70年代から続く、ニューヨークの“奇跡のレコードショップ”「Rock and Soul Records」世代を超えてDJに愛される理由をオーナーにインタビュー

「70年代から続くレコードショップ『Rock and Soul Records』のオーナーインタビュー」。モデレーターでZ世代評論家のシェリーが、店舗のオーナーであるシャローヌ・ベショーさんにインタビューをおこなった模様をお届けしました

「70年代から続くレコードショップ『Rock and Soul Records』のオーナーインタビュー」。モデレーターでZ世代評論家のシェリーが、店舗のオーナーであるシャローヌ・ベショーさんにインタビューをおこなった模様をお届けしました

interfmで放送中の「sensor」(パーソナリティ:Cartoon)。「NY Future Lab」では、これからの時代の主役となる「Z世代」と「ミレニアル世代」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どのような性質や特徴があるのかなどについて、Z世代・ミレニアル世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していきます。

2月24日(金)のテーマは、「70年代から続くレコードショップ『Rock and Soul Records』のオーナーインタビュー」。モデレーターでZ世代評論家のシェリーが、店舗のオーナーであるシャローヌ・ベショーさんにインタビューをおこなった模様をお届けしました。

70年代から存続する“奇跡のレコードショップ”

アメリカではZ世代を中心に、空前のアナログブームが到来中。2021年にはアナログレコードの売り上げがCDの売り上げを超える成長を続けており、カセットテープも人気が上昇しています。

ニューヨークのレコードショップは小さいながらも、元気な店は少なくありません。今回はそうしたなかから、50年近くの間マンハッタンに店舗を構えてきた“奇跡のレコードショップ” 「Rock and Soul Records」を特集します。

1975年に創業した同店は、世代を超えてDJたちに愛され続け、往年のディスコ「パラダイス・ガラージ」の伝説的なDJラリー・レヴァンや、ヒップホップ・グループのウータン・クランのメンバーなども売り込みに来たことがあるのだとか。他にもジャネット・ジャクソン、2パック、NAS、ノトーリアス・B.I.G.、ルイ・ヴェガ、ケニー・ドープなどのアーティストも訪れていた、まさに伝説的なレコードショップです。

2代目オーナーのシャローヌさんに店舗の歴史について聞くと、その歴史はシャローヌさんの両親が70年代に開業した電機店にまで遡るとの答えが返ってきました。

シャローヌ:1970年代、このあたりにはたくさんの電気店があって、レコードを売っている店もありました。その頃、父はアメリカに移民としてやってきたばかりで、ニューヨークに地盤を作るために電機店を開くことにしました。続いて母がやってきて、レコードセクションを担当することになったんです。

やがて時代が移り変わってCDの時代になっても、「Rock and Soul Records」はレコードを売り続けました。「当時はCDも、CDを再生するプレイヤーも高価で、うちのお客さんにはそれらを買うだけの余裕がありませんでした」とシャローヌさん。やがてタワーレコードやHMVなどの大手レコードショップでレコードの取り扱いがなくなると、「『Rock and Soul Records』にはレコードが置いてあるらしい」と噂を聞きつけたDJたちがお店に訪れるようになりました。

シャローヌ:DJは2台のターンテーブルでミックスするために、レコードを2枚ずつ買ってくれます。「Rock and Soul Records」はいつしかDJのための店になっていきました。そして、かつては時計やカメラを売っていた店の半分も、DJ用のミキサーやターンテーブル売り場に変わっていったんです。今ではDJ御用達の店として世界中に知られるようになり、そのおかげで生き残ることができました。

話を聞いたシェリーは「店舗の歴史が、まさに移民の歴史でもありますね。大手のレコードショップが消滅するなかで、アナログレコードブームとは言っても、世界一地価が高いニューヨークでこうした店舗を継続できるのは、本当に並大抵の努力ではできないと思います」とコメントしました。

ニーズに耳を傾け、変化し続けなければいけない

中学時代には親の手伝いで店舗に立っていたシャローヌさんは、大人になってからは別の企業でマーケティングの仕事をしていました。20年ほど前のある日、父から「人手が足りないので戻ってきてほしい」と相談を受けたシャローヌさんは、「戻るからには、ずっとここで働く。できる限りのことをして、この店を存続させ、成長させたい」という思いで、今日まで努力し続けてきたと語ります。

シャローヌ:今は昔とは違います。激しい変化のなかでは、ビジネスを続けるだけでも大変で、常に戦略を考えていく必要があります。この店が続いたのは、進化しなければならないときに、うまく進化できたからだと思っています。

例えばCDが姿を消し、レコードもなくなったときは、DJのギアを売るようになりました。そのうちDJもレコードを買わなくなりデジタルに移行しました。今ではまた、売上の多くはオンラインで、ネット上でのプレゼンスがとても重要です。

「常にお客さんのニーズに耳を傾け、ビジネスを都度変えていかなければならない。頑固ではダメなんです」と言い切るシャローヌさん。「Rock and Soul Records」は、DJや音楽を愛する人のための、地域のコミュニティとしての役割も果たしていると話します。

シャローヌ:例えば、月に1回はオープン・ターンテーブルのイベントを実施しています。触れ合いの場を作ったり、新しい機材が出たらその使い方を教えるクラスも開いたりしています。また、近所の子供たちを集めて、DJのやり方を教えるワークショップも行なっています。それらが私たちに、他の店にはない個性を与えてくれています。地域に貢献するからこそ、お客さんが通い続けてくれるんです。

最後に、DJを目指す日本の若者についてメッセージを求めると、シャローヌさんは「人生は短い。とにかく自分が好きなことをやってください。朝目覚めたときに、ワクワクして夢中になれることを!」と、エールを送りました。

ニューヨークは商業的な都市でありつつ、「ビジネスで儲けた分は地域に還元する」というフィロソフィー(哲学)が強い街でもあります。シェリーは「ニューヨークの文化の基盤は、こうした人たちがコミュニティを作っていて、人情がありますよね。特にネット社会の今だからこそ、リアルなつながりが求められているのかもしれません」とコメントし、締めくくりました。

Rock and Soul Records
10 W 37th St, New York, NY +1-(212) 695-3953,
https://rockandsoul.com
@ djrockandsoul