interfmで放送中の「sensor」(パーソナリティ:Cartoon)。「NY Future Lab」では、これからの時代の主役となる「Z世代」と「ミレニアル世代」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どのような性質や特徴があるのかなどについて、Z世代・ミレニアル世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していきます。
12月16日(金)のテーマは、「Z世代の仕事観」について。Z世代の仕事への意識についてインタビューをしました。
必要以上に働かない「Quiet Quitting」
今アメリカの若者の間で現象になっているのが「Quiet Quitting」という考え方。直訳すると「静かに辞める」という意味ですが、実際に仕事を辞めるわけではなく「必要以上に一生懸命働くのを止める」という意味です。
上司に気に入られるために、言われたこと以上のことをする、仕事で手こずっている同僚の手伝いをしてあげる……など、そうした行為を止めようという「Quiet Quitting」の考え方はTikTokでもバイラル化。
Z世代・ミレニアル世代の8割以上が「Quiet Quitting」に魅力を感じると答えたデータもあり、アメリカ人の労働者の半数はすでに「Quiet Quitting」を実践しているという数字も。
「NY Future Lab」のメンバーたちは、「Quiet Quitting」についてどう考えているのでしょうか?
ミクアは「ハードに仕事をしていようがいまいが、同僚と給料は同じだと気づいてしまったから『もっとリラックスして働こう』という動きがあるのはよく聞くよね」と話します。
ミクア:私自身も以前パートで働いていたことがあるからわかる。あと30分で退社時間だけど、そこでもう1つ仕事を終わらせるかどうか迷うの。どんなに頑張っても、適当にやっている人と同じ給料しかもらえなかったら、やる気はなくなると思う。それだけでなくてメンタル的にもよくないよね。「余計なストレスを溜めてどうするの?」って感じ。その仕事がよほど好きだったら違うとは思うけれど。
シャンシャン:そういう人も、最初から「Quiet Quitting」をしようと思って始めたわけではないということは言いたいな。むしろ最初は一生懸命働いていたのではないかな? でも働かない同僚も同じ給与だということを知って、その苛立ちから、同じように働かなくなるんだと思う。
ここでノエは「アメリカ文化では一流大学を出たら、好きか嫌いか関係なく、とにかく儲かる職業に就くのがよしとされている。給与が高い仕事に就くべきだという考えがある」と切り出します。
ノエ:もちろん、コンピューターサイエンスとかがすごく好きで、そうした仕事に就く人もいるし、給与はそれほどでもないけど、本当に好きなことができる会社に入る人もいるよ。
でもそうではない多くの人は、ただ1,000万円以上の年俸をもらうために、9時から5時まで、魂を吸い取られるようなハードな仕事をしている。だから「Quiet Quitting」するかどうかは、会社や業界によっても違うんじゃないかな。
シャンシャン:「Quiet Quitting」したくなるのは、会社が社員を大切にしていないからでは? だからこそ、これほどまでに大きな現象になるんだと思うわ。全ての会社がGoogleみたいに福利厚生をしっかりすれば、もっとやる気も出るのにね。
「一生懸命働いても、いい加減な仕事をしている同僚と給料は同じ」ということから、ラボのメンバーは「Quiet Quitting」の考え方に共感しているようです。
モデレーターでZ世代評論家のシェリーは「こうした考え方が広まったのも、コロナ禍がきっかけなんです」と話します。コロナ禍で解雇されたり、リモートワークになったりした結果、人生で初めてリラックスできたという人が増加したとコメント。ハードに働くよりも、自分や家族の健康や幸せを優先するほうがいいと気付いた人が増えたことが理由だと解説しました。
日本の労働環境が心配
アメリカの労働環境について話し合ってきましたが、ラボのメンバーはアメリカよりも日本の労働環境のほうが心配な様子。シャンシャンは「日本の職場では、メンタルヘルスが重視されないと聞いたことがあるわ。長時間倒れるまで働いてしまうという話もあるみたい」と話します。
シャンシャン:アメリカでは少なくともメンタルヘルスに気を配るけれど、日本はそうでなく、社員は企業の奴隷になっているって本当? 日本は世界でも自殺率が高い国で、その理由も働きすぎだと聞いているわ。会社員が題材になっている日本のアニメ作品では、彼らが会社の付き合いで毎晩酔っ払って帰ってくるの。実際に見たことがないから、どうなのかはわからないけど。
ノエ:日本には、ハードに働きハードに遊ぶという文化があると思う。日本にいる友達はスケートパークやスケボーのお店などで働いているけれど、5時に仕事が終わって夕食を食べたら、翌朝5時まで飲んでいるもの。
日本の自殺率が高いことはアメリカでも知られており、オーバーワークが理由で命を落とす「Karoshi(過労死)」は英語にもなっています。ところが数字を見てみると、自殺率はアメリカのほうが日本よりもわずかに高く、シェリーは「アメリカのZ世代の7割がストレスで疲れ切っているという数字もあり、日本の状況は他人事とは思えないんです」とコメントします。
そうした中、近年のアメリカではメンタルヘルスについてオープンに話せる環境になっており、「メンタルヘルスの話題のタブー化をなくそう」というポジティブな動きがあるのだとか。シェリーは「日本もそうなるといいなと思います」と話題を締めくくりました。