「ヒロシマ」「スシ」と呼ばれるのは差別か? アメリカのZ世代が“アジア系へのヘイトクライム”を語る

「アジア系アメリカ人へのヘイトクライム増加の理由」。新型コロナウイルスの拡大により増加している、アジア系アメリカ人へのヘイトクライムについて、NY在住のZ世代の若者たちに聞きました。

「アジア系アメリカ人へのヘイトクライム増加の理由」。新型コロナウイルスの拡大により増加している、アジア系アメリカ人へのヘイトクライムについて、NY在住のZ世代の若者たちに聞きました。

TOKYO FMで放送中のワイド番組「ON THE PLANET」。水曜パーソナリティの綿谷エリナが担当するコーナー「ON THE PLANET NY Future Lab」では、これからの時代の主役となる「Z世代」と「ミレニアル世代」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どのような性質や特徴があるのかなどについて、ミレニアル世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していきます。

4月7日(水)のテーマは、「アジア系アメリカ人へのヘイトクライム増加の理由」。新型コロナウイルスの拡大により増加している、アジア系アメリカ人へのヘイトクライムについて、NY在住のZ世代の若者たちに聞きました。

以前から“カジュアルなアジア人差別”はあったけれど…

ヘイトクライム(憎悪犯罪)とは、人種や民族、性的指向や宗教など、特定の属性に基づく人や集団への憎悪・偏見をもとに引き起こされる犯罪や暴力行為のこと。新型コロナウイルスの感染拡大以降、アメリカではアジア系民族へのヘイトクライムが増加し、2021年にはニューヨーク市内だけで33件(4月7日当時)のヘイトクライムが報告されています。

「NY Future Lab」のメンバーは、ヘイトクライムの現状をどう感じているのでしょうか。ケンジュは「自分の見ているところでは、ほとんどの被害者が女性。今はすごく危ない状態になっている」と話し、ミクアも「地下鉄や電車でアジア系の人が襲われたという話を聞く」と語りました。

シェリー:コロナ以降はヘイトクライム以外の犯罪も増えているもんね。なぜみんな、そんなに攻撃するのかな?

ケンジュ:新型コロナウイルスに感染して働けなくなった人も多いし、経済も下向きになっている。それですごく怒っている人が多いから、(ヘイトクライムをする人は)その怒りの矛先をぶつける感じなのかな?

シェリー:経済が悪くなって失業して、その怒りをぶつける矛先が必要だったということね。

ケンジュとヒカルは、トランプ前大統領が新型コロナウイルスを「チャイナウイルス」と呼び、特定の人種とウイルスの起源を紐づけようとしていたことも扇動になったのでは? とコメントします。

メアリー:人種差別だけではなく、救済しようとしない政府の責任でもあると思う。

ヒカル:こういうアジア人への差別みたいなものは、コロナ以前から存在はしていたけれど、社会的には表面化させてはいけないみたいな抑止力があった。コロナが始まったことによってそれが取っ払われて、一度その壁を壊されたことで差別するのが定着化してしまったみたい。

シェリーさんも「アジア系への差別は以前からあった」と前置きしつつ、「これまでは暴力よりも職業差別や女性蔑視など、自分より劣っている者に対して見下し、笑い、または無視すると言ったカジュアルな差別が多かった」とコメント。

こうした差別は外部から見えづらいため問題視されることもなく、当事者もある程度そのような差別を我慢して過ごしていたと語り、「それがコロナのストレスと 、トランプ氏の影響で噴出して、今のような状況になっている」と解説しました。

「ヒロシマ」「スシ」と呼ばれるのは差別?

日本からの留学生のヒカル、母親が日本人でアメリカ生まれのミクアが、それぞれ今までに受けたアジア人差別について語りました。

ヒカル:俺がよくあったのは、昔の歴史のことを持ち出されて、「ヒロシマ」って呼ばれたりとか。

ミクア:学校の先生に「スシ」と呼ばれたのを覚えている。小さかったから何も言えなかったけれど、ずっとそれが頭に残っている。すごく失礼だし馬鹿げている。

シェリー:その人の文化に特有の物の名称で人を呼ぶのって、すごく失礼なだけじゃなくて、やっぱり差別偏見なんですよね。それを長い差別の歴史の文脈の上に立って言っていることになるので、ここは怒って当然なんですよね。

ミクア:もしそれを学校に報告していたら、その先生はクビや停職になっていたと思うけれど、まだ小さかったし、おとなしい性格だったから何も言わなかった。

寿司が好きなアメリカ人も多いため、こうした「スシ」呼ばわりが好意によるものなのか軽蔑なのかはわからなくて、混乱してしまうとも話すヒカル。「日本にいるアメリカ人に『ハンバーガー』『ステーキ』と呼びかけるのと一緒?」とシェリーさんが聞くと、ミクアは「そう呼ばれたらアメリカ人はすごく怒ると思う。『それはステレオタイプだ』って」と答えました。

反論することは大事なこと!

「NY Future Lab」メンバーのエピソードを聞いて、綿谷も「私も『ゲイシャ』と呼ばれたことがあります」とコメント。そのときは「そう言われるのが好きじゃないから、二度と言わないで」と反論したそう。

シェリーさんは「言わないと相手も分からないし、それを言うのはすごく大事」とうなずき、「自分の生まれた国で、自分ではどうすることもできない姿・形、受け継いだ文化を笑われたり馬鹿にされたりすると、自己肯定感にもすごく影響する」と話します。

「大した差別ではない」と当事者も我慢して過ごしてきましたが、コロナ禍によって激しい暴力事件にまで発展してしまったアジア系へのヘイトクライム。これからの世代はどのように対処していけばいいのかを、4月14日(水)の放送でも考えていきます。