アメリカのZ世代に大人気のラジオ「The Lot Radio」とは? ファウンダーに独自インタビュー!

「Z世代に大人気の『The Lot Radio』について」。ブルックリン発のインターネットラジオ「The Lot Radio」にフォーカスし、モデレーターでZ世代評論家のシェリーが、ファウンダーのFrancois Vaxelaireさんにインタビューをおこなった様子をオンエアしました。

「Z世代に大人気の『The Lot Radio』について」。ブルックリン発のインターネットラジオ「The Lot Radio」にフォーカスし、モデレーターでZ世代評論家のシェリーが、ファウンダーのFrancois Vaxelaireさんにインタビューをおこなった様子をオンエアしました。

interfmで放送中の「sensor」(パーソナリティ:Cartoon)。「NY Future Lab」では、これからの時代の主役となる「Z世代」と「ミレニアル世代」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どのような性質や特徴があるのかなどについて、Z世代・ミレニアル世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していきます。

10月28日(金)のテーマは、「Z世代に大人気の『The Lot Radio』について」。ブルックリン発のインターネットラジオ「The Lot Radio」にフォーカスし、モデレーターでZ世代評論家のシェリーが、ファウンダーのFrancois Vaxelaireさんにインタビューをおこなった様子をオンエアしました。

「The Lot Radio」とは?

「The Lot Radio」ファウンダーのFrancois Vaxelaireさんは、ベルギー出身の元フォトグラファー。クラブ好きが高じて、6年前からNY初の唯一のクラブ系インターネットラジオ「The Lot Radio」をスタートさせました。

「Lot」は「空き地」という意味。「The Lot Radio」のステーションは、文字どおりブルックリンのぽっかり空いた空き地にコンテナを改造したスタジオが設置されています。スタジオにはドリンク類を販売するキオスクが併設されており、オープンスペースのテーブルで楽しむことも可能。ラジオステーションでありつつ、地元の人たちにとってのコミュニティスペース的な役割も果たしています。

「なぜZ世代に人気なのかは行けばわかる」と話すシェリー。「本当に、おしゃれな店舗と店舗の間にある感じで、みんなの通り道の途中にある……というイメージです」と、「The Lot Radio」の外観について説明しました。

ファウンダー・Francois Vaxelaireさんにインタビュー

番組ではFrancois Vaxelaireさんに、シェリーがインタビューをおこないました。

――「The Lot Radio」のコンセプトは?

フランソワ:「The Lot Radio」は、ブルックリンのグリーンポイントにあるコミュニティ・オンライン・ラジオです。運送用のコンテナをスタジオに改造し、空き地に設置して、朝10時から深夜まで毎日放送しているよ。コンテナの右半分はキオスクで、訪れた人はコーヒーやビール、ワインを買って、庭のテーブルで楽しむことができるんだ。

――立ち上げのきっかけは?

フランソワ:(自分にとって)音楽は子どもの頃から最も大切なもので、コンサートやパーティに行きまくっていた。僕にとって音楽は聖なるものだった。

もともとニューヨークでフリーランスのフォトグラファーとビデオグラファーの仕事をしていたんだけど、あまりその仕事が好きではなかった。当時、地元のグリーンポイントをよく散歩していたよ。それでこの三角形の小さな空き地に出くわしたんだ。そこだけ空が抜けていて、遠くに対岸のマンハッタンのスカイラインが見える、すごくマジカルな場所だと思った。

――「The Lot Radio」をオープンスペースにした理由は?

フランソワ:この場所に多くの人が集まるというのが重要だった。なぜなら、他の多くのインターネットラジオステーションは、経営的にとても苦労していたから。なんとか工夫して自給自足の状態にし、経営的に独立する必要があったんだ。

実際コンテナは十分なサイズがあったので、左半分をスタジオに、右半分はコーヒーショップにするアイデアを思いついた。おかげさまで、その売上でラジオ局の運営費を賄うことができているんだよ。

――ラジオではどんな音楽をプレイしているの?

フランソワ:パンデミックの前は、8割が地元のローカルDJ、2割は世界中から訪れるDJやアーティストがレコードを回していた。でもパンデミックで外国から人が入って来られなくなったので、逆に地元の若い才能を発掘することができるようになり、ますます多様な音楽を流すようになったんだ。

多くの人は「The Lot Radio」はエレクトロニック・ミュージック・ステーションと思っているし、それは間違いではないけれど、実はもっと色々なタイプの音楽をプレイしているんだよ。例えばストリート・エッジのハードコア、フリージャズ、テクノ……。商業的な音楽はあまりかからないけれど、みんなのハートから生まれる音楽をプレイする局だと思ってほしい。

目標は「サステナブルな局」

フランソワさんは「ステーションがあるブルックリンは、良くも悪くも再開発が進んでいて、家賃もどんどん上がっている。おしゃれなブティックやレストラン、高級なバーがたくさんできているけれど、その最中に残されたポツンと残った小島のような場所で、何かもっとクリエイティブで文化的なことをしたかった」と、ブルックリンのこの場所をステーションに選んだ理由について明かしました。

フランソワ:だから、例えば飲み物の値段も極力抑えている。うちみたいな安いビールが飲める店はこのエリアにはないよ。大事なのは、近所の誰もが気軽に立ち寄れるということ。例えば(この場にやってくる)ベビーカーを押したお母さんたちは、別に音楽が目当てではないんだ。ベビーカーでも入りやすいから、ここに来て友だちとハングアウトしているんだ。

オープンした頃、近所の年配の人たちがやってきて、「ありがとう。他と違うこんなにクリエイティブなスペースを作ってくれて」と言ってくれたんだ。本当に嬉しかったよ。

――サブスクリプションサービスと、ラジオの違いは何だと思う?

フランソワ:ラジオには常に音楽の後ろに生身の人間がいる。サブスクとは違い、1曲1曲をアルゴリズムではなく人間がセレクトしている。その1曲を選んだ人の想いが、注ぎ込まれているんだ。

だからラジオは、聴く人との間にリアルな触れ合いが生まれる。ウェブサイトに行けば実際にプレイしているDJの姿が見えるし、チャットで直接やりとりもできるしね。曲のタイトルを尋ねたり、「この曲最高!」なんていうメッセージも送ったりできる。DJからは「今夜この後、ここのクラブで回すよ」なんていうお知らせもできる。ラジオの素晴らしさは、こういうパーソナルでダイレクトな関係なんだ。

――これからの目標は?

フランソワ:「The Lot Radio」はDJをサポートするコミュニティでもある。ラジオを通じてお互いが親交を深める、ネットワークとしても機能している。将来はそれをもっと進めるのと同時に、DJにとって、もっとサステナブルな局にしたい、つまり彼らにお金をちゃんと払いたいんだ。

ストリーミングは無料で広告も打たないから、今はラジオプレイにはギャラが払えない。コーヒーやビールの売り上げは家賃や保険の支払いで消えてしまうからね。だからそのためのクリエイティブな方法を探していて、おそらくあと一歩で見つかると思っている。それが僕から彼らにできる恩返し。たとえ莫大なお金でなくてもね。

シェリーによると、今はDJはノーギャラなものの、その代わり彼らの活動をプロモートしたり、「The Lot Radio」主催のイベントを開催したりして、そこでギャラを支払っているとのこと。この夏はMoMA(ニューヨーク近代博物館)から声がかかり、ミュージアム内で人気クラブイベントをキュレーション、DJを派遣するなど、ニューヨークで活躍の場をどんどん広げているのだそう。

フランソワさんの熱い思いを聞いたCartoonは「『sensor』も東京でこういったことをやっていきたい!」と触発された様子でコメント。

「肩の力が抜けていて、頑張りすぎていないけれど、ちゃんと好きなことをやっている感じが、今の若い子たちが求めているものとしてフィットしているのかなという気がしますね」と、インタビューを振り返ったシェリー。「『The Lot Radio』はもっと大きくなると思うし、サステナブルな局になってくれたらいいなと思います」と、今後の「The Lot Radio」に期待を寄せました。