アメリカZ世代を夢中にさせる「呪術廻戦」「鬼滅の刃」日本アニメのグローバル化が進む制作現場の“労働環境”に注目

「NYのZ世代が選ぶベストアニメは?」と「2024年のクリエイターの職場環境はどうなる?」。「NY Future Lab」のメンバーが、アメリカで人気の日本アニメや、アニメ制作現場の職場環境について語り合いました。

「NYのZ世代が選ぶベストアニメは?」と「2024年のクリエイターの職場環境はどうなる?」。「NY Future Lab」のメンバーが、アメリカで人気の日本アニメや、アニメ制作現場の職場環境について語り合いました。

interfmで放送中の「sensor」(パーソナリティ:Cartoon)。「NY Future Lab」では、これからの時代の主役となる「Z世代」と「ミレニアル世代」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どのような性質や特徴があるのかなどについて、Z世代・ミレニアル世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していきます。

12月1日(金)のテーマは、「NYのZ世代が選ぶベストアニメは?」と「2024年のクリエイターの職場環境はどうなる?」。「NY Future Lab」のメンバーが、アメリカで人気の日本アニメや、アニメ制作現場の職場環境について語り合いました。

アメリカで人気の日本アニメは?

日本の重要な輸出産業であるアニメ。世界のアニメ市場は、2022年の286億米ドル(約3兆9,000億円)から2030年には600億米ドル(約8兆3,000億円)にまで拡大し、年平均成長率は9.8パーセントになると予測されています。アニメが世界のエンターテインメントの一部として定着した背景には、ストリーミングやサービスの多様化が考えられます。

世界で一番アニメ視聴人口が多いのはアメリカであり、18歳から29歳のアメリカ人の3割は継続的にアニメを見ています。

NYのZ世代であるラボメンバー6名のうち、メアリーとノエがアニメファン。まず、ふたりからアメリカで一番ヒットしているアニメについて聞きました。

メアリー:「鬼滅の刃」かな?

ノエ:今は絶対に「呪術廻戦」だと思うよ。

メアリー:それはシーズン2が出たのが最近だからじゃない? でも、全体的には「鬼滅の刃」だと思う。みんなが着ているTシャツや他のグッズ、そして話題になっている量から言っても。

ノエ:登場人物では、五条悟(呪術廻戦の登場人物)がフランチャイズを支えているよね。

メアリー:もちろん!彼はすごくかっこいいもんね。

ミクア:私も聞いたことはあるよ。友達が投稿しているのを見かける。でも、私は観てないからわからないんだよね。多くの人がすごくいいって言っているけど。

ヒカル:見るべきだってよく言われるけど、第1シーズンすら見終わっていないんだよね。

ノエ:僕は「呪術廻戦」に関して、ストーリーはそれほど素晴らしいと思わない。いや、いいんだけど驚くほどではないという意味だよ。面白いし楽しいけど、「うわ~、すごい」って感じではない。

そういうストーリーの面ですごく特別なのは「進撃の巨人」だよね。「呪術廻戦」はとても一般的な少年アニメで、「NARUTO -ナルト-」的な感じかな。

でも、「呪術廻戦」シーズン2のアニメーションのクオリティは異次元すぎてやばい。日本のアニメでこれほどよくできた高度なモーションデザインを、毎回繰り出してくるなんて見たことがないから本当に楽しいよ。

「呪術廻戦」のアニメスタジオのMAPPAが作るものは、アニメーションに制約がないよね。ピクサーやディズニーのようにすべてが動いていて、すごく3D的な感じなんだ。

シェリー:では「進撃の巨人」は人気?

ノエ:もちろん、それも入れなきゃね。ついに最終回になったけど。

シェリー:観るの?

メアリー:うん、絶対に観るつもり。高校の頃から観ているし、最後まで観るべきだと思うから。

今アメリカで一番人気があるアニメは「鬼滅の刃」か「呪術廻戦」、そして最終回を迎えた「進撃の巨人」。ほかには、原作終了から長い歳月を経てアニメ化され話題となった「BLEACH」や「るろうに剣心」といったクラシックアニメ、Netflix限定配信の 「PLUTO」、MAPPA制作の「ヴィンランド・サガ」なども人気を集めています。

日本のアニメは漫画に近い平面的な映像が特色とされてきましたが、「呪術廻戦」のアニメは全体的に躍動感溢れる描写となっており、アニメファンのあいだで高く評価されています。

ラボメンバーが選ぶ2023年のベストアニメ!

2023年も、日本ではさまざまな作品がアニメ化されました。アニメファンのメアリーとノエは、この1年で何のアニメを個人的ベストに選ぶのでしょうか? また、Netfliでこの秋に配信された「ONE PIECE(ワンピース)」の実写版ドラマにもついても言及していきました。

メアリー:今年のベストアニメ? たくさんありすぎて……。そうだ、「SPY×FAMILY」も出たばかりだよね。あとは、私以外に誰も観ていないと思うけど、すごく好きなアニメが「シュガーアップル・フェアリーテール」。私にとっては最高なんだよね。少女アニメなんだけど、ドラマチックで本当に大好き。

ノエ:僕の今年のベストアニメは「天国大魔境」。プロットがとてもよくできているし、謎めいていて、観るたびに新しい発見があるんだ。ところでメアリーは「スキップとローファー」って見たことはある?

メアリー:わお! 私、「スキップとローファー」大好き。マンガも全部読んだ。アニメを観るのが待ちきれない! もう最高に好き!

シェリー:ちょっとこのへんで、「ONE PIECE」の実写版ドラマについて聞きたいんだけど。

ミクア:TikTokにいろいろなビデオが上がっているのを見たよ。

ノエ:でも、あれって厳密には日本のドラマじゃないよね。「ONE PIECE」の実写版はNetflixがインターナショナルに制作しているでしょう? 日本のプロデューサーも制作会社も入っていて、出版社は集英社。だけど、制作しているのはアメリカのTomorrow Studios 。だから、アメリカ・イギリス・日本の共同制作みたいな番組なんだと思う。

こういう作り方はすごく新しいわけじゃないけど、最近の現象だと思う。特にグローバリゼーションの影響で、いろいろな場所から俳優を集めたり、複数の国にスタジオを持つ制作会社など、多国籍企業も増えているってこと。

同じように、たとえば「呪術廻戦」も日本のアニメだけど、シーズン1に韓国出身の監督が手がけたものがあるよね。もはや1つの番組が単に日本のものかアメリカのものかって言えない時代になったよね。

メアリーとノエが選んだ今年のベストアニメは「天国大魔境」「シュガーアップル・フェアリーテール」「スキップとローファー」でした。

「ONE PIECE」実写版ドラマの反応は意外とあっさりとしていましたが、アメリカではアニメファンから「俳優のキャラが原作に忠実」と高評価を受けてヒットしています。実写版ドラマを手掛けたTomorrow Studiosはアメリカの制作会社で、日本のアニメの実写化は「カウボーイビバップ」に続いて2作目となります。

「呪術廻戦」では韓国人の監督、「ONE PIECE」最新アニメシリーズではアメリカ人の監督を起用するなど、アニメ制作現場ではグローバル化が進んでいます。

日本のアニメ制作にも組合を!

クオリティの高い作品に強い関心を示す一方で、海外のアニメファンが気にしているのはアニメ制作現場の“職場環境”。アメリカでは「呪術廻戦」を手掛けるMAPPAの、厳しい作業スケジュールや低い賃金を訴える内部告発がネットで炎上しました。

その背景には、アメリカではディズニーなどの大手のアニメーションスタジオがよりよい職場環境や賃金値上げを求め、組合を作る動きが進んでいる現状が影響していると言えます。アメリカのアニメファンからは、日本のアニメクリエイターも組合を結成してほしいという声があがっています。

アメリカではストライキなどのアクションによって、労働条件の改善が認められるケースがありますが、日本ではなかなか耳にすることはありません。

Z世代評論家のシェリーは「アニメはものすごい輸出産業になっていて成長すると言われていますが、それだけ作品も大量に作っていくということだと思うんです。そうするとスケジュールも厳しくなりますし、その分の支払いがあるのかというとどうなのかなという話。これだけ世界から注目されて儲かっているわけですから、還元されるべきだと思います」と話し、話題を締めくくりました。