差別を止めるためには「互いの歴史・文化を知る」のが一番大事 Z世代と考える「アメリカの人種差別問題」

「アジア系へのヘイトクライムを受けてニューヨークのZ世代が差別を考える」。NY在住のZ世代の若者たちと一緒に、コロナ禍で増加するアジア系へのヘイトクライムや、人種差別が起こる原因について考えました。

「アジア系へのヘイトクライムを受けてニューヨークのZ世代が差別を考える」。NY在住のZ世代の若者たちと一緒に、コロナ禍で増加するアジア系へのヘイトクライムや、人種差別が起こる原因について考えました。

TOKYO FMで放送中のワイド番組「ON THE PLANET」。水曜パーソナリティの綿谷エリナが担当するコーナー「ON THE PLANET NY Future Lab」では、これからの時代の主役となる「Z世代」と「ミレニアル世代」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どのような性質や特徴があるのかなどについて、ミレニアル世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していきます。

4月14日(水)のテーマは、「アジア系へのヘイトクライムを受けてニューヨークのZ世代が差別を考える」。NY在住のZ世代の若者たちと一緒に、コロナ禍で増加するアジア系へのヘイトクライムや、人種差別が起こる原因について考えました。

「人種差別」とアメリカ

番組が放送された4月には、アメリカ・ミネソタ州ミネアポリスでBlack Lives Matter運動が燃え上がるきっかけになった、ジョージ・フロイド殺害事件の裁判が行われました。シェリーさんは「裁判所のすぐ近所で、黒人男性が警察暴力の犠牲になる事件がまた起きてしまい、構造的な人種差別の問題の根深さにスポットが当たっている」と話し、人種差別が現在のアメリカを語るうえでの一つのテーマになっているとコメント。

一方で、新型コロナウイルスの感染拡大によってアジア系人種へのヘイトクライム(憎悪犯罪)も増加しているアメリカ。トランプ前大統領が新型コロナウイルスを「チャイナウイルス」と呼び続けたことも一因となり、アジア系を狙った暴力事件が多発しています。

アジア系のステレオタイプとは?

「NY Future Lab」には日本人や、日本にルーツを持つメンバーも在籍。中には暴力まではいかないものの、カジュアルな「アジア人差別」を受けたことがあると話すメンバーも。日本人の母親を持つケンジュは、子どものころにおにぎりの入ったお弁当を食べていたら、周囲から「汚い」と言われた経験があると話します。

ケンジュ:おにぎりを食べていると「それは何?」「汚い」って言われる。(他の子が食べているサンドイッチなどと)匂いが違うから。

シェリー:なるほどね、海苔の匂いって、みんなあまり嗅いだことがないから。

ヒカル:アメリカ人は海苔を食べる文化がなかったから。最近寿司が入ってきて、ようやく海苔を食べる人が増えてきたくらいで。

「アジア系のステレオタイプ(先入観、レッテル)って何だと思う?」と聞かれると、ケンジュは「Nerd」と回答。「Nerd」は「ガリ勉、オタク、外見的に魅力のない」といった意味を持つ言葉ですが、アジア系は「勉強しているだけで弱そうな人」という印象を持たれがちだとケンジュは話しました。

お互いの歴史や文化を知る必要性

メアリーは「アジア系人種は『モデルマイノリティ』だと中学で習った」と発言。「差別を受けていても文句を言わずに働き、『いつか良くなるはず』と思って過ごしている『お手本のようなマイノリティ』という意味」だと説明しました。

シェリーさんは「おとなしくて文句を言わないことから『弱い』というイメージにつながり、差別のターゲットにされる」と解説。ちなみにメアリーの学校は多様な人種が通っていたため、アジア系についても教わる時間があったそうですが、「メアリーの学校のように、中学でアジアの歴史を教えてくれるのはニューヨークでも珍しいんです」とシェリーは話します。

ケンジュとヒカルが通っていた学校では、アジアの歴史について「全然習わない」のだそう。ヒカルは「教科書に書いてあったとしてもスキップされる。日本の江戸時代について書いてあるチャプターがあったけど、全部飛ばされました」と振り返ります。

シェリー:そもそも教わらないので、みんな知らないから、中国も日本もコリアも一緒になっちゃうのかね。

ミクア:すごくもどかしいのは、私の周りの人たちはアジア人といえば中国人だと思っている。だからときどき、アジア人は全員チャイニーズではなくて、色々な顔をしている人がいるということを教えてあげなければならない。

話し合いを経て、差別をなくすためには、お互いの歴史や文化を知ることが大切だと結論付けた「NY Future Lab」のメンバーたち。シェリーは「多くの学校では結局、白人視点の白人の歴史しか教わっていないんです。アジア系アメリカ人なのにアジアの歴史は教わらず、アフリカン・アメリカンなのに黒人の歴史は教えられないことがほとんど、というのがアメリカの教育の現実でもある」と話し、お互いのバックグラウンドを知ることで深い理解と友情につながると、「知ること」の重要性を説きます。

シェリーはこうした歴史や文化の違いに感心がある人はインターネットで調べて理解を深めていく一方で、そうでない人は差別的な言動をしたり暴力をふるったりと、二極化が進んでいる印象も受けるとも話しました。