親パレスチナ派の抗議活動に遭遇、デモ参加者との論争…終わらない戦争に嘆くアメリカZ世代たち

「親パレスチナの抗議行動に遭遇して体験したこと」。「NY Future Lab」のメンバーが、イスラエル軍のガザ攻撃に抗議する親パレスチナ派のデモに遭遇し、そこで体験した出来事を語りました。

「親パレスチナの抗議行動に遭遇して体験したこと」。「NY Future Lab」のメンバーが、イスラエル軍のガザ攻撃に抗議する親パレスチナ派のデモに遭遇し、そこで体験した出来事を語りました。

interfmで放送中の「sensor」(パーソナリティ:Cartoon)。「NY Future Lab」では、これからの時代の主役となる「Z世代」と「ミレニアル世代」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どのような性質や特徴があるのかなどについて、Z世代・ミレニアル世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していきます。

11月17日(金)のテーマは、「親パレスチナの抗議行動に遭遇して体験したこと」。「NY Future Lab」のメンバーが、イスラエル軍のガザ攻撃に抗議する親パレスチナ派のデモに遭遇し、そこで体験した出来事を語りました。

ラボメンバーが親パレスチナ派の抗議活動に遭遇

イスラエルと、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの大規模軍事衝突が続く昨今。イスラエル軍がガザのシファ病院に突入し、新たな局面を迎えています。また、ハマスがイスラエル人などおよそ240人の人質を取っている問題では、カタールが3日間の停戦と引き換えに、およそ50人の人質を解放する案などについて交渉中。この交渉にはアメリカも加わっています。

アメリカではイスラエルとハマスの戦いに関する抗議活動やデモが連日さまざまな場所で行われており、多くはパレスチナ人を擁護し停戦を求めるものです。11月10日には、マンハッタンの中心部で数百人が参加するデモがあり、マンハッタンのターミナル駅、グランド・セントラル駅への交通が一時遮断されました。

ラボメンバーであるメアリーは偶然デモに居合わせており、デモ参加者と論争を繰り広げることになりました。デモではどのようなことがおこなわれていたのでしょうか?

メアリー:実は私、偶然パレスチナ人を擁護するデモに参加してしまったんだよね。その日は行きたい場所があったんだけど、警察がグランド・セントラル駅を封鎖していて、どこにも行けなくなってしまった。そうしたら、デモ隊がこちらに向かって歩いてきたの。混沌とした状況で、人々はとても怒っているように見えた。でも、自分の安全に関しては、あまり心配ではなかったよ。なぜって、彼らはパレスチナの人々の安全を求めてデモをおこなっているのだから、私に危害を加えるわけはないと思ったんだよね。

そうしたら、彼らが親イスラエルのポスターを破り捨て始めた。今って誘拐された人たちの写真入りポスターが、街中に貼られているでしょう? だから、私は彼らに「剥がすのは良くないよ」と声をかけたんだよ。「あなたたちが信じていることに賛同しないから言っているわけじゃない。でもこれをやってしまったら、向こうの思う壺になってしまうから」って。

どういうことかというと、イスラエルのほうが犠牲者だというプロパガンダはすでに浸透している。だから、ポスターを破るという行為で「ハマスに勝ってほしいだけではなく、人質なんかどうでもいい」というメッセージを出してしまうことになるよね。

もちろん、そんなふうには思っていないだろうけど、ポスターを破るとそう思われるから、彼らにやめるように言った。でも彼らは、無知で愚かなのは私のほうだと、立ち去るように言われた。だから「わかった」と言ってその場を離れたの。

そのとき、彼らは私に「これまでパレスチナのために何かした? デモに参加した?」と聞いてきた。「参加してないよ」と答えたら、「SNSには投稿したの?」と聞かれたので「私はSNSをそのように使っていない」と言った。「でも、私は寄付をしたよ。それはどうなの?」と伝えたけども、私は悪いことを言ってしまったのかな。みんながピリピリしていたのはよくわかったから、彼らに逆らうことはしたくなかったんだけどね。

アメリカ政府はイスラエルを強く支持している一方で、年齢が若くなるほどパレスチナの支持者が増えており、抗議行動の中心も若者たちです。メアリーも目撃した、親パレスチナ派がイスラエルの人質救出を呼びかけるポスターを破り捨てている様子は、極右のローカル新聞の一面に掲載されました。

新聞を読んだZ世代評論家のシェリーは「ポスターを破る行為はユダヤ人に対するヘイトだと書かれていました。その下には“ハマスはユダヤ人を殺し続けると誓っている”という文字もあります」と説明。「(反パレスチナの)プロパガンダに使われています。こういう記事があることで、パレスチナ支持者はテロリスト寄りだと思う人が増えてしまうんです」と警鐘を鳴らしました。

終わらない戦争に嘆く若者たち

イスラエルとハマスの軍事衝突は、アメリカが深く関わっています。ニューヨークのZ世代であるラボメンバーたちは今、どのような思いを抱えているのでしょうか。

ミクア:全てが非現実的。だんだんと感覚がマヒしていく感じ。たぶん、ちゃんと理解することはできないと思う。だから、私は自分が今いる状況に感謝するしかない。あれ(戦争)を経験しなくてもいいことにね。でも正直、最初はあの悲惨な映像を見たくなかった。だけど、もしあれを見て不快に感じるなら、実際に経験している人たちの現実は一体どれほどのものかということよ。

パレスチナ人でもイスラエル人でも、無実の人々が死んでいくのは悲劇だというのはわかっている。でも、本当に苦しんでいるのはパレスチナ人だよね。多くの人々が亡くなっている。水も電気も食べ物もない状況で、本当に苦しんでいる。こんなことが起きていいのか、私には理解できない。本当にありえないことだと思う。

ヒカル:本当にそうだね。今の時代にこんな殺戮(さつりく)が起こっているのはクレイジーに感じるよ。ロシアなどのほかの紛争も同じだけど、第二次世界大戦を経験したこの地球上で、まだこんな戦争が起こっているなんて本当にありえない。

ノエ:正直、人類は一度全滅してリセットされる必要があるのかもと思ってしまうよ。僕たちはただ破滅に向かっているように見える。ただ地球を破壊し、お互いを破壊しているだけだよね。まるで、僕たちはずっと誤った選択を続けてきているみたいだよ。おそらく、原始時代に戻ってリセットされる必要があるのかも。

かと思うと、SNSにはひどい投稿がいっぱいあるんだ。たとえば、イスラエルの兵士が顔をパックして目の上にキュウリを乗せ、ノイズキャンセルのヘッドフォンをつけてリラックスしている画像。その背後ではガザに爆弾が投下されている。この状況を嘲笑い、侮辱して自らを貶めているんだ。

ラボメンバーたちの言葉は悲観的なものばかりでした。ノエのように、SNS時代だからこそ、映像や画像による情報で傷つけられている若者も少なくありません。

11日3日の「NY Future Lab」では、値上げに苦しむアメリカZ世代が節約について語り、若者の多くが将来の生活設計に希望が持てない現状を取り上げました。実際にはアメリカの経済は拡大し、失業率も歴史的に低いのですが、悲観的にならざるをえない理由の1つとして、イスラエルとハマスの戦争が大きく関わっていることがわかります。

抗議行動やデモが過熱するなか、アメリカでは11月23日に感謝祭が控えており、クリスマス、2024年の大統領選挙とイベントが続きます。シェリーは「みんな浮足立っていますが、楽しんでいいのかわかりませんよね。来年には大統領選もあり、相当な混乱がやってきそうなので、みなさんも(誤った情報に)騙されないように、しっかり目を逸らさないようにしてください」と語り、話題を締めくくりました。