アメリカでは毎年11月の第4木曜日に「感謝祭(Thanksgiving Day)」と呼ばれる祝日が定められています。また、感謝祭の翌日の金曜日は「ブラックフライデー」と呼ばれ、小売店やネット販売店で大規模な安売りが実施されます。

感謝祭では豊穣に感謝し、家族が集まってターキー(七面鳥)の丸焼きを中心としたディナーを食べるのが恒例。始まりは、ヨーロッパから渡ってきた清教徒が厳しい自然のなかで先住民族のネイティブ・アメリカンに助けてもらったお礼を兼ねて、一緒に豊作を祈ったことだと言われています。

感謝祭は家族が集まる日でもあるため、日本の正月に近い感覚だそう。一方で、感謝祭の過ごし方はZ世代が大人になるにつれて変化するのではないかという意見も。ラボのメンバーから話を聞きました。

ミクア:3年前、持ち家に引っ越してから感謝祭に親戚や友達がたくさん集まるようになったんだよね。ただ、なぜかはわからないけど、今年はターキーはないみたい。みんな、ターキーはあまり好きじゃないみたいなんだよね。

作るのも大変だし、代わりにカニとか、もっとシーフード風のものを食べたいってみんな言っている。私もターキーはあまり好きじゃないし、しかもたくさん残るんだよね。感謝祭の3日目以降はもう食べたくないなって。

メアリー:あるポッドキャストでは「ターキーは過大評価されているから、まったく食べない」って言ってたよ。では何を食べるのかというと、チキンを食べているみたい。アメリカ人は年末になるとターキーを食べる義務感みたいなものを感じているけれども、たぶん実際にはターキーが好きじゃないんだと思う。あと、よく言われるけど、ターキーを食べると眠くなるんだよ。そういう成分が入っているんだ。

ヒカル:僕はターキーの味には何の問題もないんだけど、感謝祭で食べる丸焼きのターキーって味が全然しないよね。皮がついている部分には味があるけどね。だから皮付きの部分をもらえたらラッキーだよ。

ノエ:僕は好きだよ。普段からターキーが大好きってわけじゃないけど、感謝祭のは本当においしいと思う。グレービーやマッシュポテト、マックアンドチーズ、クランベリーソースと一緒に食べると、とても合うんだ。数日後には残り物でサンドイッチを作ることができるしね。付け合わせも全部をサンドイッチに放り込むか、またはお皿に盛り付けて食べる。めちゃくちゃおいしいよ。

アメリカ伝統の「感謝祭のターキー」ですが、見事に意見がわかれました。感覚的には日本のおせち料理に近いものがありますが、今の時代観としてはターキーは贅沢な料理という位置付けではありません。モデレーターでZ世代評論家のシェリーは「質実剛健という感じですね。好きな人もいるけど、伝統だからと文句を言いながら食べている人もいるし、まったく食べない人もいます」とコメント。

人権や社会正義に敏感なZ世代のなかには、感謝祭が生まれた歴史について違和感を覚える人もいます。「先住民族への感謝が始まりだとしても、その後アメリカ人は彼らを虐殺したわけです。今も暮らしている先住民族にとっては感謝祭ではなく悲しみの日になっているんです。そういうことも若い世代の方々に少しずつ知られ始めています」と、シェリーは解説しました。

ブラックフライデーに対してクールな反応のZ世代

近年では日本でもブラックフライデーの広がりを見せており、さまざまな店で大きなセールが展開されます。

ブラックフライデーは年末商戦の幕開けを告げるイベント。買い物客が殺到して小売店が繁盛することで、これまで赤字だった帳簿が黒字になるほど売れるのが言葉の由来とされています。

そんななか、Z世代のラボメンバーたちはブラックフライデーに何を買うつもりなのでしょうか?

メアリー:ブラックフライデーは自分たちだけの家に住んでいればもっと意味があるだろうけど、今は親と同居だからね。お金もスペースもないから、この小さな部屋をさらにガラクタで埋めることはできない。

シェリー:もしスペースがあったら、何を買いたい?

メアリー:欲しいのはテレビ。ヒカル(夫)と一緒にゲームをしたり、映画を観たりしたい。今はラップトップの画面しかないからね。

ヒカル:僕は普段こういうセールとかには全然関心がないんだけど、今年は服を買う予定。実は、僕の冬服は中学高校時代からずっと着ているもので、かなり着古しているから、そろそろ買い替えなきゃと考えているんだよね。

ノエ:5年とか10年前と比べて、物が欲しいという気持ちが少なくなったと思う。たとえば16歳の頃は、ブラックフライデーに「あれもこれも全部欲しい」とか思っていたんだけど、今はなんだかね。物を買わないと満足感が得られないみたいな、まるで何かを買うことが喜びの源であるかのような、そういう雰囲気もどうかなって思うんだよ。

メアリー:たぶん、セールに幻滅したんじゃない? 以前は「おお、セールだ!」って思っていたかもしれないけれど、今では毎年いつでもセールがある。どうでもいいって感じがするのでは?

ノエ:それもあるし、最近ではYouTubeの広告の量がハンパなくてすごく嫌だ。ある意味、僕の生活の質を台無しにしてくれている。

メアリー:広告期間もすごい前倒しになっているよね。かつては1ヵ月前くらいだったのに。NY5番街のヴィクトリアズ・シークレットのお店、かなり前からマライア・キャリー一色になっていたよ。「みんな! マライアの季節だよ、さあ買って!」って感じで。

ミクア:正直言って、ブラックフライデーは特にどうってことないって思っている。そのあともまだセールが続くしね。

ブラックフライデーに対して冷静な反応を示すラボメンバーたち。モノよりも体験を重視するZ世代ならではの意見も飛び交いました。また、ネットを活用する世代にとってはセール広告を目にする機会が多く、うんざりしている様子も伝わります。

経済的な理由から買い控える意見も出ていましたが、なかなか収まらないインフレのなか、少しでもいいものを安く買いたい消費者の願いに応え、大幅な値引きをおこなう企業も登場しています。

シェリーは「ブラックフライデーでどれだけ売り上げが伸びるかが来年のアメリカ経済の指標になると言われています。経済が悪いから買い惜しみがあるんじゃないかとも言われていますので、アメリカの消費経済の底力が試されますね」と語り、話題を締めくくりました。