interfmで放送中の「sensor」(パーソナリティ:Cartoon)。「NY Future Lab」では、これからの時代の主役となる「Z世代」と「ミレニアル世代」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どのような性質や特徴があるのかなどについて、Z世代・ミレニアル世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していきます。
12月2日(金)のテーマは、「今、世界を騒がせているイーロン・マスクについて」。何かと話題のビリオネアのイーロン・マスクについて、Z世代はどのような印象を抱いているのか迫っていきました。
Twitter買収騒動の印象は…?
電気自動車のテスラ、宇宙開発事業のSpaceXなどの成功で、Amazon創業者ジェフ・ベゾスを超えて世界一の億万長者に輝いたイーロン・マスク。その推定資産は日本円にして約27兆円と、まさに桁違いのビリオネアです。
そんなイーロン・マスクですが、先日は大手SNSのTwitter社を買収。「言論の自由が保障されたプラットフォームへ生まれ変わらせる」との意気込みで、さまざまな改革を行っているものの、世間ではこの件について論争が絶えません。
「NY Future Lab」のメンバーたちは、イーロン・マスクによるTwitterの買収騒動についてどう思ったのでしょうか?
メアリー:彼はTwitterを手に入れてすぐ、大量解雇というとても資本主義的なことをやったわ。労働者の数を減らしても、その分(残った社員に)もっと働いてもらえば、多くの人に給料を払う必要がないという考え方。解雇された人の多くが、投稿されたヘイトスピーチを取り締まるような人たちだったと言われている。
おかげで、ヘイトスピーチや中傷のような投稿をしても大丈夫だという考え方が広がって、実際にそういう投稿をする人が増えてしまった。それでも、Twitterはまだ十分に儲かっていないから、月8ドル(およそ1,100円)払ってアカウントが認証される「Twitterブルー」という制度を作ることを決めたの。
ノエ:ひどいな。ソーシャルメディアは、これから課金される方向に進むってことなのかな。
メアリー:そんなことをしても大して儲からないのに。むしろ認証がない人の意見はどんどん下のほうに回されて埋もれてしまって、私たちがあげる声なんて何の意味もないものになってしまうのでは。
イーロン・マスクは、有料でアカウントを公式認証する「Twitterブルー」という制度によって「ボット(自動投稿アカウント)」による嫌がらせ投稿を防ぎたい狙いがあるようですが、メアリーは「ボットでなくても、同じような嫌がらせはできる」と、イーロン・マスクの取り組みには意味がないと指摘します。
メアリー:(Twitterブルーが始まってから)例えば、イーライリリーという大手医薬品メーカーの名を語った偽者のアカウントが、「当社のインスリンを無料にします」とTwitterで宣言したの。
アメリカ人はインスリンが無料になれば本当に助かるから大騒ぎになって、おかげでイーライリリーの株が暴落し、何千億円というお金が失われた。アホな誰かが8ドルでイーライリリーの認証アカウントを作っていたずらをしたから、こんなことが起きたのよ。
モデレーターでZ世代評論家のシェリーは「イーロン・マスクが目指す『なるべく検閲をせず、言論の自由があるプラットフォームにしよう』という考えはいいことですし、理解できるのですが、イーロン・マスクがTwitterを買収してからヘイトスピーチの投稿が3倍に増えたんです」と解説。
「これまで以上にハードに働けないのなら辞めていい」というイーロン・マスクのTwitter社員に対する発言が物議を醸したり、解雇された元Twitter社員から「Twitter社ではマイノリティが差別的な扱いを受けていた」との告発が出たりという背景もあり、シェリーはアメリカではTwitter買収騒動にネガティブなイメージを持っている人が多いとも説明しました。
イーロン・マスク、好き? 嫌い?
ラボのメンバーは、イーロン・マスクという人物そのものに対してはどのような印象を持っているのでしょうか? インタビューをしました。
メアリー:私は大嫌い。
ノエ:僕はリスペクトしている。自分のビジネスをあそこまで大きくして大儲けできるってすごい。それをほとんどゼロから始めたのがすごい。
メアリー:ちょっと待ってよ。彼が無一文からビジネスを始めたと思ってないよね?
ノエ:違うよ。もちろん彼は恵まれた家庭の出身だとは思うよ。でも彼がいなければ、テスラもSpace Xも今のようにはならなかったのでは?
メアリー:全然なったと思うけどね。テスラは彼が最初に作った会社ではないし。
ノエ:でも彼が今の方向に引っ張っていったんでしょう? 例えばスティーブ・ジョブズがいなかったら、Appleは今みたいにはなっていなかったみたいに。
メアリー:確かに電気自動車をセクシーなものにしたとは思うわ。以前はかっこ悪いものだったから。
今でこそイーロン・マスクに批判的ですが、メアリーはかつてイーロン・マスクのファンだったそう。「すごくクールだし、宇宙は素晴らしいし、革新的だと思っていた」と考えていたものの、「今は他のお金持ちと同じで、私たち庶民のことなんてこれっぽっちも考えていない人だとわかった」と、考えが変わってしまったと話します。
シャンシャン:私は彼のことを考えると「金持ちはますます豊かになり、貧乏人はますます貧しくなる」というフレーズを思い出すの。彼はこのフレーズを体現している人だと思うわ。私は医学生だから将来の給料は悪くないとは思うけど、どんなに頑張っても彼には遠く及ばない。そう思うと悲しくなる。
メアリー:テスラは電気自動車の会社だから、環境にいいことをやっていると思うかもしれないけれど、実際にはカーボン・クレジットというものを売っている。それを買った会社はその分、環境を汚すことができるというわけ。彼はそれで儲けているのよ。地球環境のことなんて考えず、火星に行くことばかり考えている。でも火星に行けるのは大金持ちか科学者でしょう。
ノエ:でも、人類の限界に挑戦することはとても大事だよ! 誰かがやらなければいけないことだし。
ミクア:でも自分たちの星を大切にせず、なぜ今度は別の星を破壊しに行くのか、その意味がわからない。そんな人はとても我慢ならないわ。
ビジネスマン、イノベーターとしての手腕を評価しているメンバーと、批判的な考えを持つメンバーが対立する形となった今回のディスカッション。
シェリーによると、イーロン・マスクに好感を持つ人は年長世代に多く、Z世代は反感を持っている人が多いのだそう。「Z世代は地球環境を考えているし、弱者の権利をないがしろにする人はいくらお金や権力を持っていてもダメという考えが強いんです。それが反映されているのでは?」とコメントしました。
白熱したトークとなった今回ですが、Z世代の本音のディスカッションを聞いたCartoonは「生の声が聞けてよかった」と締めくくりました。