AIが人を差別する? 大統領選への影響も? Z世代の間で広がる生成系AIへの懸念とは?

AIが人を差別する? Z世代の間で広がるAIへの懸念」。「NY Future Lab」のメンバーたちが、生成AIの問題点について話し合いました。

AIが人を差別する? Z世代の間で広がるAIへの懸念」。「NY Future Lab」のメンバーたちが、生成AIの問題点について話し合いました。

interfmで放送中の「sensor」(パーソナリティ:Cartoon)。「NY Future Lab」では、これからの時代の主役となる「Z世代」と「ミレニアル世代」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どのような性質や特徴があるのかなどについて、Z世代・ミレニアル世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していきます。

6月9日(金)のテーマは、「AIが人を差別する? Z世代の間で広がるAIへの懸念」。「NY Future Lab」のメンバーたちが、生成AIの問題点について話し合いました。

大手企業が次々とチャットAIを公開

「NY Future Lab」では以前に、質問をすると人間が考えたかのような文章で回答してくれるチャットAI、ChatGPTについてトークしました。メンバーたちは調べものやレポートを書く際の補助として使っているなど、全体的にはポジティブな受け止め方をしていましたが、前回の座談会からしばらく経ち、AIを巡る社会の状況もかなり変化しました。

ラボのメンバーたちは、現在ではAIをどのように利用しているのでしょうか?

ヒカル:すごく役に立つからいつも仕事で使っている。例えば翻訳するときなんかにね。最終チェックはするけれど、ほとんどChatGPTがやってくれる。あと、政府機関のようなかっちりとした相手先にメールを送る際に、下書きをChatGPTに入れると、しっかりしたビジネスメールにアレンジしてくれる。

シャンシャン:私は前回の番組で話した後に、ChatGPTのアカウント作ってみたよ。論文を書かなければいけなかったタイミングで、さすがに全部を書いてもらうことはしなかったけど、その代わりにChatGPTに参考文献のサマリーを作ってもらい、細かい質問にいろいろ答えてもらえて、とても助かった。

ヒカル:最近はChatGPTより、GoogleのBardのほうを頻繁に使っている。もともとGmailを仕事で使っているので、いちいちログインしなくて済むから楽なんだ。アカウントをいろいろ作るのも面倒だし。

メアリー:私はBingを使ってみたけど、最低だった。ただ質問に答えてくれるだけで、複雑な数学の問題は解いてくれなかった。「なーんだ」という感じだったな。

数ヵ月前まではチャットAIと言えばChatGPT一強でしたが、その後GoogleやMicrosoft Bingも相次いでチャットAIを公開し、そのいずれもが存在感を増しています。モデレーターでZ世代評論家のシェリーは「この世代にとって、AIは勉強にも仕事にも欠かせない存在のようです」とコメント。

40歳以下のミレニアル&Z世代は、AIは「仕事の効率を上げてくれるもの」として6割以上がポジティブに受け止め、半数近くの人が、仕事でも「向こう5年以内に職場でもAIとの共存が始まる」と考えています。

一方で、その上の世代は6~7割が、AIは「自分の仕事を脅かす存在」としてネガティブに捉え、AIとの共存を予測する人は25%程度にとどまっているというデータがあります。

AIが人を差別する? 問題点とリスクは?

そうしたなか、多くの専門家がAIのリスク管理を優先すべきと警告をしています。6月に入ってからも、ChatGPT、Microsoft、Googleなどテック大手の関係者数百人が公開書状を発表し、「AIの暴走は人類滅亡をもたらしかねない」と声をあげています。

昨今のAIを巡るリスクについて、ラボのメンバーはどう考えているのでしょうか?

メアリー:AIは役に立つものだと思う。ただし人の仕事を奪わなければね。もし人に取って替わることになっても、私たちみんながそこから恩恵を受けるようになるべき。ただ大企業や投資家だけが儲かる結果にはなってほしくない。

例えば、アート。AIが生成するアートは、基本的には人間のアーティストの誰かが作ったもののコピーでしょう? 誰かのアートをAIがコピペして、それで利益を得るって、もともと作ったアーティストに対してアンフェアなことだと思う。そういうところには憤りを感じる。

もう1つ、前回AIについて話し合ったときに、「AIで作った論文はバレてしまう」という話が出ていたよね。でもGPT4という最新バージョンだと、「この論文がAIチェッカーに引っかからないようにして」と入力すれば、わからないように作ってもらうことができてしまうの。

ノエ:AIの本当の可能性はまだ誰にもわからない。正直、インターネットが出てきたときと同じなのかな、という気もする。どんな可能性があるのか、当時はまったくわかっていなかったからね。ただし、AIは無限の可能性に比べて、規制がほんの少ししかない。つまり人がどう使うかにかかっている。そうするとモラルに反することもいろいろ出てくると思うよ。

AIはものすごい勢いであり得ない量のデータを学んで、どんどん賢くなっていく。そして人もAIの新しい使い方をどんどん学んでいくなかで、良くない使い方も出てくるはず。特にAIは開発者に大きく影響されるからね。

開発者が必ずしも白人男性とは言い切れないけれど、IT企業の採用には、女性やマイノリティを差別してきた歴史がある。そういうシステム的な差別が、AIに組み込まれないとは言い切れないと思う。

こうしたAIによる差別は、すでに現実になっています。大手の就活サイトでは、履歴書の一次審査をAIが担当している企業もありますが、ある黒人男性が就活サイトを訴えたことがニュースになりました。

その男性は一流大学を出て、必要な資格を所持しているのにもかかわらず、何度履歴書を出しても一次審査が通らなかったとのこと。この原因が、AIのアルゴリズムによる差別だと考えられています。こうした差別はマイノリティだけでなく、女性や障がいを持つ人などに対しても起きていると、専門家は指摘します。

またAIを巡っては、来年おこなわれる大統領選への影響も懸念されています。2016年以降の選挙以来、フェイクニュースが政治や世論を混乱させていますが、AI技術が進み、フェイクと本物の区別がつかなくなってしまったら……? という不安が広がっているとシェリーは話します。

シェリーは「年長世代がAIを知るのに消極的であるために、逆にフェイクニュースなどに影響を受けやすくなってしまうのでは? という考えもあります。政府や企業によるAI規制も大事ですが、世代を超えたAI教育も必要になってくるとも思います」とコメントし、話題を締めくくりました。