interfmで放送中の「sensor」(パーソナリティ:Cartoon)。「NY Future Lab」では、これからの時代の主役となる「Z世代」と「ミレニアル世代」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どのような性質や特徴があるのかなどについて、ミレニアル世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していきます。
7月18日(月・祝)のテーマは、「人工妊娠中絶が違法と判断されたことについて」。女性の権利と政治の問題について、アメリカのZ世代が話し合いました。
26州が中絶を禁止
先日、アメリカの最高裁は「中絶は憲法で認められた女性の権利」という判断を覆し、人工妊娠中絶を違法と判断しました。これによってアメリカ50州のうち、保守26州が人工妊娠中絶を禁止するという事態に。
ニューヨークなどのリベラルな州では中絶が可能なものの、国内の移動だけで海外旅行並みの費用が掛かってしまうアメリカの背景を考えると、望まぬ妊娠をした女性が気軽に中絶可能な州へ出かけて、手術を受けることは現実的ではありません。
モデレーターでZ世代評論家のシェリーは「この判断は若者世代で炎上している。セレブリティも一斉に抗議の声をあげたんです」と、レディー・ガガ、アリアナ・グランデ、オリヴィア・ロドリゴ、ビリー・ジョー・アームストロング(Green Day)、ハリー・スタイルズなど、性別や立場を問わず意見表明をするセレブリティが多いと話しました。
アメリカは50年前に戻ってしまった
「NY Future Lab」のメンバーたちは、こうした最高裁の判断をどのように感じたのでしょうか?
シャンシャン:アメリカは過去に逆戻りしたと思う。人工妊娠中絶が合法化されたのはおよそ50年前。女性の権利が大きく前進したことの象徴だった。それが今また50年前に戻ってしまった。女性の体は再び法律に支配され、子どもを産むか否かを自分で決めることができなくなった。
ミクア:本当にがっかりした。どんな理由であれ、子どもがほしくない人は産む必要はないと思うから。
メアリー:すごく怒っている。中絶に反対する人たちに「胎児を守るため、命を守るために戦っている」なんて言ってほしくない。そういう人たちは「ただのアンチ女性」だと思うから。
たとえレイプに遭って、望まぬ妊娠をしてしまったとしても、住んでいる州によっては中絶手術を受けられません。そうした女性は違法な中絶手術を受けざるを得なくなる可能性があります。シャンシャンは「(そうした手術は)とても危険だと思う」と命の安全性を懸念します。
メアリーとヒカルは、社会保障が貧弱なのにもかかわらず、中絶だけを禁止する司法の判断に怒りを隠せない様子です。
メアリー:子どもがほしくないのは育てられないから。もし産んでも誰も面倒を見てくれない。アメリカには他の先進国のような社会保障がないから。
ヒカル:こういう法律を作るなら、子育ての保証もちゃんとしてほしい。「法律で中絶を禁止にしました。あとは勝手にやってください」なんてやり方は間違っている。
シェリーは「これがアメリカのZ世代の意見を代表している」と、メンバーたちの意見についてコメント。18~29歳の75パーセントは人工妊娠中絶を支持しており、アメリカ全体を見ても中絶を支持している人は6割にのぼります。
なぜ、このような事態になってしまったのか? シェリーは「前政権のトランプ大統領が、かなり強引な方法で保守判事3人を指名したため、今の最高裁は6:3で保守が圧倒的に強いんです」と解説。保守的な意見が通りやすくなってしまった背景があると説明しました。
若者世代に漂う無力感
こうした状況は、どうしたら変えられるのでしょうか。メンバーたちがそれぞれの率直な思いを語りました。
メアリー:選挙以外にできることがあったら教えてほしい。私たちZ世代は、最も社会や政治に関心がある世代でしょう? これまでも頑張って投票してきた。でももう何をすればいいのか正直わからない。
共和党は着々と保守のやりたいことを通して、リベラルの民主党はただそれに反対しているだけ。「共和党はダメだから自分たちに投票しろ」と言っているだけで何もしない。このままだと、若者は投票に行かなくなると思う。
ミクア:わからない。本当にわからない。でも議会の写真を見ると、60歳以下の人がいないようにも思える。みんなすごく年をとっている。それって変じゃない? 妊娠中絶に影響されるのは私たちの世代であって、議員の世代ではない。
彼らはもう子どもを作れないのだから。わからないけれど、こういう議論の機会を持つこと自体が大事なのかな。一体どうすれば議会を変えることができるのかも、全くわからないけれど。
アメリカのZ世代は政治に対する関心が高いと話すシェリー。投票率も高かったのにもかかわらず、こうした時代に逆行する判断が通ってしまったことについて無力感を感じている人が多いと話します。
「日本も議員の高齢化が進んでいると思いますが、アメリカは上院議員の平均年齢が63歳なんです」とシェリーが明かすと、Cartoonは「もちろん若者も投票に行っているけれど『自分たちの声が反映されていない』ってことなんですね」とコメント。
年配の中道右派がリベラルな若年層を押さえつけてしまっているため、若者世代の間では「投票したい政党がいない」という悩みもあるのだそう。「(そうした若者は)私たちの気持ちを反映してくれないという気持ちが強い。これは日本と似ているのかな」と、シェリーは話題を締めくくりました。