日本政府による婚活支援、アメリカZ世代の目にはどう映った?「悪くないアイデアだけど…」

「『婚活』と日本の少子化問題について」。深刻化する日本の少子化問題について、「NY Future Lab」のメンバーたちがディスカッションをしました

「『婚活』と日本の少子化問題について」。深刻化する日本の少子化問題について、「NY Future Lab」のメンバーたちがディスカッションをしました

interfmで放送中の「sensor」(パーソナリティ:Cartoon)。「NY Future Lab」では、これからの時代の主役となる「Z世代」と「ミレニアル世代」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どのような性質や特徴があるのかなどについて、Z世代・ミレニアル世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していきます。

3月17日(金)のテーマは、「『婚活』と日本の少子化問題について」。深刻化する日本の少子化問題について、「NY Future Lab」のメンバーたちがディスカッションをしました。

政府による婚活支援、どう思う?

2023年4月に発足する「こども家庭庁」が、少子化対策の一環として婚活支援の強化に乗り出すことが報道されました。読売新聞の記事によると、都道府県に専門知識を持つ「結婚支援コンシェルジュ」を新たに配置するほか、新婚家庭に対する既存の家賃や引っ越し代の補助制度を拡充する予定です。個人の選択や価値観を重視しつつ、結婚を望む人に対する支援を充実させることで、少子化対策につながるとの目論見があります。

国がリーダーシップを取る婚活事業は初めてではなく、すでにAIを活用した婚活事業の補助などもおこなわれています。まずはこのニュースについて、ラボのメンバーたちはどのように感じたのでしょうか?

シャンシャン:こういうストーリーのアニメ作品ってなかったっけ?

メアリー:あるある、「夫婦以上、恋人未満。」でしょ。わりと最近の作品だよね。学校の授業の一環で男女が夫婦として生活させられるってやつ。2人で同じ家に住んで、ポイントを稼がなければいけないという話。

ケンジュ:笑っちゃうけど、この結婚支援はなかなかいいアイデアなんじゃない?

ノエ:そうだね。今はデートアプリよりも、こういう普通っぽいほうがいいのかもしれない。こっちの大学でも学内だけのデートアプリがあって、わりと上手くいっているみたいだし。全く知らない人と、やみくもにデートするよりはいいと思うな。

ヒカル:でもどうだろう。政府がどのくらい規制するのかわからないけれど、結局デートアプリみたいになって、一夜限りの相手を見つけるためのものにならないといいけどね。

ノエ:政府が婚活を応援するのって、ちょっと怖いというか、近未来SFドラマっぽいかも?

ミクア:確かに。Netflixの「ブラック・ミラー」という近未来SFドラマに出てくる話と一緒。そのエピソードはAIを使ったマッチングアプリで相手を見つけるんだけど、そのアプリを使えば99.9%の確率で一生のパートナーが見つかるという話なの。

でも、この支援って「結婚したい、子どもがほしい」という気持ちの人にしか役にたたないよね。強要するわけにはいかないし。それに、もし育てるだけのお金がなければ、子どもは持たないと思うな。

「アニメやドラマの話みたい」「意外に上手くいくのかも?」と、さまざまな意見が飛び出した今回のディスカッション。モデレーターでZ世代評論家のシェリーは「アメリカは文化的に、政府が婚活支援をするなど『ありえない』という考え方なんです。そのため『ちょっとディストピアが題材のフィクションっぽい』という意見が出たのかもしれませんね」とコメントしました。

日本の問題は未来のアメリカでも起こりうること

ここでメアリーが、日本の少子化問題を取り上げたイギリスのファイナンシャル・タイムスの記事を共有しました。記事によると、2021年に国立社会保障・人口問題研究所が調査した結果、日本人が子どもを持たない、または減らす理由について、教育費を含めた子育て費用の高さを挙げた人が53%いるとのこと。

これについてメンバーたちに意見を聞くと、日系人のノエは「政府の婚活支援は悪いアイデアではないけれど、あくまで対策の1つ。これですべてが解決するとは思わない」と発言しました。

ノエ:少子化問題の本質的な問題は、日本の価値観や伝統にあるのではないかな。例えば社会における女性の役割。女性はやることが多すぎるでしょう。もし子どもが2人いたら、子育てをしつつ家事もして、外でも働かなければならないこともある。

一方、男性は男性で、期待されすぎていると思う。お金を稼いで一家の大黒柱にならなければならない。その責任が重すぎて、子どもを持ちたいと思わないのでは? こうしたことをなんとかしない限り、人口の減少は止められないんじゃないかな。

ミクア:そうね。この間、授業で「女性は子どもを持つことに対して対価をもらうべきか?」というディベートをしたの。最初は過半数が「子どもを産むのは個人の選択。その人の責任だから対価はいらない」と言っていたのが、教授の話を聞くうちに(考えが)変わっていった。

子どもを育てるというのはものすごく大きな責任で、やることもとても多いわけ。昨日、姪と甥のベビーシッターをしたけれど、2時間でヘトヘトに疲れたわ。やることがいっぱいあって本当に大変だった。子育てだけでも大変なのに、生計を立てるために働くって、ありえないと思った。

メアリー:資本主義が進めば進むほど、世界で同じようなことが起こってくると思う。働いても働いても家族を養うだけの対価は得られなくなっている。アメリカの出生率は日本ほど低くないけれど、これから経済がもっと悪くなれば、日本と同じことが起こってくる。日本は私たちの未来でもあると思う。

「日本ほどではないですが、アメリカにも『子育ては女性がするもの』というステレオタイプは存在します」とシェリー。女性のほうが給与が低く、何かしらの理由で夫婦のどちらかが仕事を辞めて子育てに専念しなければならない……という場合には、やはり女性が仕事を辞めるケースが多いと解説しました。「男の人も『稼いで家族を支えなければいけない』というプレッシャーが大きく、男女ともに大変なのだと思います」ともコメントします。

経済的な理由や、気候変動で将来に希望が持てないなどの理由で、アメリカの若者の3人に1人が「子どもを望まない」と考えています。こうしたことをふまえ、シェリーは「いずれにしても一時的な対策では、少子化問題の改善は難しい。社会や経済が変わっていかなければいけない、という見方も強いです」とコメントして、話題を締めくくりました。