アメリカのZ世代は外国の音楽が好き? K-POP、ラテンミュージック、J-POP…広がるグローバル・サウンドの背景に迫る

interfmで放送中の「sensor」(パーソナリティ:Cartoon)。「NY Future Lab」では、これからの時代の主役となる「Z世代」と「ミレニアル世代」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どのような性質や特徴があるのかなどについて、Z世代・ミレニアル世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していきます。

7月7日(金)のテーマは、「アメリカZ世代がグローバル・サウンドに夢中な理由」。Z世代が今、夢中になっている世界の音楽について「NY Future Lab」のメンバーが話し合いました。

メンバーたちが好きな音楽は?

夏と言えば、さまざまなイベントや音楽フェスが開催され、まさに音楽の季節。日本でもライブイベントやフェスが数年ぶりに通常開催されるようになり、音楽業界は盛り上がりを見せています。

今回はZ世代と音楽がテーマということで、まずはラボのメンバーに、普段どのような音楽を聴いているのかを質問してみました。

ミクア:最近、私はKaytranada(ケイトラナダ)ばかり聴いている。

ノエ:Kaytranada、ヤバいよね。

ミクア:Kaytranadaはハウス系のクラブミュージックの人なの。彼はDJとしてスタートして、R&Bのリミックスなどを手がけている。でも私が今みたいに本当にハマって聴くようになったのは、コーチェラでのパフォーマンスを観てから。彼は最近Amine(アミーネ)とのコラボ・アルバム『Kaytramine』(ケイトラミーネ)を出していて、それもすごくいいの。

ノエ:僕はこの間、日本に行って東京に長いことステイしていたんだけど、友達がみんなDJなんだよね。それでトラップ(ハードコア・ヒップホップから派生したジャンルの1つ)とか聴いていた。

ミクア:日本でトラップがかかるの?

ノエ:たまたまニューヨーク時代のスケーターの友達が多かったからね。そうなるとトラップ、ヒップホップ、トランス、テクノ……そんな感じの、日本とアメリカがミックスしたようなバイブになるんだ。

メアリー:私はずっとJ-Pop、J-Rockを聴いているけど、Twitch(ツイッチ/動画配信サービス)がレコメンドしてくれるアーティストばかり。Creepy Nuts(クリーピーナッツ)、DADARAY(ダダレイ)、そして、きのこ帝国。これはかなり不思議なサウンドかも。

ヒカル:僕が好きなのはJ-Rockで、ずっと変わってないよ。L’Arc〜en〜Ciel(ラルク アン シエル)、LUNA SEA(ルナシー)、新しいThe Last Rockstars(ザ・ラスト・ロックスターズ/YOSHIKI、HYDE、SUGIZO、MIYAVIの4人組バンド)も聴いているよ。

日本にルーツを持っていたり、日本文化に興味があったりするメンバーが多いため、日本の音楽を聴いている人が多い結果になりましたが、そもそもアメリカのZ世代はそれまでの世代と比べて、外国の音楽を聴く傾向が強いです。

Instagramの2023年のトレンド予想では、Z世代の半数以上が英語圏以外のアーティストを聴くつもりだと回答しており、なかでもK-POPやラテン系音楽の人気が強いのだそう。

モデレーターでZ世代評論家のシェリーは「外国の音楽がアメリカで人気の理由についてラボのメンバーに考えてもらったところ、アニメブームが理由の1つとしてあがりました。アニメ人気は音楽や食などの日本文化への興味と直結しますからね」とコメントしました。

サウンドが気に入れば歌詞は気にしない

しかし、日本のアニメが人気なことが、K-POPやラテンミュージックがアメリカのZ世代に人気があるという理由にはなりません。外国の音楽がアメリカで人気がある理由について、ミクアがこう説明してくれました。

ミクア:理由として大きいのは、Tik TokをはじめとするSNSだと思う。アーティストがメジャーになるのを助けるのはSNS。例えばプエルトリコ出身アーティストの、Bad Bunny(バッド・バニー)。私はスペイン語の音楽を聴かないけれど、彼の曲はそこらじゅうでかかっているし、ファンもめちゃくちゃ多い。SNSのおかげでまずメジャーになると、ラジオやクラブ、パーティなどでガンガンかかるようになって、「あ、あの曲だ!」と認識できるようになる。だから私も最近は、「この曲がBad Bunnyなんだ」って分かるようになった。

シェリー:スペイン語の歌詞だと、意味が理解できないよね。それでもいいの?

ミクア:サウンドがキャッチーだったら、言葉がわからなくても誰も気にしないと思う。例えば、私はよくアフロビートに合わせて歌っているけど、全く意味がわかってないよ。でもビートもサウンドも最高だから全然気にしない。

そもそも(ナイジェリア出身アーティストの)Burna Boyなんて、全く英語喋らないし。「えーと、何語で喋っているんだろう?」って感じ。それでもクラブやSNSですごく人気があるし、アメリカ人は歌詞がわからなくても全然気にしていない。

でも、日本のアニメや音楽の場合はちょっと違うと思う。ファンはサウンドというよりも、日本の文化や日本語に強い興味があるから。だからファンは歌詞の意味を知りたいと思っている。でも世界的に広く考えると、音楽って基本的にはダンスのためのものなので、歌詞はあまり気にしないのだと思う。

シェリー:それって以前からよく話している、ダイバーシティ(多様性)とも関係あるよね。私たちの世界はどんどん多様化していっているし、だから英語の音楽ではなくてもよくなった理由の1つなんじゃないかな。

ミクア:確かにそうかも。逆に多くのヒット曲は、これが英語だったらあまりパッとしなかったかもしれない、というのはあると思う。違う言葉、文化、サウンドだからこそ、面白いと感じるのではないかな。英語の歌しか聴けなかったら、なんだかあまり面白くないと思う。

Bad Bunnyは今年のコーチェラでヘッドライナーを務めました。3組いたヘッドライナーのうち、Bad BunnyとBLACKPINKの2組が外国語のアーティストで、シェリーは「10年前だったら考えられないこと」だとコメントします。

Tik TokやYouTubeによって、英語圏以外のアーティストがブレイクしている昨今。外国語の音楽が人気なのは「サウンドがよければ、歌詞は気にしない」という層が多いことと、アメリカZ世代の人種の多様化が進んでいることが理由にあげられそうです。

シェリーは「K-POPはアメリカナイズされたサウンドのため、アメリカ人にとって入りやすいというのがあると思います。一方で日本の音楽はとても個性豊かですし、グローバル・サウンドを取り入れた曲もたくさん増えてきましたよね。これから日本の音楽がニッチに聴かれていくのではないでしょうか」と、日本の音楽の未来に期待を寄せました。