interfmで放送中の「sensor」(パーソナリティ:Cartoon)。今回は、パーソナリティの代理にREN YOKOIが担当しました。「NY Future Lab」では、これからの時代の主役となる「Z世代」と「ミレニアル世代」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どのような性質や特徴があるのかなどについて、Z世代・ミレニアル世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していきます。
10月20日(金)のテーマは、「ニューヨークのZ世代が思う『イスラエルとハマス紛争』」。「NY Future Lab」のメンバーが、ハマスとイスラエルとの軍事衝突について意見を交わしました。
ハマスとイスラエルとの軍事衝突 衝撃を受けたラボメンバーたち
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織・ハマスとイスラエルとの軍事衝突が今月7日に発生して以降、紛争による犠牲者と避難民が増えるなか、人道危機の深刻化が懸念されています。
10月18日、アメリカのバイデン大統領はイスラエルでネタニヤフ首相と会談しました。イスラエルへの支持を明確にしているアメリカですが、民間人の犠牲が想定されるリスクある行動は国内外から非難を招くおそれがあり、事態の収束化は困難を極めている状況です。
また、ニューヨークという街は世界でイスラエルの次にユダヤ人が多い場所として知られています。イスラム教徒も多く住む街ということもあって、ラボのZ世代にとっても他人事ではない問題です。
ハマスの最初の攻撃から1週間ほど経ったタイミングで、ラボのメンバーは今回の軍事衝突について感じたことを話し合いました。
ヒカル:あれ以来、1週間も経たないうちにニューヨーク市内でいくつかのデモがあったよ。火曜日には僕のオフィスの近くで5番街の交通を止めるようなデモがおこなわれた。国連からタイムズスクエアまで行進していたみたいで、1,000人以上はいたと思う。そして、金曜日にも別の大きなデモがあった。
ミクア:個人的にはずっと前から「パレスチナを解放せよ」というスローガンがあるのは知っていたけれど、それについて深く知ろうとはしていなかった。中東の歴史についてもあまり教育を受けてこなかったから。
それが突然私にとって現実になったのは、大学のキャンパス。親パレスチナ派のグループと親イスラエル派のグループの両方に出会ったときだったんだよね。彼らは旗を掲げて、お互いに叫んで議論をしている。今回も、彼らが学校中でチラシを貼ったりするのを見て、「何が起きているの!?」って驚いた。
ノエ:この問題は、少なくとも高校に通っていたときからニューヨークでも大きな話題になっていたよ。つまり、10年は経っている。もちろん、それよりもずっと前から続いているのはわかっているけど。
デモなどの大きな抗議行動が始まったのは最近のことですが、イスラエルとパレスチナの関係はアメリカでも以前から問題視されています。2007年、過激派組織ハマスがガザ地区を支配してからは、イスラエルから厳しい経済制裁が課されるようになり、パレスチナ人の生活はさらに苦しくなりました。
経済封鎖、水資源へのアクセス制限など、イスラエルによるパレスチナ政策は、国連や国際人権NGOのアムネスティ・インターナショナルからはアパルトヘイト(人種隔離・迫害)だと強く批判されています。しかし、政治的に親イスラエルの立場をとるアメリカでは、パレスチナ人の声が届きにくい現状があります。
世論調査では、「アメリカ政府はイスラエルを援護すべき」という意見が約65パーセントにのぼります。一方で、Z世代とその1つ上のミレニアル世代では、48パーセントと過半数を割る結果に。モデレーターでZ世代評論家のシェリーは「世代間ギャップがすごくあります。アメリカも少しずつ変わってはきています」と解説しました。
情報に惑わされず双方の立場を理解することが重要
イスラム教徒とユダヤ系が一緒に暮らすニューヨーク。ラボメンバーたちは、今回の紛争をどう見ているのでしょうか?
ノエ:今回、イスラエルがやろうとしているのは大量虐殺だと思う。ハマスがイスラエルを攻撃し、イスラエル政府はそれを口実に、完全にガザとパレスチナの人々を壊滅させようとしているように見えるよ。
ケンジュ:大量虐殺だね。僕にはイスラム教徒の友達がたくさんいるんだ。腹が立つのは、今回の件で彼らの印象がもっと悪くなっていること。イスラム教徒はみなテロリストみたいなイメージが打ち出されている。もっとよくないと思うのは、CNNや伝統的なメディアがとても歪んだ視点を提供している点。ニュースを見た人が、ただコピペをして拡散している。ニュースで見たものすべてが正しいと思うのは、危険だと思うんだ。
ノエ:僕は、ニュースも含めて自分が目にする情報のすべてが、まったく真実でない可能性があると感じているよ。今は多くの人がソーシャルメディア、Instagramなどを通じてニュースを見ているけれど、こうしたニュースが拡散されるときには、たくさんのさまざまな意見が付け加えられる。なかには間違った情報もある。何が真実か本当にわからないよ。
ケンジュ:ただ少なくとも、報道された内容に疑問を持つのは悪いことではないんじゃないかな。「なぜハマスがイスラエルを攻撃したのか」「なぜこの攻撃が起こることをイスラエルは知らなかったのか」みたいな単純な疑問だよ。
ミクア:私にもイスラム教徒の友達がいて、彼らに何が起きているのかを直接教わっている。パレスチナ人は本当にひどい経験をしていて、これを知ったら、「パレスチナには再建が必要」とみんなが賛成すると思うんだよね。
だけど、ソーシャルメディアを見るとそういう意見ばかりではなくて、驚くことが多い。抑圧されて土地も家を奪われているのは、パレスチナ人なのに。
メアリー:私は正直、少し怖いんだよね。私にはユダヤ系の血が4分の1入っているから。
ノエ:ユダヤ系へのヘイトが広まっているから怖い、ということ?
メアリー:いや、全部が怖いよ。特にニューヨークに住んでいると、9.11を経験しているから。今回も、イスラム教徒へのヘイトがハッキリ感じられる。反ユダヤ主義の言い方もあって、本当に苦しい気持ちになる。
ネット時代になり、多くの情報に接しているZ世代。人種構成の多様化、さらには9.11の経験を踏まえ、イスラエルとパレスチナ双方の立場を理解し、尊重する動きも強まっています。
ネットで公開される情報の偏りについても、ラボメンバーは疑問を投じました。シェリーは「パレスチナ、ガザ地区のなかからTikTokとかでレポートしているジャーナリストを見ているわけですよ。そうすると、CNNのニュースだけしか見ない大人の人とは(得ている)情報が全然違います」と補足します。
一方で、ネットの情報自体が錯綜し、何が真実かわからない恐れや苛立ちのなか、ラボメンバーは強いストレスを抱えていることがわかります。メンバーたちはそれぞれの思いを打ち明け、座談会は1時間近く続きました。
シェリーは「メンバーのノエが『僕たちはこんなに恵まれた状況にいるんだ。ある意味傍観者なんだけど、そうならないようにしなきゃいけない。考えるのはつらいけど、弱い人たちを助けるためには考えなきゃいけない』と言っていました」と締めくくりました。