40周年を迎えるオフブロードウェイミュージカル「Mama, I Want To Sing」 作品の“生みの親”ヴァイ・ヒギンセンさんにインタビュー!

ミュージカル「Mama, I Want To Sing」のプロデューサー・Vy Higginsen(ヴァイ・ヒギンセン)さんのインタビューの模様をお届けしました

ミュージカル「Mama, I Want To Sing」のプロデューサー・Vy Higginsen(ヴァイ・ヒギンセン)さんのインタビューの模様をお届けしました

interfmで放送中の「sensor」(パーソナリティ:Cartoon)。「NY Future Lab」では、これからの時代の主役となる「Z世代」と「ミレニアル世代」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どのような性質や特徴があるのかなどについて、Z世代・ミレニアル世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していきます。

3月31日(金)は、ミュージカル「Mama, I Want To Sing」のプロデューサー・Vy Higginsen(ヴァイ・ヒギンセン)さんのインタビューの模様をお届けしました。

40周年を迎えるミュージカル「Mama, I Want To Sing」

コロナ・パンデミックも終息ムードが漂い、まさに“パンデミック明け”のアメリカ。ニューヨークではブロードウェイ・ミュージカルも連日満席です。そうしたなか、パンデミック中には上演されなかったオフブロードウェイ作品の上演も戻ってきています。

ヴァイさんがプロデュースを手掛けるオフブロードウェイ作品「Mama, I Want To Sing」は、初演から今年で40周年を迎え、黒人の作品としてはオフブロードウェイ史上最長記録を更新中。ニューヨークのブラック・コミュニティであるハーレムが本拠地で、ゴスペルをモチーフにしたミュージカルとして知られる同作品は、これまでもチャカ・カーンなどの多彩なゲストスターを迎えて上演されました。

日本でも何度も公演がおこなわれており、2010年に公開された映画版では主演をシンガーのシアラが務めたことでも話題になりました。

今回は同作品の40周年を記念し、モデレーターでZ世代評論家のシェリーが「Mama, I Want To Sing」の生みの親であり、プロデューサーのヴァイさんにインタビューを実施しました。

実話をベースにしつつ、普遍的なテーマを含む物語

シンガーの養成学校「Mama Foundation for The Arts、School of the Gospel Jazz and R&B Arts(MAMAアート・ファウンデーション、ゴスペル・ジャズ・R&Bスクール)」の創立者で、エグゼクティブ・プロデューサーであるヴァイさん。ミュージカル「Mama, I Want To Sing」においては脚本家、プロデューサー、共同ディレクターを務めています。そんなヴァイさんは「この作品はとても特別な作品なんです」と切り出します。

ヴァイ:音楽、ストーリー、歌詞、そして出演者が、私たちの文化そのものなんです。なぜなら「Mama, I Want To Sing」は私たち黒人の演劇であり、黒人の音楽であり、文化であり歴史であり、黒人の声でもあるから。この組み合わせこそが、歌に込められたアメリカの歴史を伝えているのです。

「Mama, I Want To Sing」は、ヴァイさんの姉であるR&Bシンガー、ドリス・トロイとその家族を描いた作品。つまり、ヴァイさんの家族の間で起こったことや実体験をベースにした物語です。ヴァイさんに話を聞くと、「私たち家族の物語であるのと同時に、アメリカ中の多くの家族の物語でもある」と話してくれました。

ヴァイ:黒人のゴスペル教会で歌を学び、そこから巣立っていった多くの才能が、アメリカの音楽シーンを作りました。その1人が私の姉のドリス・トロイだったんです。ドリス・トロイは「Just One Look」というヒット曲を書いて歌い、世界的に有名になりました。

多くの人がこの曲をカバーし、映画やドラマでも何度も使われました。これはハーレムで生まれ育った彼女のお話ですが、同時に教会から生まれた黒人音楽が、どのように世界に広がっていったかを、伝えるものでもあるんです。

「才能と夢をもった若いシンガーと家族の物語ですが、黒人だけでなく、全てのアメリカ人の物語とも言えます」と続けるヴァイさん。どんな人でも、どんな職業を目指していたとしても、そこには強い望みや“自分の運命を全うしなければ”という強い思いを抱くものだと語ります。

ヴァイ:私の姉の場合は「歌いたい」と強く願うことで、自分の道を見つけました。あなたがある道に進みたいと願っているとき、この作品を観れば、夢を叶えることは可能なのだと感じていただけると思います。周囲がどんなに「それは不可能だ」と反対しても、道を切り開くことはできるのです。それがこの作品のメタファーであり、インスピレーションでもあります。

主役を務めるのはZ世代 彼らへ託したい思いは?

今回の40周年公演は、前回の日本公演で主役を務めたヴァイさんの娘・Ahmaya Knoelle(アマーヤ・ノエル)がディレクターに就任し、フレッシュな新しい風を吹き込んでいます。その一例として主役のドリス役のオーディションが挙げられますが、ドリス役は6オクターブの歌声の持ち主でなければならないというハードルがあります。一体、どのように新しい才能を発掘したのでしょうか?

ヴァイ:ディレクターの娘・ノエルの発案で、市内の音楽専門の公立高校でオーディションをすることにしたんです。20人ほどの生徒のなかから主役にふさわしい3人が見つかり、毎回交代しながら上演することになりました。ミュージカルの上演以外に、私たちの団体、Mamaアート・ファウンデーションは、11歳から19歳の若い才能に歌を教えています。

自分たちが歌っている音楽がどこから来たのかを知ることは、とても重要です。これは私たちの先祖が、苦しいときにも希望を信じて、サバイバルのために歌った音楽だからです。そしてこんなに美しい音楽を作った文化に対して、正当な評価を与えることも大切です。

今回Z世代の高校生が主役を演じることに対し、「黒人の生んだ音楽の大切さを伝えたい。彼らに誇りに思ってほしい」と話したヴァイさん。日本公演で感じた、日本のオーディエンスの印象についても聞きました。

ヴァイ:私たちは日本のオーディエンスと、とても特別な関係を持っていると思っています。日本に行くのは大好きだし、日本人が大好き。彼らが私たちの音楽を聴くときの反応が最高なんです。手を叩いたり、笑ったり、泣いたり……。日本人は私たちの音楽の意味を、本当によく理解してくれていると思います。

人間には希望とインスピレーションが必要です。それを持っているのがオーセンティックな音楽なんです。人は人の歌声に癒されることができます。私たちの音楽には力があります。「Mama, I Want To Sing」は、本当にパワフルなミュージカル。だからこそ日本人は、思い切り手を叩き笑い、そのパワーをハートで、ソウルで、そして体で感じてくれるんです。そのパワーを持ち帰って家族と共有することだってできるんです。

「Mama, I Want To Sing」は40周年記念公演でアメリカの各都市、ヨーロッパツアーをスタートさせます。日本での公演予定は現時点では未定ですが、ぜひオフィシャルSNSやサイトをチェックしてください。

Mama Foundation of the Arts
https://www.mamafoundation.org
@MamaFoundation

Photography: Carol Rosegg courtesy of Mama Foundation of the Arts