「東京は変わってきていると感じるけれど…」アメリカZ世代から見た日本の“多様性”と問題点とは?

「日米カルチャー討論会⑤ アメリカZ世代から見た日本の多様性、『ハーフ』問題とは?」。アメリカのZ世代から見て、現在の日本はどう映っているのか、多様性の観点で話し合いました。

「日米カルチャー討論会⑤ アメリカZ世代から見た日本の多様性、『ハーフ』問題とは?」。アメリカのZ世代から見て、現在の日本はどう映っているのか、多様性の観点で話し合いました。

ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみがパーソナリティを務めるinterfmのラジオ番組「NY Future Lab」(毎週水曜日18:40~18:55)。ニューヨークZ世代の若者たちと一緒に、日本も含め激動する世界をみんなで見つめ、話し合います。社会、文化、政治、トレンド、そしてダイバーシティからキャンセルカルチャーまで、気になるトピック満載でお届けします。

6月11日(水)のテーマは「日米カルチャー討論会⑤ アメリカZ世代から見た日本の多様性、『ハーフ』問題とは?」。アメリカのZ世代から見て、現在の日本はどう映っているのか、多様性の観点で話し合いました。

日本では差別が少ないの?

日本の高校生を交えてお届けする新企画「日米カルチャー討論会」。5週目のテーマは、「日本における多様性」。日本人の高校生・憲人くんをゲストに迎え、さまざまなトークを繰り広げました。

前回の番組では、「日本人はグローバルではっきり自分の意見を言えない」という話題になりました。その理由は、自分より集団を優先する文化であると同時に、多様性、ダイバーシティの少なさがあるのでは? という意見が出ました。

なぜなら、多くの人種民族が混ざり合い、違う価値観や意見が混在するニューヨークのような社会では、自分の意見をはっきり言わなければ生活していけません。その必要が日本にはないからなのでは……というのが、ラボのメンバーの意見です。

ただし、その多様性がネガティブに現れるのが、差別や偏見です。多様性が少ない日本では差別も少ないと言えるのでしょうか? そのことについて、ラボのメンバーが話し合いました。

憲人:(日本の)うちの高校には「スクール・ダイバーシティ」という、生徒会みたいなものがあるんだ。車椅子を使っている生徒のためにスロープを作ったりしているよ。

また朝には15分くらいのテレビ放送があって、校長先生とかが話して、どんなことを達成したかとか、そういうのを伝えてくれるんだ。そこで「他人を尊重しよう」っていう教育も受けている。だから、僕たちは他人を差別しているとは思わない。

メアリー:憲人くんは東京出身?

憲人:そうです、東京です。

メアリー:確かに東京は変わってきていると感じるよね。以前は「ハーフ」の人たちに対するひどい話をよく聞いたよ。日本に住むのがどれだけ大変かっていう話。だって彼らは日本人なのに、外見から「外国人」って見なされてきたからね。でも、その点では東京は確実に良くなってきたと思う。

でも、昔はそういうつらい経験をした人たちがたくさんいたのも事実なんだよ。私の知っている先生にハーフの息子さんがいるけど、今は、その子は学校でいじめられてない。

でもそれは、日本全体を映し出しているとは思えない。今でも、自分と違う他者に対して根強い偏見を持っている地域はあると思う。そういう意識を変えるのはとても難しいことだと思う。

ノエ:日本では、いまだに中国人や韓国人、そして黒人に対するカジュアルな差別、軽いノリの差別もたくさんあるよね。それは「本気で嫌っている」ってわけじゃないかもしれないけど、ただ、ちょっと相手を笑う感じのステレオタイプな扱いとかね。

メアリー:例えば、そういう人を見かけたら警戒してちょっとバッグを強く握りしめるとか?

ノエ:そうだね。それは具体的な行動の例だけど、僕が言っているのは、たとえば「君ってなんか見た目が中国人っぽいね、ウケる〜」みたいな冗談のこと。そういうノリ、わかるかな?

親のどちらかが外国人である人物を指す「ハーフ」は和製英語です。英語では「Mixed race」「Biracial(2つの人種)」「Multiracial(複数の人種)」という言い方をします。一方で「ハーフ」には、半分だけで完全な日本人ではないという偏見が含まれるという見方がされているのも事実です。

“悪意のない偏見や冗談”に基づく差別「マイクロアグレッション」

憲人くんが通う高校では、ハーフの生徒はどのような扱いを受けているのでしょうか? インタビューをしてみました。

憲人:僕の学校には、1人か2人くらいハーフの子がいるんだけど、周りの子たちは差別をしようとしているわけじゃないんだよね。ただ「あ、ハーフなんだ! だったら英語しゃべれるんでしょ?」みたいなことを言っていることはあるよね。悪気はないんだけど……。

メアリー:つまり、無知ゆえの差別ってことだよね。悪意のない人種差別というか。

ノエ:そうそう。それが、僕がさっき言いたかったカジュアルな差別のことだよ。マイクロアグレッション的な、悪意はなくても無意識の偏見や差別がにじみ出る、さりげない言動ってこと。ステレオタイプにもとづいた冗談とかね。憎しみを込めているわけじゃないけど、言われる側は不快だったり、すごくステレオタイプに見られていて、疎外されていると感じたりする。

メアリー:私の知っている人で、ハーフとして育った中国系日本人の子がいるんだけど、子どもの頃は差別されて、ひどいことを言われていたそうだよ。ああいう他人への憎しみって生まれつきじゃなくて、成長していくなかで親や周りの人から植え付けられるものだと思う。

その子はヨーロッパ系とか西洋系のハーフに対するものとは全然違う扱いを受けていて、「日本人ではない」と見られていると感じていたって。それってひどいよね。

今でも日本にはハーフの人や、それ以外の外国人など、自分とは違うと感じる他者に対するステレオタイプや偏見は存在します。暴力など、悪意を持っておこなわれる差別は多くないにしても、“悪気のない偏見や冗談”に基づくマイクロアグレッション(無意識の差別)をしてしまう、もしくはそうしたやり取りがおこなわれている場面に遭遇することは少なくないでしょう。

こうしたことが起きる理由は、日本の多様性のなさではないかという意見も出ました。

ノエ:ニューヨークみたいに多様性のある都市だと、たいていの人は「アジア系の友達が1人はいる」とか「黒人の友達がいる」みたいな感じなんだよね。そういう人が周りに普通にいるから、「こういうことは言わないほうがいいよ」とか「そういう言い方は傷つくよ」って、どこかで一度は聞いたことがあると思うんだ。でも日本だと、中国人とか韓国人は本当に少数派だから、そういう「相手の立場」ってなかなか聞く機会がないんだよ。

「多様な人に囲まれて育つからこそ、相手がどう感じているかを理解しようとするようになる」という意見が出た今回の座談会。ちなみにアメリカのZ世代は、ほぼ半数近くが白人以外の多様な人種・民族で占められていて、史上最も多様な世代です。しかし、同じアメリカでも多様性が少ない地方に行くと、また状況は違ってきます。

シェリーは「他者、特にマイノリティを悪気もないのに傷つけてしまうのを防ぐためには、いったいどうすればいいのか。日米カルチャー討論会は次回に続きます」とコメントし、話題を締めくくりました。