ジャニーズ事務所の性的虐待問題、アメリカのZ世代はどう受け止めた?エンタメ業界の問題点、人権問題に言及

「ニューヨークのZ世代が感じた『ジャニーズ問題』について」。「NY Future Lab」のメンバーが、ジャニーズ事務所を巡る一連の報道に関して感じたことについて話し合いました

「ニューヨークのZ世代が感じた『ジャニーズ問題』について」。「NY Future Lab」のメンバーが、ジャニーズ事務所を巡る一連の報道に関して感じたことについて話し合いました

interfmで放送中の「sensor」(パーソナリティ:Cartoon)。「NY Future Lab」では、これからの時代の主役となる「Z世代」と「ミレニアル世代」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どのような性質や特徴があるのかなどについて、Z世代・ミレニアル世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していきます。

9月22日(金)のテーマは、「ニューヨークのZ世代が感じた『ジャニーズ問題』について」。「NY Future Lab」のメンバーが、ジャニーズ事務所を巡る一連の報道に関して感じたことについて話し合いました。

ジャニーズ事務所の問題、アメリカでの報道は?

日本の大手芸能事務所・ジャニーズ事務所の創設者であるジャニー喜多川氏が、未成年者を含む同事務所に所属する男子タレントらに対して、性的虐待を半世紀以上にわたって続けていたことが明るみになりました。

2023年3月にイギリスBBCが、この問題について取り上げたドキュメンタリーを放映したところ、それに追随するように国内メディアも諸問題について報道。2023年9月現在、日本ではジャニーズ事務所を巡る諸問題に関するニュースを目にしない日はないというくらい報道が過熱しています。一方でアメリカではこのニュースを知る人は意外にも少ないのだそう。

モデレーターでZ世代評論家のシェリーは「もちろんAP通信や三大ネットワークの1つであるABCなどは報道しましたが、あまり大きな話題にはなっていません」と、アメリカ国内の反応についてコメント。ラボのメンバーはジャニーズ事務所の問題について知っていたのでしょうか? インタビューをしてみました。

ノエ:(ジャニー氏が所属タレントに性的虐待をしていた件について)聞いたことはあるよ。どうしてそれを知っているのかというと、確か日本人の母が教えてくれたと思うんだけど、はっきりとは覚えていないな。でもニュースを見て知ったわけではないのは確かだよ。

シャンシャン:YouTubeを見ていたら、おすすめリストにジャニーズの元アイドルの記者会見ビデオが上がってきたんだよね。それをクリックして見たら、彼がジャニー氏から受けた性的ハラスメント事件について話していて、どんな嫌がらせをされたかなどについて語っていた。

そのときはかなり前に起きたスキャンダルなのかなと思っていたから、最近の出来事だと気付かなかったの。これって、ジャニー氏が亡くなったから、セクハラなどのいろいろな容疑が浮かび上がってきたというわけ?

ヒカル:そうではなくて、シャンシャンが見た記者会見よりも先に、イギリスの公共放送局BBCが(一連の問題について扱った)ドキュメンタリーを放映したんだ。BBCのドキュメンタリーがきっかけで、日本でも多くの報道が始まったんだよ。

シャンシャン:そうだとしたら、BBCはどうやってそれを知ったの? 日本はとても保守的な国だから、性的ハラスメントやレイプについて、話すだけでもすごくネガティブに感じるんじゃない? だから日本では報道されていなかったのではないの?

ヒカル:これまでにも被害に遭った元ジャニーズタレントたちが、それについての本を書いたり、ジャーナリストのインタビューにも答えていたりしたからなんだ。裁判もおこなわれていて、2004年にジャニーズ側が敗訴したことがあった。だからBBCはこの問題について知っていたんだ。でも、日本のテレビなどの主要メディアは、ジャニーズとのつながりを失いたくないから、国内ではほとんど報道してこなかったんだ。

シェリー:ところで、シャンシャンはジャニーズアイドルについて知っていたの?

シャンシャン:うーん、ジャニーズかどうかはわからないけれど、なんとかアンド・プリンス? というグループは知っているよ。彼らが出ているバラエティ番組を観たことがある。彼らはジャニーズアイドルなの?

ヒカル:King & Princeのことだね。彼らはジャニーズだよ。

シェリー:ジャニーズアイドルはアメリカでも人気?

メアリー:そもそも、J-POP自体がアメリカではあまり人気がないと思う。

ヒカル:そうだね。彼らは海外ではあまり売れていないんだよね。台湾や韓国などのアジアの国々以外では。

ラボには日本にルーツを持つメンバーも多いため、ジャニーズ事務所の問題について、日本人の親から聞いたことがあるという人はいたものの、報道で知ったという人はいませんでした。

「今の日本では四六時中この問題について報道されていますが、ジャニーズアイドルがアメリカではほとんど活動していないということもあり、一般的なアメリカ人にとって、あまりピンと来ていない話題なのかもしれません」と、シェリーは付け加えました。

権力の乱用とハラスメント エンタメ業界では“起こり得る”ことだが…

アメリカではあまり報道されておらず、ジャニーズ事務所の問題について知る人は多くありません。それではラボのメンバーは、この一連の問題について知ったとき、どのように感じたのでしょうか?

ノエ:ジャニーズはエンターテインメント業界でものすごく大きな影響力を持っていた。だから、多くの人や企業がジャニー氏による性的虐待問題について知っていたのに、何も言わなかったのは、そのほうが自分たちの利益になると思ったからじゃないかな。

シャンシャン:イギリスBBCが立ち上がって告発したのも、彼らの立場はずっと安全だったからだよね。いくら日本のエンターテインメント業界でも、イギリスのメディアに対しては、何もできないからね。

ミクア:すごく残念で悲しい。エンターテインメント業界は、才能あるアーティストを使って収益を上げているのに、彼らを守ることができなかった。多くの被害者がいて、誰かが声を上げたかもしれないのに、誰もそれを真剣に受け止めず、信用しなかったわけでしょう。そして、日本国外のメディアが介入するまで問題は解決されず、明るみになったときにはすでに遅かった。加害者は亡くなってしまっていたから。

エンターテインメント業界では、どこでも同じようなことが起きているのが本当に悲しい。権力を乱用する人がいて、成功しようと必死になっている人を、虐待したりマインドコントロールしたりしている。

もう1つBBCの記事で印象的だったのは、日本では誰も驚かなかったということ。ほとんどの人がこの問題について知っていたと書かれていたこと。こんなことが多くの人々の目の前で起こり、やった人は何の制裁も受けず、何の影響も受けなかったのが信じられない。

メアリー:性的虐待の被害者が男性だったというのが、大きな要因だったという気がする。性別による格差というか、もし被害者が女性だったら、問題はもっと早く表面化していたかも。あくまでも仮説だけど。

アメリカでも男性の性被害について、男性には社会的に求められる「男らしさ」や偏見があるために、被害者が被害について打ち明けられない・打ち明けても理解してもらえないことが問題になっています。

シェリーは「ジャニーズ問題とよく比較されるのは、『#MeToo運動』のきっかけにもなった、ハリウッド映画界の帝王と言われていたハーヴェイ・ワインスタインによる複数の女優への性的虐待問題です。アメリカ社会へ与えた衝撃は大きく、これと同じことが今の日本では起きているとも考えられます」とコメント。

#MeToo運動以降、アメリカ社会ではこうしたハラスメントなどを告発しやすくなった・表面化しやすくなったとも話し、「(日本でも)これが人権問題について考える社会になるきっかけになれば」と期待を寄せました。