アニメを視聴している人口が最も多いのはアメリカ? 日本のアニメクリエイターは世界を意識した作品づくりをするべき?

アメリカZ世代が日本人にお願いしたいこと パート2」。前回に引き続き、「NY Future Lab」のメンバーが日本人にお願いしたいことについて話し合いました。

アメリカZ世代が日本人にお願いしたいこと パート2」。前回に引き続き、「NY Future Lab」のメンバーが日本人にお願いしたいことについて話し合いました。

interfmで放送中の「sensor」(パーソナリティ:Cartoon)。「NY Future Lab」では、これからの時代の主役となる「Z世代」と「ミレニアル世代」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どのような性質や特徴があるのかなどについて、Z世代・ミレニアル世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していきます。

9月15日(金)のテーマは、「アメリカZ世代が日本人にお願いしたいこと パート2」。前回に引き続き、「NY Future Lab」のメンバーが日本人にお願いしたいことについて話し合いました。

アニメにおける「日本文化」 どう受け止めている?

前回の「NY Future Lab」では、「異世界を舞台にしたアニメ作品なのに、温泉や日本食などの日本文化が色濃く残っている描写があると、外国人は違和感を抱くことがある」という話題が出ました。

「異世界物なのに、日本文化が描かれている」という点は、日本人からすれば「マンガ・アニメならではの荒唐無稽な面白さ」として受け入れられますが、なかには「クリエイターが外国文化を知らないために、こうした描写をしてしまうのでは?」と感じてしまう海外のアニメファンもいるようです。

これにはラボのメンバーからも「マンガなんだから、別に異世界物だったとしても日本文化を描いてもいいのでは?」という意見も出るなど、ディスカッションは盛り上がりを見せました。ここではその様子を一部ご紹介します。

メアリー:「異世界おじさん」というマンガでは、異世界なのに(登場人物が)温泉に行くんだよね。それから「魔王城でおやすみ」という作品も、作中の舞台は日本とはまったく関係がないんだけど、やはりそこには温泉があって、みんな温泉が大好きなの。「温泉がないと生きていけない」みたいな感じで。

あとは、みんな日本食しか食べないみたいで、ラーメンの話ばかりしている。フランス料理やアフリカ料理なんかを食べるつもりなんて全くないみたい。そこがすごく気になっちゃって。

それって、日本人があまり国外に出ないのが理由で、(気軽に海外に行けないのは)クリエイターの賃金が低いせいでもあると思う。もっと多くの経験をするために、クリエイターの給料も上げるべきだと思う。

シャンシャン:メアリーが指摘しなかったら、このことには本当に気づかなかったな。私はアニメを観るたびに「これって日本文化だなぁ」って感じている。だから、物語が完全な異世界物だったとしても、登場人物たちが温泉に行くのは当然のことだと思っていた。

でも、言われてみると確かにその通り。彼らはもう日本にはいないから。では「温泉はどうしてそこにあるのか?」っていうことだよね。

ヒカル:それって、設定が完全に異世界なわけだから、地球でもないし、どの国とも関係がないわけでしょう? だったら中世の城で登場キャラクターがラーメンを食べていたり、ある程度日本的な要素が入っていたりしても、僕は全然気にしないけど。

ノエ:それって不思議だよね。実際にアニメを観ていると、(そうした描写も)自然に感じてしまうよね。

メアリー:ずいぶん前のことだけど、あるアニメのプロデューサーがこういう話をしていたの。インタビューで「観客のほとんどがアメリカ人なので、もう少しアメリカ向けのものを作らないのですか?」と聞かれたんだと思うんだけど、彼は「いいえ、私たちは日本人以外のためにはアニメを作っていないんです」と答えた。「では、もっと国際的なものにしてくださいと言われたらどうする?」と聞かれたら、「『ノー』と答える」と言ったの。

アニメを視聴している人口が最も多いのはアメリカというデータ(※)もあるため、もはやアニメやマンガは日本だけのものではなく、グローバルなものになっています。今回意見を述べていたメアリーは、ラボのメンバーの誰よりもアニメ・マンガを愛しているため、モデレーターでZ世代評論家のシェリーは「クリエイターに自分たちのほうへ目を向けてほしいという思いもあったのかもしれません。日本の人も、ハリウッド映画に日本が登場すると嬉しくなると思いますが、それと似た心理かもしれませんね」とコメントしました。

※「アニメを観ている人の割合」が一番多いのは日本

「アメリカでも、もっとアニメやマンガにアクセスしやすくしてほしい」

ハリウッド映画も、かつてはアジアなどの異文化を憶測で描いたり、ときに差別的な表現をしたりして批判されてきました。最近ではそうした描写は減りつつありますが、その要因として移民2世も増えて観客が人種的に多様化していることや、中国マーケットの巨大化により、アジアを意識した作品が増えたことが理由として考えられます。

では、アニメやマンガもグローバル化した今、日本のクリエイターは世界を意識した作品づくりをするべきなのでしょうか? ラボのメンバーに聞いてみました。

シャンシャン:私はそうは思わない。アニメやマンガが日本文化の要素を多く含んでいるのは良いことだと思う。だから世界のファンが見たがるんじゃないかな? それにエンターテインメントとしてだけでなく、教育的な要素もあると思う。

だから、国際的に人気が出てきているからといって、特に国際的な観客にアピールしようとすると、アニメ・マンガは本来の良さを失うんじゃないかとも思う。

メアリー:アニメは世界的な現象になっているから、もっと多くの人にとって魅力的にしようと努力すべきじゃないかな。ただアニメは日本文化に深く根ざしているから、それを取り去るのは難しいかもね。

ヒカル:最終的には、日本らしさとかも含めてアニメがどんな要素を持っているかは、あまり重要ではないと思うんだ。ストーリーが楽しければ、人は何でも見るよ。たぶん、特定の人々を対象にすることは、この場合あまり必要ではないと思うよ。

メアリー:それじゃあ少なくとも、アメリカでももっと簡単に、たくさんのアニメやマンガにアクセスしやすくしてほしいな。たとえばアニメが儲かるのは、アニメ自体による収益ではなく、Blu-rayやグッズ、コンサートのチケットの売り上げのおかげでしょう。日本でアニソンが大人気になったのもそのせいじゃない。だから同じことを、日本以外でもっとやってくれたらいいなと思うんだよね。

例えばニューヨークでマンガが買える店は、紀伊國屋書店のニューヨーク店ぐらいで、テレビで放送されているのは「ナルト」や「ドラゴンボールZ」などの作品だけ。もっと新しい作品も出してもらえるとファンとしては嬉しいし、そうすればクリエイターも儲かるでしょう。

もし、字幕付きのBlu-rayがあれば、私は絶対に買うよ。たとえ1万円以上で3話しか入っていなくても、それでも買うと思う。クレイジーに聞こえるかもしれないけれど、ファンだから。

「今やアニメ・マンガは世界の人が楽しんでいるということは、少し頭に置いておいたほうがいいと思います。それを知らないと、無意識のうちに差別的な描写をしてしまう場合もありますし、そこは気を付けてほしいですが、個人的には日本のクリエイターには作りたいものをのびのびと作ってほしいなと思います」と、意見を述べたシェリー。

さらには「クリエイターに十分なお金が行き渡っていないことも心配」だと話し、「配信会社や代理店など、大企業にばかりお金が入ってしまうのは問題ですし、そこのバランスを調整してほしいなと思います」ともコメントしました。

最後にシェリーは、クリエイターにお金が回るように、「日本がよりアニメ・マンガを海外で売り出していくべきだ」ともコメント。ストリーミングサービスでアニメ作品を観やすくなったとはいえ、アメリカではテレビ放映されているアニメはいまだに「ナルト」「ドラゴンボール」のような有名作品だけ。コミックやアニメグッズを手に入れられる実店舗もまだまだ少ないと説明します。

「アニメグッズやコミック、Blu-rayなどはネットで買えるのですが、Z世代にとってネットで買えることは『当たり前』。実店舗で商品を手に取るという“体験”に価値を置く人も多いです」と話し、アニメ・マンガについては、「まだ海外展開のビジネスチャンスが残っているのでは?」と推測して話題を締めくくりました。