interfmで放送中の「sensor」(パーソナリティ:Cartoon)。「NY Future Lab」では、これからの時代の主役となる「Z世代」と「ミレニアル世代」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どのような性質や特徴があるのかなどについて、Z世代・ミレニアル世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していきます。
8月22日(月)のテーマは、前回に引き続き「インフレについて」。アメリカでは記録的なインフレが続いていますが、この原因や今後の見通しについて「NY Future Lab」のメンバーたちがディスカッションしました。
インフレで「便乗値上げ」が起こっている?
日本でも原料高に伴う食品類の値上げなどが相次いだ2022年の夏。日本のインフレは貿易赤字と急激な円安によって、原油などの原料を含む輸入品の価格が高騰したために起こっています。
アメリカのインフレは、新型コロナウイルスのパンデミック明けで需要が増えたのにもかかわらず、供給が間に合っていないために発生しているというのが一般的な見解です。ところが、この意見にメンバーたちは懐疑的な様子。
シャンシャン:コロナの影響は大きいと思う。例えば、コロナである特定の品物の需要が増えたでしょう? 以前はマスクが1箱5ドルだったのが、(コロナ禍によって次第に)15ドルになり、100ドルにまでなった。これはただの需給のバランスではないと思う。(売り手側が)これは売れると思う商品の値段をどんどんつりあげている。それが今のインフレの原因だと思う。
メアリー:コロナで物流が滞ったのも理由なのでは?
ヒカル:以前はそうだったけれど、色々な規制が解除されている今は、もうそれほどでもないんじゃないかな?
ノエ:コロナ禍でお金が必要だったとき、政府がお札を擦りすぎて、お金がダブついているんじゃないかな。
ケンジュ:そもそも大企業や富裕層にとって、インフレってお金儲けのチャンスだよね。だから全て計画通りなんじゃない? コロナ禍で全てが値下がりしている間に、あらゆるものを安く買っておいて、今はそれを高く売っている。それでビリオネアはますますお金持ちになっているんだよ。
「お金を持っている人が全てをコントロールしている。金融トップと連邦準備銀行が金利を決めているでしょ? つまりこのインフレは彼らの責任だと思う」と言い切ったケンジュ。ラボのメンバーたちは単純な需給のバランスが崩れた結果ではなく、「便乗値上げ」をしているところも多いのがインフレの理由という意見のようです。
これを聞いたCartoonも「日本でもそういうこと(便乗値上げ)が起きていましたけれど、それがあると世の中が『値上げしてもいいんだ』という潮流になってしまいますもんね」と納得。
さらにモデレーターでZ世代評論家のシェリーは、「石油はアメリカでも生産しているので、石油価格だけなら国内でさほど値上げしなくてもいいはずです。それなのに(石油企業は)国際的な原油高に合わせた価格で設定しているんです」とコメント。
これによって石油大手や金融などの大企業がパンデミック中に歴史的な利益を上げていると話し、「いくらコロナ禍が原因とはいえ、政府の経済対策がうまくいっていないのでは? という声が高まっています」と解説しました。
不況に突入するまで秒読み?
こうした行き過ぎたインフレが起こっている中で、次は不況がやってくるのでは……という意見も。ケンジュが「次の不況は2008年のリーマンショック以上になるだろう、という投資家の声もあるんだよ。実際に解雇される人も増えているからね」と切り出すと、メアリーも「景気後退は必ず来ると思う」とうなずきます。
アパレルショップでアルバイトをしているミクアは、「これまで週末はとても忙しかったのに、ここ数週間売り上げが落ちているの」と、目に見えて変化があったと話します。
ミクア:従業員のミーティングで、服の多くを値上げしてから売れなくなったと聞かされた。さらにひどいのは、そのせいで残業もできなくなったの。私の職場だけでなく、他のショップも同じように残業禁止になっているみたい。
時給労働だから、これまでよりも収入が減っているってことよ。私は親と住んでいるから家賃を払わなくてもいいけど、同僚はみんな独立していて、公共料金を払ったり子どもを食べさせたりしなければならない。それなのに収入が減ってしまって、とても苦しいと思う。
現在、打撃を受けているのは主に小売産業だと話すシェリー。「アメリカでは全体的に賃金は上昇していると言われているのですが、とてもインフレ率には追いつかない」と話し、ものが売れなくなると従業員が残業できなくなったり解雇されたりして、次第に社会にお金が回らなくなっていくので、ゆくゆくは不況に陥るのでは? という予測が立っているとコメントします。
一方で、アメリカの失業率は歴史的な低さのため、問題ないと判断する専門家もいるそう。ところがシェリーによると「(失業率が低い原因は)コロナ禍で解雇された航空会社職員などが、“リベンジトラベル”の増加に伴って再雇用されているだけ」という見解の専門家もおり、意見が割れていると説明します。
最後にシェリーは「グローバル経済の世の中だから『海外と同じようにやらねば』ということもあるかもしれませんが、アメリカの現状を見て『これは真似しちゃいけない』『日本らしくやらなければ』と感じることもあると思います。それを頭の片隅に置いていただければ」と、リスナーに呼びかけました。