interfmで放送中の「sensor」(パーソナリティ:Cartoon)。「NY Future Lab」では、これからの時代の主役となる「Z世代」と「ミレニアル世代」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どのような性質や特徴があるのかなどについて、Z世代・ミレニアル世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していきます。
11月3日(金)のテーマは、「値上げに苦しむニューヨークZ世代の節約法」。「NY Future Lab」のメンバーが、インフレの影響を受けて変化したライフスタイルについて語り合いました。
インフレ鈍化にアメリカ国民は実感がない?
コロナ禍で停滞していた経済活動が再開したアメリカは、急激な需要の高まりによりインフレが加速しました。
インフレに対応するため、2022年8月には「インフレ削減法」が成立。大幅な利上げも実施されるなか、11月1日、アメリカの中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)はインフレが落ち着く傾向などを要因に、政策金利を据え置くことを決定したと発表しています。
数字ではインフレ率が落ち着いたように見えますが、アメリカ国民の暮らしは苦しくなる一方です。物の値段や家賃が上がり続けるなか、巷では「$100 bill is news $20 bill(今の100ドルは、ついこの間までの20ドル)」と言われ始めています。
日本円で言うと1万円札の価値が2,000円ほどになってしまっている現状を、アメリカのZ世代であるラボメンバーはどう感じているのでしょうか?
ミクア:まさにその通り。今は100ドルを持っていても、あっという間に使い果たしてしまうよね。2つくらいの物を買うだけで100ドルがなくなってしまう。20ドルなんて、かつての5ドルくらいの価値しかない感じ。100ドル使うのは本当に簡単になってしまった。
ケンジュ:家賃の高騰がクレイジーだと思う。信じられないよ。最低賃金で働いていたら、この街で生き延びるのは無理だと思うよ。アパートを探していたとき、1ベッドルーム(1DK)のアパートの平均家賃は2,500ドルくらい(日本円で約38万円)だったんだ。最低賃金で働いている場合、家賃を払ったら何も残らないことになる。食事もできず、どこにも行けず、仕事のあとは家にこもるしかない。そんなことが正しいとはとても思えないよ。
ミクア:これはまずいと思ったのは、電車のなかでお菓子を売っている移民の人たちが値上げをしたとき。ずっと1個1ドルだったのが、今では2ドル、3ドル、5ドルという値段になっている。これは状況悪化の兆候だと感じた。
ノエ:デリでスニッカーズのチョコレートバーを買うと、5ドルくらいすることがあるよ。
ケンジュ:デリのサンドイッチの値段もばかげている。ベーコン、卵、チーズのサンドイッチが8ドル(約1,200円)だよ。僕は3ドル(約450円)が妥当だと思う。現実的には今のインフレを考えると4ドルくらいでもいいかもしれないけど、8ドルはありえない。
シャンシャン:このあいだ映画館に行ったら、水のボトルが1本7ドル(約1,000円)だったよ。これはインフレの影響なのか、それとも映画館がインフレに便乗して値段を釣り上げているのか。もう、よくわからない。
メアリー:両方だと思うよ。
ケンジュ:外食は今や贅沢なものになったよね。デリや小さなタコスのお店でちょっと食べるだけでも、贅沢だと感じるようになったよ。
アメリカの最低時給は7ドル25セント(約1,000円)、ニューヨークは15ドル(約2,250円)と、決して安くありません。しかし、住居費の高騰により、ニューヨークの1DKの平均家賃はなんと4,000ドル(約60万円)であり、最低賃金では生活が成り立たない状況下にあります。
全米でも住居費は高騰しており、最低賃金で働いている限り、家族が住む家を借りることは、アメリカのどこに行っても不可能と言われています。
モデレーターでZ世代評論家のシェリーは「アメリカはインフレがすごいけど賃金が高いから大丈夫なんてよく言われますけど、大嘘です。なぜなら、最低賃金で生活ができないんですよ。こんなに働いているのにと、みんな嫌になってしまいますよね」と、現状を訴えました。
アメリカZ世代の多くは将来設計に不安を抱えている
外食の値段のみならず、スーパーの食品も去年に比べて値上げされています。10月13日に公表されたバンク・オブ・アメリカの調査によると、アメリカのZ世代の7割以上が物価上昇を受けて生活様式を変えたと回答しました。
ラボのメンバーは、値上がりに対してどのような対策をおこなっているのでしょうか?
メアリー:以前、ノエが「お金を節約するためにみんなでスーパーシェフになろう」って言ってたよね。
ノエ:そうそう。スーパーシェフのように、30日間で30ドルを使って、買えるだけの食材を買い、それらを無駄なく使って3食作ろうという意味だよ。けっこう作れるよ。
メアリー:30ドルってずいぶん安いね。
ノエ:僕が今住んでいるのは、フランスのリヨンだから。ここでは30、40ユーロあれば、けっこうたくさんの食材が買えるんだよ。
ニューヨークみたいに物価が高くても、たとえば10枚入りのトルティーヤはたぶん6ドルから7ドルくらいで買えるよね。それとモッツァレラチーズのパックをセールで2ドルで買う。そして、ハムのパックを買う。合わせて20ドルくらいかな。
朝にケサディア(トルティーヤ生地で作るメキシコ風ホットサンド)を作って食べ、夜はチキンテリヤキあたりを10分くらいでさっと作り、ケサディアに入れて食べるんだ。
メアリー:私の料理はシリアルに牛乳をかけて食べるだけ。1箱で1週間はもつよ。健康は悪化しているけど、まあ大丈夫。
ヒカル:この人、何言ってるんだろう……。
ミクア:私の場合だけど、1日に3食は多いんだよね。だから、朝食を抜くこともあれば、昼食、夕食を抜くこともある。そうすればお金も節約できるしね。お腹が空いたときには、お菓子やフルーツを食べてしのぐ。
ノエ:そうそう。僕もお腹が減ったら、食事の代わりにスナックを食べて済ませちゃう。
メアリー:そろそろ私も、クーポンカタログをゲットしないといけないかもって思ったりするんだよね。
シャンシャン:テレビの番組にあるよね。クーポンをたくさん集めてスーパーマーケットに行くんだけど、結局使ったのは1ドルだけ、みたいなやつ。
メアリー:そうそう。クレイジーだと思うけど、(クーポンを集めた)彼らには本当にお疲れ様と言いたい。だって、すごく大変な作業でしょ。でも正直、私たちももうすぐそうなると思うよ。
自炊によって乗り切るメンバーもいるなか、1回の食事をスナックやフルーツで代用したり、食べずに食費を浮かせたりするなど、生活苦が切実に伝わる話し合いでした。
バンク・オブ・アメリカの調査では、Z世代の約4割が外食の代わりに自炊を選択し、衣料品購入を控えています。また、約3割は食品や雑貨の購入を必需品のみに抑えています。
アメリカZ世代の8割は、お金を中心とした将来の生活設計に壁を感じています。経済がよくなっていくと期待している人は24%で、2年前の4割から大きく低下しています。アメリカ経済は記録的な拡大を見せているにも関わらず、若者をはじめ、一般庶民には実感がないことがラボメンバーの会話からも伝わります。
シェリーは「すごく貧富の差が開いていると思います。若者でもエンジニアやIT系といった職業に就ければいいんだけど、難しいですよね。金銭的に苦しい若者のインフレ対策として今注目されているのは『親元に帰る』です。来週は親元に帰るアメリカZ世代の話をしようかなと思います」と話題を締めくくりました。