「子どもたちのポジティブなロールモデルであることが大事」 Z世代に大人気のスケボーショップ「Labor」オーナーにインタビュー

interfmで放送中の「sensor」(パーソナリティ:Cartoon)。「NY Future Lab」では、これからの時代の主役となる「Z世代」と「ミレニアル世代」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どのような性質や特徴があるのかなどについて、Z世代・ミレニアル世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していきます。

12月30日(金)は、Z世代に支持されるニューヨークのクールな大人を直撃インタビュー。スケートボードショップ「Labor(レイバー)」のオーナー、ジェームス・レヴォリンスキーさんに話を聞きました。

ニューヨークのスケートボーダーに大人気の「Labor」

オリンピック競技にもなった影響で、日本でも人気が急上昇中のスケートボード。ニューヨークのスケートボードショップといえば「Supreme」が有名ですが、モデレーターでZ世代評論家のシェリーは「地元のスケートボーダーたちに本当に支持され、愛されている『Labor』というお店がニューヨークにあるんです」と切り出します。

2012年にオープンした「Labor」は、こぢんまりとした佇まいながらもオーナーのスピリットが満載。今回はオーナーのジェームスさんに、「Labor」がどのような場所なのか、スケートボーダーたちにとってどのような場所でありたいのかなどについて話してもらいました。

「Labor」ってどんな店?

マンハッタン本店とブルックリンに店舗を持つ「Labor」。ジェームスさんによると店をオープンした2012年当初、ニューヨークにはスケートボーダーは多かったものの、スケートボードショップは多くなかったのだとか。

地元の人たちに愛される「Autumn」という老舗ショップが2011年にクローズしてしまったこともあり、ジェームスさんは「小さくてもお客さんが来てハングアウトできる店、スケートボードや服やシューズを買ったり、慌ただしいニューヨークの日常の中で、一息つけるような店をつくりたかったんだ」と話します。

「おかげでたくさんの人が店に来てくれるようになり、オープン当時は子供だったお客もずいぶん成長したんだ。今ではすっかり店がひとつのコミュニティのようになったよ。それが本当に嬉しいんだ」。店では定期的にイベントも開催されており、ジェームスさんは「僕は店でイベントをやるのが大好きなんだ」とコメント。その理由について、こう語ります。

「小さなイベントでも食べ物を用意して、子どもたちに食べてもらう。“食べ物があるからちょっと寄ってきなよ”みたいな感じでね。こういうことってすごく大切だと思っているんだ。オープン記念のパーティではピザを大量に準備して、水やセルツァー(次世代アルコール飲料)を飲みながら祝ったし、また別のときはコーヒーとドーナツを出したよ。

とにかく、子どもたちに食べさせるのが大事なことなんだ。なぜならこの街の子どもは、みんなが食べ物を買うお金を持っているとは限らない。残念ながら毎日は用意できないけれど、この店に来れば何かしらの食べ物があって、リラックスできるような場所であってほしい。一人ひとりが大変な1日をなんとかやり過ごすのを助けたいんだ」

話を聞いたCartoonは「素敵な人ですね!」と称賛します。シェリーも「『子どもたちに食べさせるのが大事なんだ』って言っていましたね。この話を聞いて、私もスケートボードのイメージが変わりました」と話し、ジェームスさんはいわゆるスケートボード店オーナーというパブリックイメージとは異なった印象を受けたとコメントしました。

相談できる身近な大人になりたい

10歳前後でスケートボードを始める子どもが多いため、学校が終わると「Labor」に集まるという子も多いそう。特に買い物や用事がなくても「Labor」に通う子どもも多いですが、ジェームスさんはそんな彼らの相談相手を務めることも。

「子どもたちにとって、自分が尊敬する身近な大人からちょっとしたアドバイスをもらうのって、とてもいいことだと思うんだ。それは親や先生にはできないアドバイスだよ。僕も子どもたちからたくさんの相談を受けてきた、学校のことや、本当にいろいろなことだよ。ここで働いている僕たちスタッフは、様々な経歴を経てここにいる。そして、通ってくる子どもたちにとって、ポジティブなお手本になりたいと思っているんだ」

ジェームスさん自身も、10代の頃に通っていたスケートボードショップで同じように過ごしていたと話します。「ただ思いをぶちまけるだけでもいいし、ソックスを買うだけでもいい。いつも顔を見ている誰かとそんな交流ができるのが、本当に大事なんだ」と思いを明かしました。

スケボーから学んだ粘り強さが経営にも生きる

ジェームスさんが生まれ育ったのは、ウィスコンシン州・ミルウォーキー。スケートボードは14歳のときに始めました。「もっと小さいときからスケートボードが欲しかったけれど、親が『そんなのは無駄だ、一時的な熱だ』と言って買ってくれなかったから、自分でバイトして買わなければいけなかったんだ」と、幼少期を振り返ります。

「スケートボードを手に入れて、たくさんの新しい場所へのパスポートを得たんだ。もちろんいい運動でもあるけれど、スケートボードをすることで、これまで生きてきた世界が全く違って見えてくる。とてもクリエイティブな体験だった」

スケートボードを手に入れてから、「スケートボードがしやすい」という理由で、今までは行かなかったような場所に出かけるようになったというジェームスさん。「そうすると新しいことを学ぶし、新たな出会いもたくさん生まれた」と言います。そしてスケートボードの魅力について、こうも話しました。

「スケボーは肉体的なチャレンジとメンタルなチャレンジが、すごくいいバランスなんだ。肉体的な達成感と、クリエイティブな探求心の組み合わせでもある。スケートボードはとてもとても難しい。もちろん上手な人はすごく簡単そうにやっているけれど、僕らみたいな普通の人は、とにかくたくさんの練習と努力と時間が必要なんだ。でも頑張って練習したことがようやく1つに繋がったとき、自分が学んできたこと全てが、周囲の街に溶け込んでいくような感覚になる。そして、すっかりスケートの魅力にはまってしまうんだよ」

そんなジェームスさんにスケートボードから学んだことを聞くと、「根気強さ、粘り強さ」という回答が。スケートボードは簡単ではないゆえに、集中して頑張らなければ上達しないことから、どんな場面でも粘り強く取り組む姿勢が身についたと話します。

「そこで学んだ粘り強さが、店の経営や、何か大きなプロジェクトを達成しようというときにも、常に立ちはだかる壁を越えるのを手助けしてくれている。“これはどう考えても越えられないだろうな”という壁でも、必死で頑張ってみる。そうすれば達成できるということを、体で知り尽くしているからね。そうしているうちに、気づいたら壁の向こう側に出ているんだ」

最後にスケートボードがオリンピック競技に選ばれたことについて聞くと、ジェームスさんは「オリンピック競技に選ばれたのは素晴らしいけれど、スケートボードは競うことが全てではないということを知っておいてほしい」との答えが返ってきました。

これにCartoonは「これは音楽もそうですよね」とうなずき、「(音楽やスポーツは)違うことに出会ったり、気づいたりするきっかけでもある」とコメント。取材を振り返り、シェリーは「(ジェームスさんの店は)いろいろな要素があって素晴らしいと思いました」、話題を締めくくりました。

Labor Skateboard Shop
Address: 46 Canal street,
New York, NY 10002
Web: www.laborskateshop.com
IG: @laborskateshop

Coordination & Photography: Mimi Tamaoki
IG: @gcv212
https://www.instagram.com/gcv212/?hl=en