イーロン・マスク 若者からの支持急降下 政府への介入は何が目的なのか? アメリカZ世代から反発の声

「若者の支持は急降下…イーロン・マスク率いる『政府効率化省』にZ世代が強く反論」です。

「若者の支持は急降下…イーロン・マスク率いる『政府効率化省』にZ世代が強く反論」です。

ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみがパーソナリティを務めるinterfmのラジオ番組「NY Future Lab」(毎週水曜日18:40~18:55)。ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみが、ニューヨークZ世代の若者たちと一緒に、日本も含め激動する世界をみんなで見つめ、話し合います。社会、文化、政治、トレンド、そしてダイバーシティからキャンセルカルチャーまで、気になるトピック満載でお届けします。

2月19日(水)のテーマは「若者の支持は急降下…イーロン・マスク率いる『政府効率化省』にZ世代が強く反論」です。

トランプを陰で支えるイーロン・マスク 彼の支持率は急降下?

今回のテーマは、何かと話題が尽きないイーロン・マスクについて。トランプ再選を後押ししたのは若者の投票でしたが、テスラやSpace Xなどを持つ世界一の大富豪で、若者の憧れでもあったイーロンが大きな力を果たしたのは間違いないでしょう。

ところがここにきて、2人への支持は急降下。30歳以下の若者のトランプ支持は就任時の50%から39%に下がっています。またイーロンに対して「非常に好意的でない」と答えた人の割合は、この1週間で36%から43%に急上昇しました。

マスクは今、トランプの片腕としてDOGE(Department of Government Efficiency=政府効率化省)のトップになり連邦政府の官僚制度の急激な解体を進めています。ラボのメンバーからは「新しい大統領はトランプではなく、イーロン・マスク」という声も上がるほど、彼の動きは目を見張るものがあります。NYのZ世代はどう感じているのでしょうか?

シャンシャン:「イーロン・マスク」で検索したら、最初に出てきた記事は、彼がやっている重要な財務省の決済システムへのアクセスを、連邦判事が差し止めるというものだった。

イーロン・マスクはアメリカの国庫にアクセスしようとしているわけ? 彼は政治家でもなくただのトランプの相棒なのに、国防総省にまでアクセスできるって意味わかんない。

メアリー:それだけでなく、もう私たちのソーシャル・セキュリティ社会保障番号も全部知っているよ。

シャンシャン:うわ、怖い、最悪。それでDOGEって何なの?

メアリー:政府効率化省っていうやつ。よくわからないけど、基本的にトランプはアメリカを1つの企業のように支配しようとしているってことだよ。

シャンシャン:国を企業のようにって? それはどういう意味?

メアリー:重要ではない役割や支出を削減するってこと。例えば、DEI(多様性・公平性・包括性イニシアチブ)は完全に廃止されたんだよ。そして、USAID(米国際開発局)という、アメリカによる海外のNGO団体などへの援助も全て打ち切られてしまった。

イーロン・マスクがこんなことをするのは間違っている。だって彼が億万長者になれたのは政府のおかげで、Space Xなどが政府の仕事だったから莫大なお金を稼げたわけでしょう。自分に降りてくる政府のお金を自分で管理するって、完全に利益相反じゃない。

ミクア:私は研究プロジェクトをやっていて、そのために公衆衛生のデータが必要なんだよね。ところが政府のサイトでは今、公衆衛生や健康に関するものがすべてダウンしているんだ。特にLGBTQやトランスジェンダーに関するものは全部なくなって、関連したすべての論文や研究は編集して新しいものに書き換えようとしているんだ。

ある政府のウェブサイトでは、以前はLGBTQと表示されていたのに、今はLGBだけ。つまりゲイ、レスビアン、バイだけが残されて、トランスやノンバイナリーは削除されている。

シャンシャン:CDC(米疾病予防管理センター)のウェブサイトに行ったら、鮮やかな黄色のハイライト文字でこう書かれていた。「このウェブサイトはトランプ大統領の命に従って書き換えられている最中です」と。もしかして、私たちはもうディストピアの国に住んでいるんじゃない? SF映画の暗黒社会に向かっている? クレイジーだよ。

イーロン・マスクの政府効率化省は、予算カットのために各省庁に対する大幅な人員整理と同時に、世界の人々のライフラインだった人道支援を打ち切ると突然発表しました。もちろん効率化は必要なものの、利益追求する企業と、国民や社会のために存在する政府を同じように扱うのはおかしいという強い批判も噴き出しています。

また、イーロンはトランプ大統領に任命されただけで、議会の承認も経ていない一般人です。さらには自分がもらっている国の予算を自分が管理するという異常事態に、憲法違反との訴訟も起こされています。人によっては、これは一般人による政府乗っ取り、クーデターだとさえ言う人もいる状況です。

極右政党に近づくイーロンに懸念の声

イーロン・マスクは何を目的としてこうした動きをしているのでしょうか。ラボのメンバーたちが話し合いました。

ノエ:トランプは、誰もが知っている有名人でありたい、権力を持ち、大物だと思ってほしい、それだけだと思う。イーロンも同じようなもので、ただ権力がほしいだけなんだけど、もっと構造化された形で民間による政府機関のようなものを作るビジョンを持っているよね。あるいは少なくとも、テクノロジーによって社会と会社の中間のような斬新な組織を影で運営したいみたいな。

メアリー:違う違う、それは勘違いだよ。イーロンは影になんてなりたくないと思うよ。彼はみんなに愛されたいと望んでいるんだ。

ミクア:何かと権力を振りかざして来るよね。本当に裕福な人たちや地位の高い人たちって、どんなにお金や権力があっても満足しないんだよ。もっともっとほしい、それ以外の人たちを犠牲にしてもね。

メアリー:彼は(トランプの大統領就任イベントで)ナチスの敬礼を2回もしたよね?

ミクア:あれを見てすごく嫌な気分になった。彼はあれはナチスでなく、ローマ人の敬礼だと言っていたけどね。

メアリー:とは言っても、ナチスの敬礼はローマの敬礼を真似たものだからね。

ノエ:イーロン・マスクは今年1月、ドイツの極右政党のAfD(ドイツのための選択肢)の集会でも演説していたよね。

メアリー:それに彼は、Xで多くのナチのサイトやネオ・ナチをフォローして交流しているんだ。

ドイツなどヨーロッパでは極右政党が国境を超えて結集し、「Make Europe Great Again」のスローガンでトランプに続けと勢いづいていますが、こうした動きを独裁への一歩と警戒する声が高まっています。一方、イーロンだけでなく、ヴァンス副大統領も、こうした政党への支持を表明しています。

「自分が思い描くAIなどのテクノロジーを核とした国家や社会を一刻も早く築くためには、極右による独裁のほうが都合がいい」と、イーロンは考えているのではないかという懸念も広がりつつあります。「それが若者を中心に、イーロンの支持率を下げる理由にもなっています」と、シェリーは話題を締めくくりました。