アメリカZ世代の8割が雇用環境の“多様性”を重要視 企業の取り組み「DEI」に注目!

「企業が取り組む職場のダイバーシティ“DEI”って何?」。「NY Future Lab」に所属するアメリカZ世代が、アメリカと日本それぞれのDEIについて語り合いました。

「企業が取り組む職場のダイバーシティ“DEI”って何?」。「NY Future Lab」に所属するアメリカZ世代が、アメリカと日本それぞれのDEIについて語り合いました。

ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみがパーソナリティを務めるinterfmのラジオ番組「NY Future Lab」(毎週水曜日18:40~18:55)。ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみが、ニューヨークZ世代の若者たちと一緒に、日本も含め激動する世界をみんなで見つめ、話し合います。社会、文化、政治、トレンド、そしてダイバーシティからキャンセルカルチャーまで、気になるトピック満載でお届けします。

6月5日(水)のテーマは、「企業が取り組む職場のダイバーシティ“DEI”って何?」。「NY Future Lab」に所属するアメリカZ世代が、アメリカと日本それぞれのDEIについて語り合いました。

アメリカの若者が企業に求める「DEI」とは?

前回の放送では、アメリカの若者がクールと感じるブランドはダイバーシティ溢れる商品や広告展開をしている、という話をしました。実は、若いアメリカ人にとって職場でもダイバーシティが重要です。

アメリカZ世代が「Cool」、すなわちカッコいいと感じるブランドの条件がダイバーシティ。ダイバーシティ溢れる商品、ブランドではNikeのようにありとあらゆる肌の色の、さまざまな体形のモデルが登場するだけでなく、イスラム教徒の女性のための水着の開発などもおこなっています。

今回は、職場のダイバーシティ、「DEI」に注目します。DEIは「Diversity, Equity and Inclusion」の頭文字を指します。それぞれの意味は以下の通りです。

・Diversity(多様性)
・Equity(公平性)
・Inclusion(包括性)

特に社会的に弱い立場にあるジェンダー(女性・LGBTQ)や人種(ピープル・オブ・カラー)、障がい者などに公平な機会を提供することは、スタート地点からの不均衡を是正することにもつながります。誰しもが活躍できる社会を目指す考え方がDEIです。

日本では主に男女共同参画という言い方をされることが多いですが、DEIは男女だけに限ったものではありません。では、アメリカの職場のDEIはどうなっているのでしょうか? ラボメンバーから内情を聞きました。

メアリー:職場のDEIはいいことだと思うな。職場に多様性があり、みんなが異なる視点や方法論を持っていると、全体的に高い成果が出るという研究結果もあるしね。ただ、ほとんどの企業は働く人のためというより、株主のためにやっている面が強いんだよね。自社が多様性と包括性を持っていることをPRすれば株主が納得するから。

さらにはDEIを攻撃する声もある。アラスカ航空の事件がいい例だよ。アラスカ航空で飛行中にネジが外れる事件があって、驚いたことに「女性パイロットが操縦していたから」だと言った人が少なくなかった。

ネジが外れたのは経費削減のための点検不足、つまり行き過ぎた資本主義のせいなのに。この国の差別主義者たちは、企業で起きているすべての問題がDEIのせい、つまり女性やマイノリティを雇っているからだと決めつけたんだよ。

ミクア:多様性に反対の人たちは、とにかく変化を嫌っているよね。より多くの人々の権利のために、よりよい方法を考えることよりも現状維持のほうがいいと思っている。そして難しいのは、どんなに多くの人々が職場に多様性をもたらそうと頑張っていても、結局、必要最低限のことしかしない傾向があるんだよね。

これを変えるには、トップにいる人たち、たとえばCEOなどにもっと多様性が必要だと理解してもらうこと。マジョリティの特権階級とマイノリティでは、ダイバーシティに関する考え方が違うからね。だから、多様な人がCEOなど重要なポジションにいる人が必要不可欠なんだよ。そうでないと、多様性を正しく実践するのは難しいと思うんだ。

アメリカでは、DEI、ダイバーシティがある職場は、ない職場よりも高い成果が出ています。特に株主はダイバーシティがあるかどうかを重要視するため、避けては通れません。

Z世代が就職先に企業を選ぶとき、ダイバーシティ溢れる雇用をしていることが重要と答えた人は83パーセントにのぼりました。「彼らの半数が白人ではない、ピープル・オブ・カラーという、ダイバーシティ溢れる世代だからこそです」とZ世代専門家のシェリーは補足します。

一方で、メアリーの指摘にあったように、DEIを表面的なPRとして利用したり、ダイバーシティ自体に反感を保つ保守的な動きもあります。また、ミクアの「経営の最高責任者にもっとマイノリティの立場にある人を置くべき」という意見はもっともですが、この部分はなかなか進んでいません。フォーチュン500(フォーチュン誌が年1回発表する、アメリカの上位500社)のCEOの女性の割合は10パーセント、黒人は1.5パーセントです。

少子化を解決するカギはDEIが握る?

ちなみに日本では、プライム市場上場企業1,836社のうち、女性社長は2023年1月末時点で1割にも満たない0.8パーセントです。これはジェンダーギャップ指数、つまり男女平等の度合いをはかる指数で、日本が世界146ヵ国中125位という低い順位の理由の1つにもなっています。

では、日本の職場のDEI、ダイバーシティは今後どうなっていくと思うのか、日本で生まれたラボメンバーのヒカルを交えて考えを聞きました。

ヒカル:日本の職場でも今、より多様性を持たせようとしているよ。日本人だけでなく、世界中の人々を受け入れようとしている。だけど、日本が世界基準になるまでにどのくらい時間がかかるかわからないな。正直、同じようになるのは不可能なんじゃないかと思ってしまう。

メアリー:それでも変化はしていくと思うよ。生活費が上がっているから、結婚していて夫が働いている場合でも、女性も働かなければならないでしょう? そうしたら、女性と男性の関係に関しては何かが起こるんじゃない?

これはみんなに影響することだから、変わるんだったら早く変わらなくてはならないかもね。特に両親が共働きの場合、子育ての新しい方法を考え出さなければならないんじゃないかな。

シャンシャン:結婚する人がそもそも減っているというのも聞いたことがあるよ。多くの女性がずっと独身でいたいと思っているんじゃないかな。

ほら、日本にはとても伝統的な考え方があるでしょう? 結婚した場合、女性が家事や子育てをしなければならず、ほとんどの場合は仕事を辞めたり、やりたいことを犠牲にしなければならなくなる。だから、結婚しようと思わなくなるんじゃない?

ラボのメンバーの話をまとめると、日本の職場のDEI、ダイバーシティはまだまだ女性にとって公平ではないという認識を持っていることがわかります。女性に負担がかかる現状では、結婚したり子どもを産んだりする気持ちになれないのでは、という分析でした。つまり、今の少子化問題を解決するには職場のDEIにかかっていると言えます。

また、労働力を確保するために移民を受け入れる場合であっても、他の日本人と同じ権利を与えられる環境だと思えなかったら、移民にとっても(日本には)来たくないはずです。シェリーは「日本でもグローバルに展開する大企業を中心に、DEIの動きが高まっていくはずです。みなさんも、DEIという言葉を覚えていてください」と話し、話題を締めくくりました。