日本の「若年層の飲酒を奨励するキャンペーン」が世界で話題に…アメリカZ世代の目にはどう映った?

interfmで放送中の「sensor」(パーソナリティ:Cartoon)。「NY Future Lab」では、これからの時代の主役となる「Z世代」と「ミレニアル世代」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どのような性質や特徴があるのかなどについて、Z世代・ミレニアル世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していきます。

9月19日(月)のテーマは、「『日本産酒類の発展・振興を考えるビジネスコンテスト~サケビバ!~』について、思ったこと」。「NY Future Lab」のメンバーが、日本の国税庁が開催予定のキャンペーンについて話し合いました。

国税庁のビジネスコンテストが話題に

国税庁が実施予定のビジネスコンテスト「日本産酒類の発展・振興を考えるビジネスコンテスト~サケビバ!~」。少子高齢化社会や新型コロナウイルスによる新しい生活様式の浸透などにより、日本の酒類市場は縮小しつつあります。そうした酒類市場の課題解決や活性化のために、若年層自身に新たなビジネスプランを提案してもらおうという狙いが込められているのが、今回のコンテスト。

具体的には「若年層の需要喚起に向けた新たなプロモーションやサービス手法」「コロナ禍における新しい生活様式や嗜好の変化を踏まえた製品やデザインの提案」「AIやメタバースを活用した新しい販売手法の確立」「地理的表示(GI)等を活用した酒類のブランド価値向上」などを、若年層に提案してもらうことを想定しているようです。

これに対して世間からは「そこまでして酒税を取りたいのか!」という批判の声も上がりました。モデレーターでZ世代評論家のシェリーによると「日本国内でも話題になりましたが、イギリスのBBCやアメリカのNBC、ブルームバーグでも取り上げられ、海外でも話題になっています」とのこと。

日本人はお酒好きのイメージがある

海外でも話題になった「日本産酒類の発展・振興を考えるビジネスコンテスト~サケビバ!~」。これについてラボのメンバーはどう感じたのでしょうか?

メアリー:日本の若者はかなりたくさんのお酒を飲んでいるのでは? 最近観始めたんだけどYouTubeに“KONBINI CONFESSIONS”という、東京の酔っ払いに手当たり次第インタビューする番組があるの。(夫の)ヒカルに見せたら、「日本のZ世代は、全員酔っ払いになって滅びるわ」って言っていたくらいだわ。

それはさておき、政府は飲酒による健康被害を減らす施策も行っているよね。いったい政府はみんなにお酒を飲んでほしいの? それとも健康になってほしいの? って思ってしまう。両方同時にやるって意味がわからないよね。これは個人的な見解よ。もちろんお金儲けが目的というならわかるけどね。

ヒカル:俺たちの世代にお酒を飲ませれば、本当に経済がよくなるのかなあ。もっと年配の人たちが十分飲んでいるから大丈夫なのでは? 仕事の接待とか飲み会が減る心配は全然ないと思うけど。そもそも飲酒が減ったというのは、一時的なものではないかな? コロナで一時はずいぶん制限していたじゃない。「居酒屋に何人以上で入ってはいけない」とか「何時までに店を閉めなければならない」とか。

先ほどもあがった、ニューヨーク出身のバイリンガルラッパー・MIYACHIが、東京を中心とした街で酔っぱらっている人たちにインタビューをしていくYouTubeチャンネル「KONBINI CONFESSIONS」。2022年9月現在で、チャンネル登録者数が14万人を超えており、世界で話題になっています。

他にも酔っぱらって電車で眠ってしまっている日本人の画像や動画がSNSで定期的に拡散されることもあり、アメリカには「日本人はお酒好き」という印象を持っている人も多いのだとか。

ところが日本のアルコール摂取量は世界で38位と、そこまで高いわけではありません。アメリカは39位と日本とほとんど順位が変わりませんが、シェリーは「日本のように酔っぱらった人が道で寝てしまったり、外で暴れてしまったり……という光景は、アメリカではあまり見ません」とコメント。

Cartoonが「酔っぱらった状態でいると、危ない人に狙われたり……という治安の問題もあるのかな?」と推測すると、シェリーは「そういうこともあると思う」とうなずきました。

アメリカでは「飲酒=悪」?

同じようなビジネスコンテストがアメリカで開催されるとなったら、アメリカの若者はどのような反応をするのでしょうか? ラボのメンバーに聞いてみると、メアリーは「結構応募が来るんじゃないかな?」と答えたものの、ノエは「そんなことをしたら、アメリカは保守もリベラルも怒ると思う」とコメントします。

メアリー:ただものを売るためのコンテストでしょう? アメリカ人は「税金が上がる」とか言われない限りは、誰も気にしないのでは? 「さあ飲みに行って!」というキャンペーンでしょう?

ノエ:でも、モラルという意味ではどうなの? アメリカ人は高いモラルを持つことに、とても意識が高いと思うけど。

メアリー:確かにそれはあるわね。飲酒を子どもに勧めているように見えるのは、絶対NGだし。

ノエ:子どももそうだけど、そもそもアメリカ人って「飲酒が悪」という認識が強いよね。バーにしょっちゅう飲みに行くような人でも、なんか悪いことをしているような気がしているから、お酒の宣伝には賛同しないと思うよ。

メアリー:なるほど。キリスト教的なモラルに反するということはあるわね。そのキリスト教徒が「中絶はモラルに反する」というので、アメリカでは中絶が違法になったばかり。でも、もしここで飲酒を奨励したりしたら「モラルを守るんじゃなかったの?」と、みんなはものすごく怒るでしょうね。

アメリカにはかつて禁酒法があったこともあり、お酒に対するネガティブなイメージは日本より強くあります。シェリーは「アメリカは21歳からお酒が飲めるのですが、飲めない世代の子にアピールするような広告は絶対にダメなんです。若く見えるモデルがお酒の広告に出たり、かわいいパッケージのお酒を売ったりしてはいけません」と、アメリカならではの事情について解説。

ちなみに日本と同じく、アメリカでも若い世代はあまり飲酒をしなくなってきているというデータもあります。この理由やアメリカでの飲酒事情については、次回の「NY Future Lab」で詳しく解説します。