アメリカで高まる「TikTok禁止」論争 過半数のZ世代は「禁止する必要はない」考え その理由は?

「TikTok禁止について、どう思っている?」。「NY Future Lab」のメンバーたちが、アメリカで高まっている“TikTok禁止論”について話し合いました。

「TikTok禁止について、どう思っている?」。「NY Future Lab」のメンバーたちが、アメリカで高まっている“TikTok禁止論”について話し合いました。

interfmで放送中の「sensor」(パーソナリティ:Cartoon)。「NY Future Lab」では、これからの時代の主役となる「Z世代」と「ミレニアル世代」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どのような性質や特徴があるのかなどについて、Z世代・ミレニアル世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していきます。

4月14日(金)のテーマは、「TikTok禁止について、どう思っている?」。「NY Future Lab」のメンバーたちが、アメリカで高まっている“TikTok禁止論”について話し合いました。

アメリカで高まる“TikTok禁止論” その理由は?

アメリカでは約1億5,000万人が使っているソーシャルメディア「TikTok」。中国に拠点を持つByteDance株式会社が所有しているプラットフォームということで、「アメリカのデータが中国に渡ってしまうのでは?」という懸念のもと、国家公務員のスマートフォンからは削除するように命じられています。

ここ最近になって、アメリカでは「TikTok使用禁止の範囲を一般人のスマートフォンにまで広げたほうがいいのでは?」という論争が高まっており、バイデン大統領はTikTokをアメリカの企業に売却するように中国に求め、応じなければ国内でTikTokを使用禁止にするという強硬な姿勢を取っています(※中国は反抗)。

これを受けて先月、TikTokのCEOが下院委員会で5時間にわたって証言。国家安全保障、データ・プライバシー、子どものメンタルヘルスへの安全性などに関する懸念について尋問を受けました。

こうした一連の動きについて、ラボのメンバーはどのように感じているのでしょうか。

シャンシャン:(TikTok禁止は)言論の自由の制限になるのでは? と思う。

メアリー:TikTokは中国の会社だから、アメリカの機密情報が外国政府の手に渡るかもしれないのは危険だ、という懸念はあるよね。でもそれなら、国家公務員や議員のスマホからはすでに削除することになっているのだから、それでいいのでは? なぜ私たち一般人も影響を受けなきゃならないの?

ノエ:中国人にアメリカ人の情報データが渡ってしまうという懸念はあるね。それって我々の人権侵害にもなるし、中国人に情報が漏洩するのはアメリカにとって大きいリスクだから、それを恐れているんじゃないかな。僕はそれでも禁止にすべきではないと思うけれど。

メアリー:データ漏洩だったら、もっとひどいことが起こっているけどね。例えば軍事関係者が、核兵器を起動させるためのコードを控えるために、単語帳機能のアプリにうっかり入力してしまった疑いが持たれている。

他にも兵士が訓練中につけているスマートウォッチから、今いる場所、つまり秘密基地の場所が漏れてしまったというケースもあるし、あらゆるものがリスクを抱えている。それに、アメリカだって外国のプライバシーを侵害しているのだから、中国にやられたと怒っていること自体が変だと思う。

シャンシャン:アメリカ政府も私たちのプライバシーを侵害していると思うけれど、少なくとも自国民の害になる形では使ってこないよね。でも中国とアメリカの関係は今すごく悪いから、懸念が強いのでは。

ノエ:先日のTikTokのCEOに対する議会の公聴会を見て思ったんだけど、以前のFacebook(Meta)のマーク・ザッカーバーグに対する尋問とは全然違っていた。ザッカーバーグにはとてもフレンドリーに接していたのに、今回のTikTokに対しては「中国だ!」ということで、CEOを締め上げていたよね。

メアリー:アメリカの議員が高齢者ばかりで、CEOに変な質問をしていて驚いちゃった。「TikTokはWi-Fiでも使えるんですか?」だって。「みなさん、大丈夫……?」って思った。

ラボのメンバーはTikTokに対してというよりも、自国の政策に対して批判的な意見を持っている様子。データを見てみると、アメリカ人の6割がTikTok禁止について賛成しているものの、Z世代の過半数は「禁止にするべきではない」と答えています。

モデレーターでZ世代評論家のシェリーは、「Z世代は人権意識が強く、政府がやっていることに対してはっきり批判する特色がここにも出ています」とコメント。TikTok擁護派のなかには、TikTokに限らず全てのSNSがこうした問題を抱えているため、まずは全てのSNSに関するリスク回避を考えるべきという意見もあります。

TikTokがなくなったら…

では実際にTikTokが禁止されてしまったら、ラボのメンバーはどうするのでしょうか? 意見を聞いてみました。

ミクア:えー、わからない! TikTokがなくなったら、多分他のSNSに移行するだけだと思う。でもTikTokを禁止しても、みんな他のアプリに行って同じようなことを投稿するわけでしょう。

SNSによるメンタルヘルスへの影響は、どこのプラットフォームに行っても変わらないわけだから、TikTokだけを禁止する意味があるのか正直わからないわ。TikTokが大好きだから、なくなったら寂しいけど。

シェリー:だけどTikTokでお金を稼いでいる人たちもいるわけでしょう? そういう人たちは稼げなくなっちゃうと思わない?

メアリー:そもそもTikTokだけではそんなに稼げないんだよね。ブランドのスポンサーが付いていれば話は別だけど。だからみんなYouTubeとかInstagramに使い分けて投稿しているし、TikTokがなくなってもTikTok分のフォロワーが減るだけなので、大丈夫じゃないかな。

そもそもTikTokって、ビデオを観た数秒後には次にスクロールしてしまうし、投稿者の名前も覚えていないから、フォロワーを増やすのはかなり難しいよね。だから今かなりのフォロワーがいるってことは、別のアプリに移ってもみんなついてくるから大丈夫だと思う。

ミクア:だけど本当に禁止になるのかな。公聴会を見ている分には、TikTokのCEOの答えは全部筋が通っていて、議員たちが言っているようなリスクは全く証明されていなかったけど。「一体TikTokの何が問題なの?」と思ってしまったほどだった。

上院では先日、TikTokを禁止する、またはバイデン政権が必要と判断した場合には禁止するという法案が提出されましたが、1人が採決に反対したため、先行きは不透明な状態に。

さらにモンタナ州ではTikTokを全面禁止にする法案が可決寸前になっており、可決した場合にはその影響が全米に広がる可能性があります。

シェリーは「私個人としては、禁止にまではならないのではないか」と意見しつつも、「台湾情勢も深刻化していますし、AI開発競争も激化しています。こうした問題がより深刻になれば、政府もTikTokどころではなくなってしまうのでは?」とコメントし、話題を締めくくりました。