ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみがパーソナリティを務めるinterfmのラジオ番組「NY Future Lab」(毎週水曜日18:40~18:55)。ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみが、ニューヨークZ世代の若者たちと一緒に、日本も含め激動する世界をみんなで見つめ、話し合います。社会、文化、政治、トレンド、そしてダイバーシティからキャンセルカルチャーまで、気になるトピック満載でお届けします。
11月20日(水)のテーマは「アメリカの“若い男性”や“マイノリティ”がトランプ寄りになったのはなぜ? ニューヨークZ世代がアメリカ大統領選に思うこと」。アメリカ大統領選で若者のトランプ票が増加した背景を、「NY Future Lab」に所属するアメリカZ世代が考えました。
金持ち優遇のトランプを生活苦の若者が支持する理由
激戦を繰り広げたアメリカ大統領選から2週間。トランプ氏はスピーディに新政権の人事に着手しています。衝撃の人事の連続ですが、今回は若者の投票動向に注目します。
番組でも繰り返しお伝えしてきたように、前回バイデン氏を勝利に導いた若いZ世代票が今回も選挙結果を左右すると考えられていました。ところが、民主党ハリス支持と思われていた若者層のうち、多くの若い男性票がトランプに流れていた事実があります。
出口調査によると、18〜29歳の若者の過半数はハリス氏に投票しましたが、男女別で見ると大きく分断しています。女性の6割近くがハリス氏に、逆に男性の6割近くがトランプ氏に投票しています。男性のトランプ票は、4年前の4割から劇的に増えました。つまり、若い男性の支持はトランプ寄りに逆転したことになります。
ちなみに、今回のメンバーのほとんどがハリス氏に投票、トランプに入れた人は1人もいません。それを踏まえて、今回の投票の現状をどう受け止めているのでしょうか?
ノエ:若者は今、本当に生活が苦しいんだと思う。トランプ政権時代の経済は今の10倍よかったと感じている。特にガソリンも食品もあらゆるものが値上がりして、一時は9パーセントだったインフレ率もショックだったよね。こうなると、トランプがどんな人かということよりも、経済を改善してくれるという公約にすがったのだと思う。
ミクア:そうかもしれないけど、特にマイノリティや裕福ではない人たちが、なぜトランプに投票するのかがわからないよ。だって、お金持ちでない人はトランプの経済政策から何の利益も受けないんだから。多くの人たちは、ちゃんと調べていなかったんじゃないかな。
あるいは、女性が大統領になってほしくなかったのかもね。彼が男で、白人だからという理由だけで。もっと優先すべき大事なことがあるのに、そこが理解できない。もう馬鹿げているよ。
ノエ:僕たちは今、最悪な状況に生きているからね。大金持ち以外はみんな最悪なんだ。だから、みんなものすごく極端な解決策を求めるんだと思う。
ケンジュ:たしかにそうだね。そのためには主流派ではなく、反体制派っぽい人に期待するんだよ。刑事訴訟とか暗殺未遂といったことも、トランプがアウトサイダーだと思わせるのに役立ったよね。
ノエ:その通りだね。みんな大きな変化が必要だと思っている。ただし、トランプが言う変化は白人至上主義や人種差別、性差別をもたらし、女性のヘルスケアを取り上げようというものだけど。
知ってる? トランプは教育省を廃止しようとしているんだよ。みんなが大学に入れたのも、高校に行けたのも、公立教育のおかげじゃん。だけど彼は、その公立教育をなくそうとしているんだ。本気なの? どこまで逆戻りするつもりなんだ? もう最悪だよ。
今生きているこの状況が最悪だから、経済をよくしてほしくて必死だった。そのために、反体制的な極端な変化を求め、それがどんなネガティブな結果になって自分に返ってくるかを考えたり、調べたりしない人もたしかにいたことでしょう。
「これまで番組でも何度も話し合って来たように、若い白人男性が女性やマイノリティから取り残されていると感じたことも、大きな要因になったのは間違いないはずです」とZ世代専門家のシェリーはコメントします。
大統領選におけるジェンダーギャップ、男女の政治的な分断については過去の配信と記事をぜひご欄ください。
・「ハリスを支持する女性」と「トランプを支持する男性」大統領選におけるジェンダーギャップにニューヨークZ世代が思うこと
https://ny-future-lab.com/2024/11/06/gender-gap-2/
・迫る「国際女性デー」のなか“男女の政治的な分断”が話題に ニューヨークZ世代が背景を考える
https://ny-future-lab.com/2024/03/08/politicaldividebetweenmenandwomen/
ステレオタイプな扱いにZ世代が反発
ダイバーシティ溢れるZ世代はリベラルが多く、これまではマイノリティや女性、LGBTQなど社会的に弱いものの人権を守ろうとする民主党に、圧倒的に寄っていました。だからこそ、マジョリティである白人男性が取り残されたと感じる現象が起き、それがトランプ支持につながったという話は、理解しやすいと思います。
ところが、今回は白人だけでなく、ヒスパニックなどの移民二世や黒人のZ世代が、トランプ支持に傾いていました。マイノリティや移民に対する差別的な発言をするトランプ氏に、なぜ投票したのでしょうか? ラボメンバーが原因を推測します。
ケンジュ:実は、周囲の多くのマイノリティや男性たちは、以前民主党を支持していたんだ。だけども、今回はトランプに投票した。おそらくは、民主党が「ヒスパニックや黒人とはこういうものだ」と、決めつけるようなやり方をしていたことにうんざりしたんだと思う。実際、僕もそうだったからね。
「ハリスは黒人女性だから、黒人は彼女に投票しなければならない」みたいなことだよ。以前もバイデンは「私に投票しないなら黒人じゃない」みたいなことを言っていたよね。僕たちアメリカ人は、人に指図されたりレッテルを貼られたりするのが大嫌いなんだ。
ダイバーシティ化が進んだアメリカZ世代。同じヒスパニック、黒人のなかでも一人ひとりが違う存在だと考えています。リベラルも保守もその人の価値観によります。
だからこそ、「あなたはこの属性だから」と決め付けられることに、若いZ世代は強い反感を持っています。「日本人でも同じことが言えますよね。女だから、男だから、というステレオタイプを嫌う人は増えていると思います」とシェリー。
一方で、アメリカZ世代の6割は、ダイバーシティをポジティブなものとして捉え、アメリカの原動力だと考えています。「しかし、ダイバーシティが進むほど新たな軋轢も生まれます。それがはっきりと明るみに出ただけでなく、こうしたZ世代の特性が政治利用されたのが今回の大統領選だったのではないでしょうか」とシェリーは見解を述べ、話題を締めくくりました。