日本で暮らす外国人は「自分の体型に自信をなくす」? アメリカで近年台頭する「ボディ・ポジティブ」の考え方とは?

「ボディ・ポジティブ」。「NY Future Lab」のメンバーたちが、自身の体型などについて語り合いました

「ボディ・ポジティブ」。「NY Future Lab」のメンバーたちが、自身の体型などについて語り合いました

interfmで放送中の「sensor」(パーソナリティ:Cartoon)。「NY Future Lab」では、これからの時代の主役となる「Z世代」と「ミレニアル世代」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どのような性質や特徴があるのかなどについて、Z世代・ミレニアル世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していきます。

5月19日(金)のテーマは、「ボディ・ポジティブ」。「NY Future Lab」のメンバーたちが、自身の体型などについて語り合いました。

「ボディ・ポジティブ」とは

近年、アメリカでムーブメントになっている「ボディ・ポジティブ」。身体の大きさや形、肌の色、性別、身体能力などにかかわらず、あらゆる体型を肯定的に捉えていこうとする考え方です。

「痩せているほうが美しい」「太っている人は自己管理ができていない」などの価値観はメンタルヘルスへの悪影響も大きく、こうした価値観に反対を示し、「自分・他人のあらゆる体型をポジティブに捉えよう」という動きが生まれました。

ラボのメンバーは「ボディ・ポジティブ」についてどう考えているのでしょうか。

メアリー:「ボディ・ポジティブ」の考えは基本的に、どんなサイズでも人は美しいということ。太っていても痩せていても。

ミクア:それからどんな肌の色でも、ジェンダーでも。ジェンダーは今ではとても流動的な概念だから。

メアリー:健常者であろうとそうでなかろうと、メンタルを病んでいたとしてもね。

シェリー:美に関するコンセプトはずいぶん変わってきたよね。どう変わってきたと思う?

メアリー:変わったなと思うのは、みんながよりさまざまな人を受け入れるようになっただけではなく、他の人を守ろうとするようになったこと。例えば少し前に、アリアナ・グランデがすごく痩せたので、「病気ではないか?」と心配する投稿が殺到した。

一方で太っている人に対するコメントも、ポジティブなもののほうがネガティブなものよりもずっと多い。TikTokやYouTube Shortsなんかのダンスビデオで、太った人が踊っていても、体型に関するネガティブなコメントは見たことがない。それっていいことだと思う。

ミクア:体重って遺伝(的な要因)もあるから、みんなが痩せられるわけではない。周りよりも大きいからって批判したら、その人のメンタルに影響するし危険だと思う。

ケンジュ:ボディ・ポジティブは、最近よく言われるダイバーシティ&インクルージョンとつながっていると思うよ。

こうした社会的な流れを受けて、アメリカでは多くのブランドがサイズ展開を増やしており、広告やファッションショーにプラスサイズモデルが出ることは当たり前に。

モデレーターでZ世代評論家のシェリーは「ボディ・ポジティブは、Z世代の多様化ともつながっています。彼らの半数は非白人で、さまざまな人種のルーツを持ち、体型・体格もばらばら。だからサイズ展開の少ないブランドや、激ヤセモデルだけを広告に使うようなブランドは支持されないのです」とも解説しました。

一方、ボディ・ポジティブとは反する考え方が「ボディ・シェイミング(Body Shaming)」。「太っているね」と相手の体型を直接批判することはもちろん、「そんなに食べると太るよ」などと声をかけるような振る舞いのことを指します。たとえ声をかける側がポジティブな意味合いで使っていたとしても、例えば「痩せているね」という声かけでも、勝手に他人の体型をジャッジする意図がある、という意味ではポジティブに捉えられないので注意が必要です。

体型に関する批判などはメンタルへの影響が大きく、自身の体型に対するネガティブなイメージはうつや摂食障害などを引き起こすこともあります。こうした悪影響からお互いを守っていこうという動きが、Z世代の間で広がりを見せていると、シェリーは話しました。

日本にいると、体型に自信をなくす?

日本に住み始めた外国人の若者、特に女性が、自分の体型に自信をなくしている……という調査結果がありました。以前は5割近くが自分の体型に自信を持っていたのに、日本で暮らすようになったら、その割合が2割程度に下がってしまったという内容です。

この話題について、ラボのメンバーに聞いてみました。

メアリー:確かに日本に行くと、自分のボディイメージに自信を持つのが難しくなる。日本はみんなとても気をつけているというか、お手入れが行き届いているというか、ファッションやヘアにものすごく気を遣っていて、とにかく完璧に見える。

あれだけ綺麗にしようとすると、とても大変だと思うけど……。文化の違いもあって、日本人はアメリカ人に比べて運動をずっと重要視しているし、全体的に見てもずっと健康だと思う。だから日本に行くとちょっと居心地が悪いというか……というよりは「ああいうふうになれたらな、羨ましいな」っていう感じかな。

ミクア:服のサイズもアメリカとは違うのかな?

ヒカル:そうだね。僕は日本ではMサイズだけど、アメリカではSサイズの服を着ているから、服のサイズは違うんじゃないかな。

ミクア:日本みたいに服のサイズの幅が少なくて、みんなも似たような大きさだったら、そこから外れないように(体型に)気をつけなければいけないのでは? そうでないと、着られる服がなくなってしまうよね。

ケンジュ:日本人はもともと(体型が)小さいほうだし、食べ物もカロリーが低いご飯や魚が中心でしょう。だから大きいサイズの服を作る必要はなかったと思うんだ。でもだんだん西洋人や外国人が入ってくるようになって、それも変わっていくのではないかな?

これはよくないことだと思うけど、日本人は自分と違う人たちを批判しがちな部分があるよね。サイズだけでなく、日本人はとても同質的だからそうなるんだと思う。

話を聞いて、シェリーは「日本人は西洋人に比べて小柄だし、体型もアメリカほど差異がないため、服のサイズ展開が限られていた。そのため『痩せているほうがいい』という、ボディ・ポジティブではない考えが広がってしまったということなのでしょうか?」とコメント。

「国際化して外国人が増え、大きいサイズの服のニーズが増えれば変わっていくかもしれません。しかし、大事なのは服のサイズがあるかないかではなく、『人種、ジェンダー、障がいの有無など、そうしたものをひっくるめて包括的に受け入れる』というダイバーシティ&インクルージョンの考えです。それを象徴しているのが、ボディ・ポジティブの動きということですね」と、シェリーは話題を締めくくりました。