interfmで放送中の「sensor」(パーソナリティ:Cartoon)。「NY Future Lab」では、これからの時代の主役となる「Z世代」と「ミレニアル世代」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どのような性質や特徴があるのかなどについて、ミレニアル世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していきます。
6月27日(月)のテーマは、前回に引き続き「LGBTQについて」。LGBTQの割合やその世代差について、アメリカのZ世代が話し合いました。
「自分をLGBTQだと思うZ世代」は20パーセント
アメリカでは6月は「LGBTQプライド月間」。LGBTQの権利を守るためのさまざまな運動やイベントが行われています。ニューヨークではおよそ500万人の人々が集まる世界最大級のLGBTQプライドパレードが行われるなど、「街を挙げてのお祭りムードが漂っている」とモデレーターでZ世代評論家のシェリーは解説。
調査会社ギャラップのデータによると「自身をLGBTQだと思っているZ世代の割合」は、20パーセント。この数字についてどう思うのか、「NY Future Lab」のメンバーに聞きました。
ノエ:妥当な気がする。特に驚かないかな。
シャンシャン:私はもっといると思っていたから驚いた。40パーセントとか?
ケンジュは「自分の周りにはLGBTQの人があまりいないから、2割もいるなんて思わない」と話しましたが、ノエが「なんで『自分の周りにLGBTQの人がいない』ってわかるの?」と質問します。
ノエ:クィア(性的マイノリティ、LGBTQの人々)は、自分の性的アイデンティティのことをはっきり言わない人が多いんだよ。たとえ友だち同士でも、大ごとにしたくないから言わない人が多いと思うな。
チャイ:人間って誰かに会ったとき、まず相手はシスジェンダー(性自認と生まれ持った性が一致している人)だと思うんじゃないかな。それがデフォルト、初期設定というか。だからクィアはクィアと付き合う。(シスジェンダーであるという先入観で)デフォルトで扱われないし、居心地がいいから。
ノエ:今では「自分がシスジェンダーではない」と、はっきり言いやすい世の中だよね。僕が中学の頃はクラスの中ではっきり「自身をゲイ」と言っていた人は1人だけで、あとは全員ゲイではないと言っていたもの。
Cartoonはケンジュと同じく「自身の周りにあまりLGBTQ当事者はいないのでは?」と考えていたそうですが、メンバーたちの意見を聞いて「自分がLGBTQだと言い出せない人も多いから、実際はもっと多いという話を聞いて『そうだな』と思いましたね」とコメント。
自身がノンバイナリー(自身の性自認を男性、女性と限定しない人)とカミングアウトしているチャイが話すように、「LGBTQ同士じゃないとわからないことも多いのだと思います」と、シェリーは付け加えました。
若い世代のほうがLGBTQを自称している
「自身をLGBTQだと思っている人」は、Z世代だと20パーセント。少し年上のミレニアル世代(25~40歳くらいまで)だと、その割合は10パーセント。もっと上の40~50代になると、その割合は4パーセント程度にまで減ります。
以前よりも自身のセクシャリティを公表しやすい世の中になりつつあるため、若い世代になるにつれて割合が増えていると仮説を立てられますが、その理由はどこにあるのでしょうか。
メアリー:その理由はインターネットだと思う。私たちはネット上で自分たち独自の文化を持てるようになり、それによって私たちが本当の自分になれる可能性を大きく広げてくれた。でも、わたしたちよりも年上の人たちは、そういう機会がなかったんだと思う。
ミクア:メディアとソーシャルメディアの存在が大きいと思う。私はネットで古い番組も新しい番組も色々みているけれど、新しいもののほうがLGBTQの人がたくさん登場しているし、ずっと目立つ扱いになっている。それって(昔と比べて)大きな違いだと思う。
シャンシャン:今では何かを書き込む書類にも、性別の欄には以前のように「男」と「女」ではなく、「X(第3のジェンダーを表す言葉)」もある。以前よりもずっとインクルーシブ、つまり皆が平等に扱われていると思う。
チャイ:あとは以前よりも、好きなようにしていいと感じられる自由があると思う。もし自分が男の子だと感じている場合、別にトランスである必要もないし、男らしい服を着ても女らしいものでも構わないし、それに関して批判されることもない。
トレンドでLGBTQを自称しているだけの人もいる?
ケンジュは「なかにはトレンドであるという理由だけで、LGBTQだと自称している人もいるのでは? だからZ世代のLGBTQの割合が多いのかも」と考えを述べました。これに対して他のメンバーからは反論が出たものの、LGBTQの存在が認知されることによって増えてきた「クィア・ベイティング」が批判されることもあります。
「クィア・ベイティング」とは、LGBTQではない人が自身の性的指向の曖昧さをほのめかし、世間の注目を集める方法。「クィア(性的マイノリティ)」と「ベイト(釣りエサ)」を組み合わせた言葉で、エンターテインメント作品や広告を中心に行われています。具体的には「異性愛者のモデルが広告で同性とキスをする」「異性愛者の歌手が、MVの中で同性との恋愛を演じる」などが「クィア・ベイティング」だと批判され炎上しました。
世間の注目を集めるためだけにLGBTQを自称している人はほとんどいないと前置きをしつつも、シェリーは「『トレンドになっているからLGBTQを自称している人がいる』と考える人も多い」とコメント。保守層の多いアメリカ南部では「学校でジェンダー教育を行わないようにする」「LGBTQに関する書籍を図書館に置かないようにする」などの法律ができた場所もあると説明します。
これを聞いたCartoonは「『自分のほかにこういう人がいるんだ』と知ることで自分を肯定できるし、知るきっかけがないとできないことだと思う」と、そうしたLGBTQに関する情報を遮断する考えには懐疑的な様子。
シェリーも「思春期の頃って、LGBTQじゃなくても自身の性についてすごく悩むもの。そういうときに『こういう人がいるんだ。自分はこのままでいいんだ』と思えるのは、すごく救われると思う」とうなずきました。
さらにCartoonは、小学校の頃の友人が実はトランスジェンダーであったと大人になってから気付いたことがあったと振り返ります。シェリーは「そういう人たちは身の回りにいて、自分が気づいていないだけかもしれないですね」とコメントしました。