エンタメ業界の性加害問題 世界中で横行するのはなぜ?アメリカZ世代が「悪しき慣習」を分析

「アメリカZ世代が考える『ジャニーズ問題』について」。「NY Future Lab」のメンバーが、エンターテインメント業界で起こる性加害問題について話し合いました。

「アメリカZ世代が考える『ジャニーズ問題』について」。「NY Future Lab」のメンバーが、エンターテインメント業界で起こる性加害問題について話し合いました。

interfmで放送中の「sensor」(パーソナリティ:Cartoon)。「NY Future Lab」では、これからの時代の主役となる「Z世代」と「ミレニアル世代」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どのような性質や特徴があるのかなどについて、Z世代・ミレニアル世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していきます。

9月29日(金)のテーマは、「アメリカZ世代が考える『ジャニーズ問題』について」。「NY Future Lab」のメンバーが、エンターテインメント業界で起こる性加害問題について話し合いました。

世界中で問題となっている「エンタメ業界の性加害」

前回の「NY Future Lab」では、ジャニーズ事務所の創設者であるジャニー喜多川氏による性加害問題について、ラボのメンバーたちが意見を述べました。

ジャニー喜多川氏は同事務所に所属する男性タレントらに対する性虐待を半世紀近くにわたって繰り返し、被害者は数百人、数千人規模になる可能性があると言われています。被害者のなかには未成年者も含まれており、2023年3月、イギリスBBCが一連の問題について扱ったドキュメンタリーが放送。その後、日本メディアも追随する形でジャニーズ事務所の諸問題を日々報道しています。

アメリカでは意外と知られていない、ジャニーズ事務所を巡る一連の問題。ラボのメンバーは、同様の問題が世界中のエンターテインメント業界で起きていること、権力の乱用が横行している現状を指摘しました。ジャニー喜多川氏の性加害問題とよく比較されるのは、ハリウッドの大物プロデューサー・ワインスタイン氏による性暴力です。

「#MeToo(私も被害者である)」と呼ばれる性犯罪告発運動のきっかけとなった、映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインによる複数の女優への性的虐待事件。ワインスタインが起こした性的暴力や性的嫌がらせの告発は長年隠蔽されていましたが、2017年10月、ニューヨーク・タイムズ紙がワインスタイン氏による性的暴行の暴露記事を掲載。

その後、グウィネス・パルトロウやアンジェリーナ・ジョリーといった有名俳優たちを含む80人以上の女性たちがセクハラ行為を告発。ワインスタイン氏は性暴力や強姦などの罪で起訴され、2022年にニューヨークの裁判所で禁錮23年、2023年にはロサンゼルスの裁判所でさらに禁錮16年を上乗せする判決を受けました。

ラボのメンバーは、エンターテインメント業界で起こる性的虐待事件についてどう感じているのでしょうか。

メアリー:アメリカの例だとハーヴェイ・ワインスタインがいるよね。権力を性的な利益を得るために利用している人たちが少なくない。

ケンジュ:アメリカはその点で最悪だと思う。若い子どものスターが虐待されたり、利用されたりする例がたくさんある。アメリカのエンターテインメント業界の悪しき慣習みたいなものだよ。

ミクア:本当にクレイジー。この問題についてまず思い出したのは、R・ケリーによる若いシンガーへの性的虐待事件だった。スキャンダルが世に出始めた頃は、私はまだ子どもだったから、R・ケリーについて知っていたのは彼のヒット曲だけ。

R・ケリーに関するドキュメンタリーでは、ほとんどの被害者が証言していて、なかでも驚いたのは、彼がR&Bシンガーで大スターだったアリーヤと結婚したこと。当時、彼女はとても若くて、未成年だったのは間違いない。結婚できる法定年齢が16歳だから、R・ケリーは(アリーヤが結婚できる年齢になっていないことを隠して)彼女の年齢を偽って結婚を公表したんだよ。

酷かったのは、アリーヤの両親が娘を守ろうとしていなかったこと。R・ケリーはスーパースターだったからね。少なくとも私にはそう見える。業界で大きな影響力を持っていて、彼は若い才能を育てることでも知られていたからね。

彼が裁判所に出廷したときでさえ、人々は彼は無実だと言っていた。明らかな証拠や映像があるにもかかわらずね。多くの被害者が告発したのに、それでも人々は彼が無実だと信じていたなんてどうかしている。

現在、彼は刑務所にいるけど、遅すぎたくらい。彼が若い女性たちや家族に与えたトラウマは、決して元には戻せない。そして、誰もそれを解決することはできない。

R・ケリーは1990年代から未成年の複数の少女への性的虐待をしているとの噂がありましたが、長年にわたって隠蔽。しかし、アメリカのテレビ局が制作したドキュメンタリーがきっかけとなり、R・ケリー氏がおこなった数々の性加害が明るみに出ました。R・ケリーは2019年に逮捕され、2021年に禁錮31年の判決を受け、現在服役中です。

アメリカではエンターテインメント業界以外でも同様の事件が多く、未成年への性的虐待に対する怒りや、子どもを守ろうとする動きが強まっています。過去30年、児童性犯罪者に対する懲役刑やその他の刑罰が強化され、州の法律によっては有罪判決を受けると、学校の近くに住むことが許されないケースなどもあります。

モデレーターでZ世代評論家のシェリーは「虐待を繰り返す者は“sexual predator”と言われています。predator(=捕食者)と言われちゃうんですよ。こうした強い言葉が使われるのも、未成年者への虐待は絶対に許されないという姿勢の表れだと思います」と、性的虐待への厳罰化が進んでいる現状を補足しました。

被害者の“苦しみ”に寄り添うラボメンバー

被害者の救済と、今後の再発防止策が注目されているジャニーズ事務所。放送があった9月29日時点では、10月2日にジャニーズ事務所が記者会見を実施することを公表しています。ジャニーズ事務所の一連の問題は、この先どうなるのでしょうか。ラボのメンバーに意見を聞いてみました。(※)番組放送時の内容です

シャンシャン:ジャニー氏が亡くなったことで、このスキャンダルが一過性のものになるのではないかと心配している。1、2年で沈静化して、何の罰も下されないんじゃないかと思う。被害者のために正義が果たされることはないのでは?

だって、誰がすべての損害賠償を支払って、誰が罰を受けるの? この事件に間接的に関与をした人たち? それは難しいでしょう。被害者を虐待する手助けをしたという確かな証拠を、裁判所が押さえているとは思えない。

ミクア:BBCのドキュメンタリーの前に、日本のメディアはこの一連の事件について報道していたの?

ノエ:ほとんど報道していなかった。

シェリー:アメリカでもこういった隠蔽はあると思う?

ミクア:以前ほどはないと思う。ソーシャルメディアや小規模なニュースアカウントなど、何百万人もの人々がフォローしているものもあるから(隠蔽は難しい)。

シェリー:ジャニーズ事務所は閉鎖すべきだと思う?

メアリー:私はそうは思わない。なぜなら、1人の男のせいでみんなが苦しむべきではないでしょう?

ノエ:だけど、1人の男の問題じゃないよ。とはいえ、僕も廃業すべきではないと思う。リーダーは変わるべきだけど、このスキャンダルや犯罪にどれだけ多くの人が関わっていることがわからない今、それも難しいよね。

シャンシャン:ジャニーズ事務所の一部の取締役は辞任して、別の誰かがリーダーシップを引き継いだけど、名目上のリーダーに過ぎないと言われているよね。問題は、日本のボーイズアイドルのなかには、まだ会社との契約に縛られている人がたくさんいるということ。だから、彼らはジャニー氏の評判に左右されてしまう。

残念なことに、芸能界の若手アイドルのほとんどは、所属会社への(自分への投資を含めた)借金がチャラになるまで給料をほとんどもらえないんじゃないかな。だから、一番の被害者は男性アイドルだと思う。被害にあった人も、そこにいただけの人も全部含めて。

エンターテインメント業界による搾取の形に批判の声をあげながら、ラボのメンバーは被害者の苦しみに寄り添い、補償についても言及しました。

シェリーは「ジャニーズがこれからどうやって、どれぐらい補償するのか。メディアもちゃんと報道していかないといけないし、企業もちゃんと対応しないといけない。対応が今後の子どもたちの安全や権利を守る方向に進むのかどうかに関わってくると思います」と締めくくりました。